植物生理学I 第6回講義

植物の茎

第6回の講義では、植物の茎に注目し、その機能と形態について考えてみました。


Q:茎の長さと葉/地上部のバイオマスの関係グラフがトレードオフとなっていることを表すグラフが講義中に紹介されていましたがなぜ2段階直線図を取っているのかが自分の中では疑問でした。長さに反比例するのならば直線近似となり、茎の面積に対してなら2次的あるいは指数的にトレードオフを行うのではないかと自分の中では考えたためです。そこで2段階になる理由を考察してみました。1) ある一定の長さを超えると競合植物数が少なくなり、長さに対してのリターンが減るため。2) ある一定の長さを超えると茎の剛性の負担が増加するため(だがこれははじめから指数的に変化しそうな気がするが)。3) 目立つため、数次消費者から狙われるリスクが増加してしまうから。の3点が原因ではないかと考えます。そして、こうした要因により植物の背丈にストップを掛けつつ、寄生植物やツル型の植物といった異なったアプローチによるエネルギー取得型の植物が出現して上手くバランスが取れているのだと思います。

A:複数の理由を考えている点は評価できます。できたら、その中で、どの要因が主な要因になるかを比較して評価できるとよいでしょう。


Q:今回の講義では植物の茎の役割や茎の変形について学んだ。自分が茎の変形について思い浮かんだのがバラの棘である。しかし、バラの棘は手できれいに取ることができるため茎の変形以外に葉の変形と考えることもできる。どちらなのか調べたところ、茎の変形であることが分かった。他にも茎に棘をもつ植物が存在し、その中には葉が変形した棘をもつものも存在するのだが、棘の役割は共通して「外敵から身を守るため」と言われている。動物に食べられないようになるだけで個体の生存や種の繁栄につながるが、硬質な棘を形成するためには一般的な植物より多くのセルロースを合成しなければならずコストがかかってしまう。また、葉や花が食べられないなら良いが、棘によって動物が果実を食べられなくなってしまうと、種子をより遠くまで運ぶ手段が減ってしまうというリスクもある。このように利点と欠点があり、どちらを選ぶかは植物次第である。

A:自分で考えていてよいとは思いますが、おそらくは、この点に関しては、他の人も同じように考えるのではないでしょうか。何か、もう少し独自性が欲しいところです。


Q:今回の授業で茎のことについて学んだが、自分が疑問に思ったのは四角断面と円形断面の茎では何が違うのかということである。まず、植物の茎の断面に必要な条件とは何なのかと考えていきたい。植物の茎は方向性を持たないことが大前提である。これはヒマワリや稲などを見てわかるように風などにより一定方向に力がかかってもその方向にしなやかに曲がり、力を分散しているように見えることからも言える。これを踏まえて考えると、シソなどの正方形断面の植物も、方向性がなく、力を分散できていなくてはならない。ここで、正方形断面植物の断面二次モーメントを見てみると、全方向で一定であり、正方形断面の方が円形断面よりも大きかった。つまり、四角断面の方が円形断面よりも方向性がなく安定しており、力の分散の効率が良いことが分かった

A:ここまででストップしてしまうと、では、なぜ円形断面の植物が繁栄しているのか、という疑問がわきませんか?多様性がある以上、それを維持する何らかのメカニズムがあるはずです。


Q:今回は、植物の茎の役割について学んだ。その中で私が思ったのは、中空の構造になった茎について考察しようと思う。三角や四角などの形を持つ植物の茎断面は、しならずに強度をあげることができるというメリットがある。では中空であることによるメリットはなんだろうか。まずはじめに、茎の構成材料が少なくなる。また、その構造により、より丈夫な茎になる。これにより、植物の形成段階におけるコストパフォーマンスが高くなる。その結果、中空状の茎が生まれたと考えられる。

