植物生理学I 第9回講義

植物の根(続)、植物の花

第9回の講義では、植物の根について、菌根菌の話と自他認識の話を補足したのち、花の色を中心に講義を進めました。


Q:根の自他認識の話が興味深かった。自株の根では相互に認識して干渉を避けるのに対して、クローン株や多種の株ではお互いに関係なく根を伸ばすという説明であった。この点について、なぜそうするのか、どのように認識しているのかを考える。まず、こうすることの利点は自分の根を効率的かつ最大限に伸ばすことにあると考えられる。自株の根同士は干渉を避けることによって、根と根の間隔が保たれ、より広い範囲に根が分布することで効率的に養分や水分を吸収できるはずだ。一方で自株以外の根に対して干渉を避けないのは、生存競争に勝つためだろう。もしどんな相手(他株)でも認識して避けるとすると、どんどん追いやられて最後には根をはれなくなり、駆逐されてしまう。もしかすると認識自体はしているのかもしれないが、あえて無視していると考えることもできる。次に認識する仕組みであるが、アレロパシーを参考にして次のように考えた。アレロパシーとはある植物が他の植物の芽生えや生育を抑える毒素などを周囲に放出する効果のことを指し、セイタカアワダチソウなどが代表例である(文献1)。植物は自らの成長を阻害する物質、すなわち自己に対する毒素を放出しているのではないだろうか。この仮説を冒頭で述べた現象に当てはめると、自株に対しては有害なため干渉を避けあい、他株に対しては害がないため干渉を避けないと言える。また、遺伝子的に同じ株(クローン株)に対しては他株として認識した点は興味深い。自己に対する毒素によって自他認識を行うのならば、この毒素が個体差のあるものである必要がある。クローンであれば毒素の物質自体は同じである可能性が高いため、生育環境の違いから毒素物質の濃度や組成(割合)が個体によって微妙に異なり、植物はこの微妙な違いを感知しているのではないかと推測した。
文献1:静岡大学学術院教授 稲垣栄洋「視点・論点 戦う植物たち」NHKサイト、http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/238872.html 

A:面白い点について議論していると思います。少し気になったのは、自己に対する毒素を出してしまうと、周りに何もなくても、根の伸長が抑制されてしまわないか、という点です。あと、説明不足だったのかもしれませんが、実は、(少なくとも一部の論文の報告によれば)クローンでも植物体が切り離されると、他個体として認識されるということです。つまり、これが本当なら、遺伝的に決まるのではない要因によって制御されていることになります。


Q:【花びらの色の違いについて】今回の講義では、花の色の違いについて学んだが、「花の色の違い」で一番初めに思いついたのが紫陽花である。紫陽花は大きく分けて、赤色と青色のものがある。赤色に関しては、アントシアニンという赤色の色素が働くことによって赤くなっている。そこで、青色の紫陽花がどのようなメカニズムで青色に発色しているのかについて考察する。そもそも、花びらの色に関わるのは色素である。紫陽花にはもともとアントシアニンがあるが、実際には青色の紫陽花もあるということから、何かしらの影響でアントシアニンがなくなっているのだと考える。その何かしらがどこから得られているのかについて考えた時、養分などを吸収できる土が影響しているのでないかと考えた。つまり、土の違いによって取り入れる物質に違いが生まれ、それが花びらの色の違いになるのだと考える。調べてみたところ、土の中のアルミニウムはアントシアニンと結合して青色に発色することが分かった。よって、アルミニウムの成分が多い土で育った紫陽花は青色であるという結論を導き出すことができる。また、アルミニウムは酸性土壌で溶けやすいという事から、青色の紫陽花は酸性土壌であり、赤色の紫陽花は中~アルカリ性土壌で育っているということが分かる。

A:「アントシアニンという赤色の色素」とありますが、どこからの情報ですか?何度も繰り返して注意していますが、調べた結果を書く場合には、必ず出典を明記してください。また、講義では、アントシアニンに属するシアニジン、ペラルゴニジン、デルフィニジンは水酸基の数の違いによって赤い、オレンジ、青の色を示すという点まで詳しく説明しました。レポートは講義を聞いて書くようにしてください。


Q:今回の講義で、風媒花に対して虫媒花や鳥媒花は、虫や鳥を引き付けるために様々な色の花弁を持つことについて触れられた。それと関連して、アオマムシグサの花について考察する。アオマムシグサは花弁を持たない肉穂花序が仏炎苞によって包まれた形状をしている。花弁を持たないため風媒花であるかというと、肉穂花序は仏炎苞によって全体的に包まれており、風による花粉の媒介は不可能である。また雌雄異花であるため花粉を別の雌花へと運ぶ必要があり虫媒花であると考えられる。仏炎苞が発達したのも媒介虫の滞在時間を長くして花粉を多く付けるためと言われている。仏炎苞を発達させたことで花を隠してしまっているため、仏炎苞が花弁のように虫の目印になる必要があると考えられるが、アオマムシグサの仏炎苞は大部分が葉と同じ緑色で一部に白色線の入ったもので、一見葉との区別が付き辛いような見た目である。ここで注目した点は、アオマムシグサはマムシグサの変異株であるということである。マムシグサでは一般的に緑色の仏炎苞の一部が紫色になるため、アオマムシグサは紫色色素の合成経路における物質の遺伝子が欠損したものと考えられる。紫色の色素を失って仏炎苞が葉と同じような色になってしまったアオマムシグサでは仏炎苞が目立ち辛くなり淘汰されてしまうように思える。しかし淘汰がないということを踏まえると、マムシグサの媒介虫には仏炎苞の紫色の色素以外を目印としているものがいるのではないと考えられる。仏炎苞には紫色部分の他に白色部分や緑色の部分にも濃淡がある。マムシグサの媒介虫にはそれらの部分、あるいは人の目では見る事の出来ない紫外領域の色を認識するものも多くいるために、紫色の色素を失ったことが繁殖不能になる決定的な要因とはならなかったことが考えられる。

A:花、特に虫媒花は、虫と花との共進化という観点から見る必要があります。そのような観点から書いているレポートとして、よく書けていると思います。


Q:今回の講義で植物の花の色の成り立ちや、花芽分化の時期の決定要因などについて学んだ。その中で、花色の決定因子のうち、色素の決定因子は遺伝子組み換えで変化させることができるが、液胞のpH、金属錯体の形成の遺伝子制御は難しいということについて、考えていこうと思う。遺伝子制御ができない理由として、液胞のpH、金属錯体の形成の遺伝子にはエピジェネティクスが深く関係しているのではないかと考えた。DNA塩基配列を組み替えることによって、遺伝情報を変化させ、液胞のpH、金属錯体の形成を変えようとした場合に、遺伝情報の変化とは別に、後天的(エピジェネティクス的)な変化を要するため、結果的に、遺伝情報の変化を阻害されてしまうのではないかと考えた。この仮定を確認する方法として、DNAメチル化解析などのエピジェネティクス解析を行う必要があると思う。

A:これは、「エピジェネティクスが深く関係しているのではないかと考えた」というところが、ちょっと唐突ですね。何らかの論理展開が必要でしょう。また、そこからの結論も、だからエピジェネティクス解析を行なう必要がある、というだけでは、ほぼ何も考えていないに等しいと思います。もう少し、ロジックを踏まえたレポートにしてほしいところです。


Q:種子植物の生殖器官である花はなぜ目立つのか。それは開花している時期が短く、鳥や動物による場合もあるが、主に昆虫を寄せ付け花粉を運んでもらうことで受粉を促し、子孫を残すためだと考えられる。ではなぜさまざまな色や形の花があるのだろうか。それには次のことが考えられる。1つ目はそこに生息する昆虫の体の大きさや形に合わせ、受粉しやすい形に進化したからだと考えられる。2つ目は光の波長の違いから昆虫が見つけやすいまたは好む色にするためだと考えられる。3つ目はDNA配列の変化により生物の表現型が変化することで、同じ種でも色の異なる突然変異体ができてしまったからだと考える。また「多くの場合花には独特の匂いがあり昆虫などの多くは匂いに惹かれて集まるが、その匂いを作り出す仕組みが花の色に関係している」とも考えられている。
「花に色がある理由」 日本植物生理学会、「アサガオの多彩な花色を決める遺伝子」 星野 敦