A:これも、上と同じです。では、なぜ中が詰まった茎の植物がたくさんあるのでしょうか?きちんと突き詰めて考えることが重要です。


Q:【植物の高さに植物同士の接触も関係している!?】今回の講義では植物の茎について扱った。茎は植物の高さを規定していて、周囲の植物の高さに影響を受けている。また、周囲の植物と圧倒的に高さが違う場合は、季節などをずらすことによって光合成を確保している。このように、授業では周囲の植物との関係から茎の長さを考えてきたが、今回は違う観点で茎の長さを考えていきたい。植物への刺激という観点で茎の長さを考えていくと、真っ先に考えられるのが風による刺激である。風が強い場合には、茎をしなやかにして風の影響を退けたり、茎を丈夫にして耐える構造にすることが予想される。この他にも、接触という刺激が考えられる。風の影響を感じ取ることができるなら、植物同士の接触も感じ取ることが可能だと推測される。この場合、植物同士が密になっている場所は、植物同士の接触が多くなり刺激が強いと思われる。また、刺激の強さは周りの植物の強度や構造に依存すると考える。なので、植物の茎の高さは周りの植物の高さの他にも植物同士の接触などが関与している可能性がある。
《参考文献》花と野菜の不思議 解体新書 47,田中 修、https://shop.takii.co.jp/flower/bn/pdf/2013_04_47.pdf

A:きちんと考えていてよいと思います。接触刺激に関しては、昔から、盆栽はなでるとよく育つ、と言いました。この場合の「よく」というのは、盆栽ですから「小さく」という意味です。風の刺激に対して、「茎をしなやかに」と「茎を丈夫に」という変化を挙げていますが、簡単なのは背を低くすることです。ただ、風は接触刺激として受容しているので、植物同士の接触と区別できるか、という点は面白いポイントだと思います。


Q:カタクリは落葉樹林が落葉するときに花を咲かせ葉をつける前に枯れるということを知った。しかし花を咲かせる時期は2~4月の日差しの弱い時期で花が咲く期間も1~2週間と短い。一体何のメリットがあってそのような環境下で生息するのかと疑問に思い考えてみる。まず、カタクリの生息地は山中で昆虫は多く受粉もしやすいといえる。花は受粉のために咲くという視点から考えると、受粉しやすい環境にいるカタクリにとって花を維持する期間は短くて済む。では花を咲かせる期間を短くする理由はなんであろうか。それはカタクリが種子から育つのではなく球根から芽を出すことに意味があるのかもしれない。カタクリの球根にはでんぷんが豊富に含まれている。落葉樹林が生息する土壌は栄養分も豊富で球根に栄養を貯蔵するのには最適な条件である。つまりカタクリの花の咲く期間が短い理由は花に使うエネルギーを削減し、栄養を蓄える貯蔵地である球根にエネルギーを回しているのかもしれない。木々に囲まれている中で茎を伸ばして光合成をおこなうよりも、土壌中の栄養を吸収し球根の中にでんぷんを蓄える方を重要視していると考えた。
参考文献 ヤサシイエンゲイ、http://www.yasashi.info/ka_00018.htm

A:よく書けていますが、球根に貯蔵する「栄養」と、土壌の「栄養分」が、同じものであると誤解していないか、少し心配になりましたそのまま移行するような書きっぷりなので。当然ですが、植物が貯めるデンプンと、植物が土壌から吸収する無機イオンは全く別の物質です。


Q:茎の1番の目的は葉や花を目的の位置に配置するためであると習った。陸上では重力や風に耐えるために丈夫な構造をとっている。では水性植物ではどうであろうか?海水に生息するアマモという水生植物は茎が土の中にあり水中に長い葉がある構造をとる。なので地中から直接葉が生えているように見える。この際茎は葉を目的の位置に配置するという役割を果たしていない。水中では重力がないので茎がなくても葉だけで植物を支えることができるためであると考えられる。地中に茎があるのは地中では土の重みなどがありしっかり支える必要があると考えられる。またオオカナダモは水生植物であるが茎を持つ。しかし陸上の植物と比べると細く弱々しい茎に見える。また茎の内部では導管が退化し、その代わりに通気組織を発達させ空気を貯めることができるようになっている。水中では水分は豊富な代わりに酸素濃度が陸上に比べ薄いのでこのような茎の携帯を発達させたと考えられる。よって水中植物は水中の環境に合わせて陸上植物とは異なる茎の形態を発達させている。

A:よく考えていると思います。ただ、アマモの土の中の茎の存在意義が結局わかりませんでした。


Q:植物の茎の断面は丸形が多く存在する。四角形や三角形の茎の植物も存在するが圧倒的に丸形が目立つのは、植物の生存にとって有利な理由があるからだと考えられる。四角形や三角形は角があるため強固で、しならない。それに対して丸形は角がないため柔軟で、曲がる。風や外部からの衝撃を受けた時に折れないような茎の形を模索した結果、多くの植物は曲がることで衝撃を軽減する柔軟性を選択したと考える。では、柔軟性に勝るより強固な茎はないのだろうか。四角形、三角形はあるが六角形は存在しないのだろうか。蜂の巣や鉛筆で見られる六角形は非常に頑丈な形だと言われている。通常のスイカは丸形だが、故意的に作られた四角形のスイカを見たことがある。それは四角の箱に入れられてそのまま育つと四角形のスイカになると聞いた。茎も六角形の筒に入れて育てれば六角形の茎になるのではないか。できた六角形の茎と今存在する三角形、四角形の茎の折れやすさを比較したい。植物が自然選択で選んだ結果、現在の丸形であることを考えるとおそらく六角形は不都合であると考えられる。しかし、三角形や四角形の茎よりは六角形の方が強固であると考える。上記の実験の結果六角形の方が折れにくいことが証明されたら、もしかするとこの先三角形や四角形の茎は六角形になっていくのではないかと考えられそうである。

A:六角形の茎に注目したのであれば、丸型と比較するのではなく、むしろ、三角形や四角形の茎との考え得る違いに関する議論が欲しいですね。何の仮説もなく、実験をしてみるというのは、注目点を絞れないだけにしっぱんすることが多いものです。折れやすさを比較するだけだと、おそらくそれ以上議論が深まらないでしょう。


Q:茎には四角いものと丸いものがあるという話だったが、根には四角いものがない。茎にはさまざまな環境に対応するためにそれに合わせている。根はなぜ円形のものだけで四角いものがないのだろうかを調べてみた。根に作用する力は,伸びる方向の引っ張りの力や,外側面からの土圧や水圧であり,根にとっては,それらに耐える強さが必要で、そこで,茎の場合と異なり,根の場合は,外圧に強い円形断面が適当である。(http://www2u.biglobe.ne.jp/gln/13/1311a.htm)だが風の影響は受けないにしても、強さがあるのは四角の方である。根を四角にして円形とどう行った差異があるか実験してみたい。

A:議論してきて、最後「強さがあるのは四角の方である」となると、がっかりします。土や水の圧力は、大体等方的に加わるというのが、それまでの議論の前提だと思うので、それが一気にひっくり返された感じがします。


Q:中空の茎のメリットについて中実構造と比較しながらタンポポを例に考察する。まず挙げられるのは中実構造に比べ、コストが少なくてすむことである。中空の方が強度は劣るものの、茎に葉をつけないタンポポにとっては問題となりにくいためコストダウンを優先したのだと考えられる。第二に、中空の方が柔軟性に富んでおり、開花後種子になるまでの間茎を倒伏させるタンポポにとって茎のしなりやすさもメリットとして働くと推測される。さらに、一番の負荷である風等による揺れ荷重に耐える為に、わざとたわみやすくしていると考えられる。中実構造は剛性が上がるものの、一定負荷や運動量を超えた場合に折れやすい。これは具体的にはたわみ係数を中空、中実それぞれで算出し、最大たわみの公式に当てはめることで力学的に導出できるものと考える。また、タンポポは倒伏後種子をより遠くへ飛ばすため茎を1.5倍ほど伸長させ種子をつける。これも茎が中空でコストが中実構造ほどかからないからなせる技と言える。

A:着眼点がよいと思います。また、この場合、思い切って例をタンポポに絞ったことによって、議論が明確になっています。特に、最後のポイントについては、このような形で明確に議論した学生は、今までにいなかったと思います。


Q:奇想天外について考察する。奇想天外が通常の植物のように葉の数を増やすのではなく、すでにある葉を伸ばしていくように進化した理由は何なのであろうか。一年中日射量が多く、光を遮る背の高い植物がいない砂漠のような環境で、太陽光を最大限利用するには葉を層状につけず、地面にベターっと広がるように葉を広げるのが効率が良い。小さい葉を同じ面にたくさんつけるという手段も考えられるが、葉を同じ面につけようとした場合、茎の太さでつけられる葉の数は限られてしまう。砂漠では植物が繁茂しておらず土地を広く使えるので、葉の面積を大きくして、さらに葉を遠くへと伸ばして光合成をすることで、効率よく光合成をしているのではないかと考えた。また、葉は葉緑体を合成するのに多大なエネルギーを使うが、砂漠に生える植物は一年中光合成できるため、冬になったら合成した葉緑体を分解しなければならない通常の植物とは違い葉緑体を合成するのにかかったコストを回収できるため、大きい葉に合わせて大量に葉緑体を合成した方が効率良く光合成できるのではないかと考えた。