A:これは、全体として何が言いたいのでしょうか?花の多様性について、3つの考えを提出していますが、何の根拠も示されていませんし、3つ目は、そもそもメカニズムの話であって、1つ目、2つ目とは、レベルの異なる話です。最後の匂いについても、ただの引用ですから、レポートの論理には全く寄与していません。繰り返しになりますが、この講義のレポートに必要なのは、自分の頭で考えた論理です。


Q:自然界に発光する花が存在しない理由について考察する。花粉の媒介者を誘引するためには花の大きさや数、匂いの強さなど発光以外にも様々な手段が存在する。これらの手段は比較的実現するためのコストが高くない。発光のためのタンパク質を発現しようとすれば、そのタンパク質は多くの栄養素(資源)を必要とし、他の器官に回すための栄養が不足してしまう。花はすぐに散るものであるし力学的にも強度は高くない。まして栄養素があるなら外敵にすぐに食べられてしまう。昼行性の媒介者がほとんどならば昼間に派手な花を見せたほうが存在のアピールのためには効果的だろう。他にもタンパク質を発現するために葉のサイズを小さくしないといけないなど、発光タンパク質の発現はトータルで見た場合植物の生育にはマイナスしかもたらさないと考えられる。以上のことから発光する花をつける植物は淘汰圧によって存続していくことはできず、自然界に存在してはいられないことが予想される。

A:これは、着目点は非常に良いと思います。ただ、論理の中身には改善の余地がありますね。例えば、キノコには発光するものがあることを考えると、コストがかかりすぎて良くない、とだけ言っても説得力にやや欠けます。また、「栄養素があるなら外敵にすぐに食べられてしまう」という点も、花が発光するにしても、その発光の為のエネルギーの貯蔵場所を花にする必要はないでしょう。もう少し考えればよいレポートになると思います。


Q:ニラネギは菌根菌の感染があるかないかでシュートの乾重量とリン酸濃度の関係が変化する。講義にあったグラフによると、菌根菌に感染したニラネギの方が少ないリン酸含有率で植物体を大きくすることができるということが示されていた。私はこの結果をニラネギが、菌根菌に感染したからこそ必要以上に植物体を大きくする必要があったのではないかと考えた。野中 昌法・吉田 冨男の研究(1987年)で「VA菌根菌が土壌中の難溶性リン酸塩や施肥リンを積極的に利用し,作物に供給するのではなく,可給態リン含量が少なく,作物根の生育が悪い条件で,根との共生関係が高まり,その結果,感染率と胞子形成が増加し,作物へのリン供給を高めていると推測できる」としている。すなわち作物がまんべんなく高い栄養状態を保つために、菌根菌の胞子がより遠くまで飛散できるよう植物全体の大きさを大きくしているのではないかと考えた。
参考文献:野中 昌法・吉田 冨男,VA菌根菌の増殖に及ぼす各種リン酸塩の影響,日本土壌肥料学雑誌,1987年,58巻,5号,p.561~565

A:面白い議論だと思います。最後の文から考えると、ここでは、植物の地上部から菌根菌の胞子が散布されることを仮定しているのでしょうか。そうだとすると、その点をまずきちんと押さえる必要があるでしょうね。