A:これまで、意外とこの点について議論した学生はいなかったので、面白く読みました。ただ、内容的には、常識的な範囲ですね。もっと、ユニークな考えができるとなおよいと思います。


Q:講義内で茎の役割の優先順位を考えたが、進化的にこれについて考察したい。まず明確に茎と定義できる構造をもつのはシダ植物や種子植物であり、コケ植物はこれを持たないと考えられている。茎の役割を考察するにあたって、進化的に比較的近縁種であるが茎の有無の違うコケ植物とシダ植物を比較したい。コケ植物の生育する環境は陸上ではあるが常に湿っており水分が十分に表面に付着し乾燥を免れた状態である。地面に這うように成長し高さはほとんどなく、一番高いヒノキゴケやスギゴケでも10㎝に満たないほどである。一方シダ植物はコケ植物に比べ比較的乾燥した場所にも生育し、大きいものではメートル単位で葉を広げ、高さを持った樹木のような構造をもつものもある。コケ植物とシダ植物を比較してポイントとなるのは乾燥と高さという点である。進化の流れとして植物の陸上進出は5億年ほど前といわれているが、ここで最も植物が大きく生育し広範囲に有利に生育するためには何が必要であっただろうか。周囲に同様な植物はほとんど生育していない当時の陸上環境を考えると乾燥耐性が重要であったと考えられる。植物の表面がすべて葉であるような状態では多くの蒸散を伴う。植物の末端まで、効率的に水分や栄養分を送るには道管や師管といった通導器官が必要になり、より効率的な茎や維管束という構造を持ったと考えられる。一方、高さを得る現象は周囲に同様に植物が進出し光の獲得競争が始まったころに茎の構造を応用して生じたのではないかと考察できる。

A:全体としては、きちんと論理が運ばれていると思いますが、一点だけ、耐乾燥性の話の後に、「植物の表面がすべて葉であるような状態では多くの蒸散を伴う」と続いていると、コケとの整合性が気になります。このあたりの論理展開にはもう一工夫必要でしょう。


Q:今回の講義では主に茎について扱われていた。茎は養分や水の運搬、葉や花の配置、養分の貯蔵、光合成など様々な役割を持つ植物の主要器官である。最大の役割は葉と花の配置であり、養分や水を運搬する維管束はその結果として生じ、貯蔵器官としての役割や光合成はついでに行われているにすぎないらしい。生物は本当に効率的にできているのだなと思った。その他にもたくさんの新しいことが学べたが、その中でも特に興味を持ったのは「茎の形状の意味について」である。茎には断面が丸いものや四角いものなど様々な形があるが、この形には意味があるという。茎の形状は茎の強度に関わっており、茎は生息している環境において最も折れにくく損傷しにくい形となっている。丸い茎は釣り竿のようにどの方向にも素直に曲がるため、強風の時はあえて曲がることで抵抗を少なくしている。一方で四角い茎はどの方向にも曲がりにくくなっているため風の抵抗をあまり和らげることができない。しかし茎の断面積が同じ場合には四角い茎のほうがより強い剛性を持つため、抵抗を和らげることができない分より強い力に耐えることができる。したがって常時風が吹くような環境や風を遮るものが少ない環境(草原など)においては茎の断面積は丸くなり、普段はあまり風が吹かないが時々強風が吹くというような環境においては四角くなる傾向があるのではないかと考えられる。しかしもちろん同じ環境下でも異なる断面積の茎が存在するためこれはあくまで風への抵抗の観点のみに着目した場合であり、その他の要因も多数存在すると考えられる。

A:論理の流れは悪くないのですが、これは、ほぼ講義の論理の流れそのままですよね。レポートで重要なのは、それを書いた人でないと書けないような論理です。講義で言われたことを疑るぐらいの姿勢が必要でしょう。


Q:一般的に茎が円柱状をしていることについて考察したい。授業では風に対する抵抗性が挙げられていたが、強い風が吹いた時に曲がることで受け流すという説明であった。もちろんそれも考えられるが、曲面であることによって風を分散させることができるとも考えられる。茎が三角柱や四角柱の場合、ある面に風が当たるとまともに風を受けることになり、折れにくくするためには剛性を高める必要性が生じる。一方で三角柱や四角柱など角をもつ茎の場合、その部分の剛性が増して曲がりにくくなるので、風に対する抵抗性という観点では風を受け止めて耐えるという戦略をとる三角柱や四角柱でもよいと思われる。しかし、多くの植物が円柱状の茎をもっているということは他にも要因があるのではないかと考えた。
 一つには、茎はしなやかさが重要である可能性が考えられる。枝分かれした茎が重力に従ってしなやかに曲がることで葉が光を受けやすい角度に配置されるといえる。またやや特殊な例であるが、アサガオなどのよじ登り植物の場合、他の植物に巻きつくときに茎が円柱状であるほうがぴったりと密着させることができるといえる。円形であることによってどの方向に曲げてもよいというのが一つの利点であるだろう。二つ目に、茎が肥大成長する際に細胞分裂が同心円状に広がると仮定すると、結果的に円柱状になるのが自然かもしれない。しかし、実際には「茎の内側の細胞はあまり増殖せず、むしろ光がよく当たる外側の細胞のほうが活発に増殖しています(文献1)」という記載があることから、茎の外側の細胞が円柱状に配列するのは遺伝子的に決められているとも考えられる。三つ目に、細胞への水の供給という観点から、茎の中心付近の維管束から末端の細胞までの距離を同じにすることで、水分や養分を均等に末端まで送り届けることができると考えられる。構造上の強度を考えるうえで組織の均一性は重要な要素だろう。文献によると「植物の細胞は水で膨らむことによって、体積を大きくすると同時に構造的に強度なものとなっている」(文献1)とあるので、細胞によって水分量に違いがあると細胞の強度が均一でなくなり、全体の強度が落ちると考えられる。また、四角柱の茎をもつ植物では、オドリコソウのように四隅に稜とよばれる繊維細胞の集まった部分があり、これは死細胞であることから、水分の供給とは関係がないと考えられる。以上に述べたような理由から、茎が円柱状であることは柔軟性と強度の両方の面で優れているため多くの植物の茎が円柱状であると考えられる。
(文献1)軽部征夫・花方信孝「エンジニアから見た植物のしくみ」講談社、1997

A:非常によく考えていて素晴らしいと思います。欲を言えば、考えた3つの仮説の中で、どれが主要な因子なのかを議論できると、よりレポートらしくなります。比較がないと、なんとなく言いっぱなしという感じがしますから。


Q:【茎の空洞について】今回、自分が今まで不思議に思っていたことについて考察したいと思う。一般に、植物の茎の内部は様々な管などがあり、詰まっている。ただ、たんぽぽの茎は中が空洞である。この謎について考察したいと思う。調べて見たところ、茎の内部が空洞のことを中空と言い、中空の植物はたんぽぽだけではなく、たんぽぽと同じキク科の植物ではキクやヒマワリも中空である。自分の考えとしては、草本のものには中空のものと中実のものがあるが、中空は少ない成分でその割に丈夫な茎を作るから、進化の上で有利だったというのが1つ目の考察である。2つ目の考察として、植物はゆっくり成長しているとまわりの植物が先に伸びて太陽の光が当たらなくなる可能性があるので、育つ環境によっては早く伸びることがとても大切である。そこで、中空は中実よりも原材料が少なくて済むので、早く背が高くなるのには有利である。そのため、早く伸びるために、短期間で背丈が一気に伸びる植物は中空のものが多いのだと考える。また、たんぽぽについての考察として、たんぽぽの場合は先端に花がつく花茎が中空である。たんぽぽの花は地面すれすれで咲くが、種ができると種が風に乗りやすいよう一気に花茎を伸ばし背が高くなる。たんぽぽの場合は種が飛んでいけば茎は折れても問題ないので、少しの期間だけ茎が立っていれば十分だということもあり、丈夫な茎を作る必要がないという理由で中空になっているのだと考える。