Q:植物は様々な色の美しい花を咲かせる。植物は一体何のために美しい色をしているのか。当然人間に向けたものでは無い。植物は子孫を残すため花粉を雌しべに受粉をしなければならない。そのためには昆虫の助けが必須で、いかに昆虫の気をひくかが重要となってくる。花の色にいろんなバリエーションがあるのはそれぞれの種類特有の色素が含まれているからである。普通、植物が美しい色をしているのは受粉をする昆虫に見つけやすくするためにこのように進化したと考えられる。しかし昆虫と人間では感知できる光の波長の範囲がかなり異なり、昆虫の目の感度は人間に比べてかなり低い。そのため昆虫と人間は違った色として認識しているということになる。昆虫が本当に色を第一優先に見ているのかどうかは定かでは無い。多くの場合、植物はそれぞれに独特の匂いを持っていてそれに誘われて昆虫が寄ってきているのも事実である。植物の色はこの匂いと関係しているという可能性がある。
参考文献 http://www.ies.or.jp/publicity_j/mini_hyakka/06/mini06.html

A:これだけだと、中学1年生が理科の第2分野で習う内容です。もう少し大学生らしいレポートをお願いします。


Q:今回の授業では、植物の自他認識能について扱った。一つの植物体においては、根が均等に広がるように自他を認識しているということを習った。シロツメクサなど、クローンで増えるような植物では、おそらくクローンを同一株として認識するだろう。それでは、一つの種で群落をつくるような植物(セイタカアワダチソウ、ササなど)において、自他認識はどのように行われているのかについて考える。別株であっても、同種間であれば栄養素の競争はその種にとって良くないだろう。従って、これらの植物においても植物ホルモンの分泌などによって同種であるという認識をし、別株と接触しないように成長していると考えられる。また、セイタカアワダチソウなどアレロパシーを生じるような植物では特に自家中毒を防ぐために自他認識能が独自に進化しているのではないかと考えられる。これを確かめるためには、人工的に同種のみで構成した群落と、様々な種の植物から構成された群落において、ある植物の根の広がり方を調べればよいだろう。

A:最後は、事実上、調べればわかる、と言っているだけで、例えばアレロパシーを示すものと示さないものとで、自他認識機能が独自に進化したかどうかがどのようにわかるかが不明です。「根の働きは根を調べればわかる」だけでは実験にはなりません。「根の広がり方を調べればよいだろう」とありますが、口で言うのは簡単だけれども、実際にどのようにするのでしょうね。


Q:なぜ花の色は鮮やかなものが多いのか?という問題に対して多くの回答は花粉を運んでもらうために昆虫に見つけてもらいやすいからというものが多い。そして花の色が多種多様なのはターゲットとしている昆虫がそれぞれ違い、それらの昆虫の色の識別がしやすい色にそれぞれが変化しているからだと考えた。ではなぜアジサイは土壌pHによって青やピンクに変化させるのか。花が青系の植物が少ないことから、青を識別可能な昆虫は少ないと考えられる。ならばピンクにすればよいのではないか?仮説としては土壌pHが違うことでその周りに生息する昆虫も違ってくることから、色ごとにターゲットの昆虫を変えているという説ともともとアジサイは青色がベースであり、受粉のされやすさよりも土壌から得られるアルミニウムが生存において重要な役割を果たし、その結果産物として赤い色素を持つのではないか?という説が考えられる。

A:後者の考え方だと、花の色は何でも構わないことになってしまいますが、その場合、昆虫との関係はどうなってしまうのでしょうか?


Q:授業の中でクラスター根について扱っていた。土壌中のリンが少ない環境での適応の結果として、有機物の提供と引き換えにより効率的な土壌リン酸の吸収を可能とする菌根菌との共存とは別のもう一つの進化をたどった植物である。クラスター根について調べてみると種類によっては高濃度なリン肥料によって枯死してしまう種がいることがわかった。それについて考えてみる。クラスター根を持つ植物は有機酸などを活用することで土壌中の不溶なリンを可溶に変化させ無理やり吸収する植物である。こうすることでリン不足の土壌であっても生育が可能になっているわけだが、そもそも有機酸を利用してまでリンを吸収するという関係上、可溶なリンの吸収に関しては他の植物に比べてもより効率的であると考えられる。そのうえ、少ないリンを運用する関係上当然リンを排出する機能は低下、あるいは存在しないと考えられる。比喩ではあるがそもそも常に足りないものにたいして捨てるという発想が浮かばないことは人間も植物も同じであろう。それらのことを考えると過剰なリン肥料が存在する場合に吸収される量は通常の植物に比べても明らかに大きいと考えられ、さらに細胞中に過剰になったリンを廃棄することもできずにもて余すのではないかと考えられる。では、細胞にリン酸が過剰になった状況では何が弊害として起こるのであろうか。私はpHの変化が最も単純で大きな弊害であると考える。過剰になったリン酸によって酸性によったpHによって細胞中の酵素の活性が低くなり生育を阻害してしまうのではないかと思う。これらは通常の状態の根の細胞のpHとリン肥料過剰状態での細胞のpHを比較し、さらに細胞中に働く酵素にとってその環境がどのようなものかを調べていくことで分析できると考えられる。