A:悪くはないのですが、前半では、中空な茎が丈夫というスタンスなのに対して、最後のところでは丈夫な茎ではないとなっているところがちょっと落ち着きません。また、前半部分では、結局、多くの植物で中が詰まっている茎を持つ理由を説明できていません。もう少し論理の流れに気を配れるといいですね。


Q:今回の講義の中で、植物の大部分は断面が円形の茎を持つが、断面が三角形、四角形の茎を持つことで強度を高くしている植物も存在することが触れられた。それに関連して調べるとスイセンが特徴的な断面の茎を持つことが分かった。スイセンの花をつける茎の断面は、楕円形の長軸方向の2か所に角がある形をしている。スイセンは茎の先端が植物体の中心軸に対して外側に折れ曲がり、花が横向きに配置される形態をもつ。このような形態から次の仮説を考えた。スイセンの断面の形は、楕円の短軸方向に折れ曲がりやすい性質によって花を横に向けること、楕円の長軸方向に二か所の角を作り強度を増し、花の重さで完全に茎が折れてしまうのを防ぐことに寄与しているのではないかというものである。スイセンのように球根を持つ植物のなかまとしてチューリップがあるが、チューリップの花をつける茎の断面は円形である。チューリップは花をまっすぐ上に向けて配置する形態をもつためスイセンのような茎の性質が必要でなかったと考えると、仮説の内容に矛盾しない。また、スイセン同様球根を持つ植物で花を横に向けて配置するユリの茎の断面は円形をしていて、仮説の内容に矛盾するように思える。しかし、スイセンは根元から生えた一本の太い茎ごと折れ曲がり花を横に向けるのに対し、ユリは太い茎自体はまっすぐ上に伸び、先端でいくつかの花が咢から折れ曲がり横を向く形態であるため茎自体の形態に特徴が現れなかったと考えられる。
※今回の仮説は種によって花が上を向いて配置したり、横を向いて配置したりしなければならない制約があると仮定したうえでのものになっている。実際に花の配置が利点としてそうなっているのか、他の要因のためにしかたなくそうなってしまっているのかについての考察は文字数が多くなるため今回は省略した。

A:面白いと思います。そうすると、あと、ユリの花の折れ曲がりの部分の構造が気になりますね。


Q:本講義において、繁殖効率、受光効率、力学的安定性の三つの要因で、すべての世の中の植物の形態は説明がつくと学んだ。植物に限らず生物は、複雑な環境下で生活をしている。そのような生物の形態を決定するのに、三つの要因だけでは不十分なのではないかと疑問に思った。例としてバラを挙げてみる。バラの茎には無数の棘がある。棘がある理由として、外敵から守るためや、茎を伸ばしていくときに周囲に引っ掛けるためのものという説がある(文献1)。後者の説は受光効率に関係しているのかも知れないが、前者の要因は外敵の有無が深く関係していて、繁殖効率、受光効率、力学的安定性の三つの要因に当てはまらないと思った。この結果をふまえ、バラの棘の形態決定要因として、外敵のファクターはふさわしくないと考えるか、新たな要因として外敵のファクターを考慮すべきか、二つの選択肢が考えられる。
〈参考文献〉1. 植物のトゲ みんなのひろば 日本植物生理学会、https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=812&key=&target

A:少し論点がずれている気がしますね。最初に「植物の形態は説明がつく」とありますが、実際に見せた図からわかると思いますが、ここで言う形態は、分枝のあり方です。例えば、葉の形も立派な形態ですが、当然ながら繁殖効率、受光効率、力学的安定性で決まるわけではありません。例外として棘を考えるのは不適切でしょう。例外を考えるとしたら、むしろつる植物でしょうか。


Q:茎には葉や花を高い位置に配置すること、中心には維管束が通っており導管で水や無機養分を、師管で光合成により生成された有機養分を、これらを生成できない器官へもいきわたらせること、光合成を行うこと、また栄養分の貯蔵を担っている。なぜジャガイモのように茎に栄養分を貯蔵するのだろうか。そのことには3つのことが考えられる。1つはジャガイモは塊茎であり、多年生の草本で原産が南米アンデス山脈の高地であり、毎年寒くなって地上茎が枯れるため、地下茎に栄養分を貯蔵しているのだと考えられる。2つ目はジャガイモは葉を高い位置に配置するため茎が太くて丈夫であるため、動物などに食べられにくく、かつ地下なので見つかりにくいからだと考えられる。3つ目は養分がつくられる葉に近いところの方が運ぶ距離が短く、効率的だからだと考えられる。