A:リンが過剰な状態での害を考察する人はこれまでいなかったと思いますから、独自性があってよいと思います。クラスター根の考察から入っていますが、このレポートでのリンの過剰は、クラスター根を持つ植物の場合に限って議論しているのでしょうかね。そのあたりがやや不明確に感じました。


Q:日照条件などの情報を葉が受けとると花芽形成ホルモンが生成されそれが茎頂に届くと花芽が形成される。なぜわざわざ葉でホルモンを作り茎頂に移動させる必要があるのかについて考える。茎頂よりも葉のほうが数が多いので多くの一定量のホルモンを受容すると花芽が形成されるのではないかと考えた。日照条件を正確に測定できるとは限らないので数を増やすことで誤差を少なくして花芽を形成するべき時に形成できるようになっているのではないかと考えられる。

A:短いですけれども、一応、論理は通っていますね。ただ、これだけだとちょっと説得力が不足しているように感じます。もう少し、議論を展開することによって主張を裏付けてほしいところです。


Q:授業の中で、タンポポやヒマワリといったキク科の植物が集合花であることが触れられた。植物は、なぜこのような形態を持ったのだろうか。集合花の利点として、「花が大きく見え、より目立つ点」「一つの花びらや雌蕊・雄蕊が損傷しても子孫を残す点に大きく関わらない点」「1回の昆虫の花への訪花でより多くの花の花粉が運ばれること」が考えられる。しかし、キク科の小花には舌状花と筒状花という2つの形態があり、さらに、「舌状花だけで構成されるもの」「舌状花と筒状花で構成されるもの」「筒状花のみで構成されるもの」という3つのタイプに分けられる(参考文献)。このように集合花と一括りに言っても、形態が多様であり、見た目も様々であることを考えると、多様性を活かせる「花粉をより効率よく運ぶ」ことが集合花の最大の利点であると思う。さらに、集合花の形態を多様にすることで、一度に多くの花粉を運ぶことに加えて、同種の花との花粉を運んでくれる昆虫の競争を避けていると考えられる。同時に、その花に特化した形態を持ち、多くの花が集まって花の匂いを強くすることで、昆虫がその花を見つけやすくなると考えられる。
参考文献:大西亘「花を見てみよう」自然科学のとびら 第18巻2号 2012年 http://nh.kanagawa-museum.jp/files/data/pdf/tobira/18-2/tobira69_5ohnishi.pdf

A:論理の流れを考えた時に、得られた結論は、あまり集合花に特徴的なものとは思われません。もし、集合花に特徴的な結論にしないのであれば、導入部において、普通の花と集合花と比較することによって花にとって普遍的な形質を考える、といった逆の問題設定にすべきでしょう。


Q:今回の講義では「花」をメインテーマとして取り扱っており、その中の例としてバラの色について取り上げられていた。自分はここで朝顔の色について思い浮かべた。朝顔の色は紅から紫まで多種多様である。調べてみると、どうやら朝顔の色は土壌のpHなどによって変化するわけではなく、遺伝子によって左右されるらしい(日本植物学会【第3回】色違いの花はどうしてできる? -アサガオの多彩な花色を決める遺伝子- ,http://bsj.or.jp/jpn/general/research/03.php,2018/06/21参照)。ここで、朝顔の色を任意の色(自然界に存在しない色)にすることも可能なのではないかと考えた。先ほどのサイトを読み進めていくと、講義で取り扱ったバラと同様に遺伝子により色素が変化し、基本となる四色は青、紫、暗紅、紅であることがわかる。また任意の色を生み出すには色の三原色を適切に組み合わせればよいということを考えた。すなわち、緑色の色素を導入することが出来れば任意の色の朝顔を生育させることが出来るだろう。

A:「アサガオの色は土壌のpHによって変化しない」ということと「アサガオの色は液胞のpHによって変化しない」ということは別です。実際に、人為的に色素を導入したとしても、液胞のpHを調節できない場合には、「任意の」色にするのは難しいかもしれません。


Q:今回の講義では主に根粒菌などの植物と共生する生物や、花の色素や形成条件について学んだ。その中で花芽形成の光周性に興味を覚えたが、光周性を持たない中日植物の存在を知り、その性質の意義について考察を行うことにした。まず、日本の気候の場合では、長日植物については虫などの受粉の補助となりうる生物の活動が活発になる時期に合わせて開花する事でより多くの種子を残す為、短日植物は活動が困難になる冬を最も外界からの影響を受けにくい種子の状態で過ごす為だと考えられる。しかし、中日植物は光周性を持たない為、花芽形成の時期によっては長日、短日植物よりも種子の形成などにおいて不利となってしまう。これは、中日植物の主な種類としてはソバ、ナス、トマト、キュウリなどがある(1)。これらの植物は古くから鑑賞用又は食用として栽培されており(1,2,3,4)、品種改良も盛んに行われている。また、花芽形成の光周性はかなり近い種でも異なる場合がある(5)。この2つの点から、中日植物は元は長日、短日植物であったが、人によって品種改良を行ううちに季節を選ばずに実を形成するために実験や農耕において利用しやすい中日植物(四季植物)がひとによって選ばれてきたのではないかと考えられる。
(1) 吉里勝利・阿形清和・倉谷滋・筒井和義・鍔田武志・三村徹郎・村岡裕由 「六訂版 最新図説生物 neo」第一学習社 2018 p236、(2) 漆原 次郎 「中国4000年より深い「そば」の歴史9000年」2011 is Media-JBpress、(3) JR全農やまぐち 「なすの歴史・いろいろな茄子・ことわざ・レシピ」2004 正直やまぐち、(4) 全国トマト工業会 「トマトのちょっといい話-トマトの歴史」、(5) JR全農やまぐち 「キュウリのお話」2004 正直やまぐち、(6) H.Mohr/P.Schopfer 「植物生理学」1998 シュプリンガー・フェアラーク東京 p415

A:きちんと考えていてよいと思います。ただ、独自の視点を持ったレポートか、というとやや疑問があります。もう少し、その人でなければ考え付かなそうな考察が欲しいところです。


Q:今回の講義では、植物の花について学んだ。植物の花は生殖のためにあるが、その中でも虫媒花は派手な花を咲かせることで虫にアピールし、またそのように進化してきたと考えられる。ここで、色以外の植物の花の見た目について考察していく。講義では、花の色について学んだが、形や大きさも関係していると考えられる。実際に、紫外線で見える花の色の形(模様)を昆虫の姿に似せることで他の昆虫を呼んで受粉に役立てる花が知られていて、植物が花の形(模様)や大きさを虫に合わせて変化させていくことが可能であるということを示している。これを利用して、好みの大きさや形をした花を交配させていくことで、独特の形や大きさの花を作ることも可能であると考えられる。この研究の利用方法としては、観賞用として色以外にも花の外見を作ることが出来る他、花弁を食用や染料として使うことの可能な品種について巨大な花弁を持つ花を作ることに成功すれば、産業的な意味があると思われる。

A:ここで提案されている「研究」は、昔ながらの育種です。人はそうしてこれまで様々な栽培品種を生み出してきたのです。