A:考えるテーマとしては悪くないと思うのですが、考えた3つのことは、サツマイモの根でも実現できるのではないでしょうか。何かを論じるときには、あることが当てはまることを言うだけでなく、そうでないことは当てはまらないことも主張する必要があるでしょう。


Q:今日の講義は「なぜ茎があるのか」というテーマから始まった。これに対し「葉/花の配置」が茎の最大の役割であるだろうという考察がされたが、私は「貯蔵器官」としての役割も同様に大きいと思った。この理由として、茎が貯蔵器官として果たす役割が大きいからこそジャガイモなどは地下茎として養分を蓄えるようになったのではと考えたからである。ではなぜジャガイモのように明らかに養分を貯蔵している茎と、タンポポのように一見葉や花の配置のため存在しているようにしか見られない茎が存在するのだろうか。これに対し地下茎を持つものと持たないもので、一様に茎の貯蔵能を測定することが困難であるからではないかと考えた。田所 和 夫・矢島 崇らの研究(1989年)によれば、ミヤコザサの地下茎には優勢な伸長成長をする主軸があり、これが分岐による交代を何度か繰り返しながら直進的に伸長している、とのことである(1)。また群落の維持には地下茎の活性の持続が大きな役割を果たしているとしている。以上のことから地下茎を持つササ類などにとって地下に茎を伸ばす能力はその植物全体の生命力と直結する可能性があり、その機能を推定することは論文を読む限り難しいことではないと感じた。一方でタンポポのように地上部に長い茎をもつ植物では重力や受ける風の抵抗力などが大きいため、力学的安定性を維持するため地上部の茎が短くする傾向にある。これによって枝分かれの数など茎の成長能を測定することが困難になる。以上のことから地上部に長い茎をもつ植物ではその茎の貯蔵機能を測ることが困難なだけで実際にはそういった機能が隠されている可能性があると推測した。
出典(1) 田所 和 夫・矢島 崇、ミヤコザサ地下茎の伸長量と加齢にともなう発稈能力の変化、日林誌、p.345~348、1990年

A:面白い視点だと思うのですが、「茎の貯蔵能の測定」というものをどのようにイメージしているのかがわかりませんでした。ここがわからないと、問題点を把握できません。例えば、重さをはかるだけなら難しくないように思いますが。


Q:タンポポの葉と花の位置について考察をする。タンポポの葉は地上表面に接するように生長していく。このような形態はタンポポの生育環境に影響されていると考えられる。タンポポは主に日光を容易に享受できる地表低くに生える。タンポポのような形態の植物は他の植物や建造物が存在する環境下では生育が難しい。しかし、こういった不利な環境条件が存在しない場合、つまり、日光を遮るような障害物が存在しない場合、地表に接したロゼット葉は受光効率ならびに力学的安定性を優先的に高めた極めて生存に有利な構造になるのではないかと考える。また、タンポポの花は茎の先端部につく。これは先端部につけることによって花を目立たせ、花粉の媒介者である昆虫をひきつけるのに有利であるからだと考える。この場合、茎は花を支える器官としての役割が主である。茎に葉緑体が存在する理由は二次的なものではないだろうか。タンポポの花が受粉し、綿毛状の種子が集まった形態になるまで一度茎は倒れて地表に接するような形態になる。このような現象が起こる理由として、主に食害を防ぐことが考えられるが、それに加え、雨風により茎が折れ、種子の形成を阻害される可能性を少しでも排除しようとする傾向から生じたのではないかと考えられる。このようにタンポポの花と葉の位置には他の植物ではなかなか見られない特徴があるが、それはタンポポが生存する独特な生育環境の条件によって形成されたのではないかと考える。

A:よく考えていて悪くないと思います。ただ、論理が一本道ではないので、ややエッセイ的ですね。科学的なレポートとしては、もう少し直線的な論理にした方がわかりやすいと思います。