植物生理学I 第5回講義

いろいろな葉

第5回の講義では、斑入りの葉や、紅葉や紫キャベツなどの赤い葉のようないろいろな意味で普通の葉とは異なる葉について、その生理学的生態学的意味を考えてみました。


Q:今回の授業では、色の違うものや斑入りのものなど、様々な形態の葉について学んだ。特に興味深かったのはムラサキキャベツの葉が光合成を行っていないという点であった。このことについて考察してみた。まず、ムラサキキャベツが光合成を行っていないのは、一般的に紫色の部分は丸まった葉の内部だからである、と講義で述べていた。それならばなぜアントシアニンという色素を持つのであろう。調べてみたところ、アントシアニンは光合成を抑制する環境要因によって余ったエネルギーが活性酸素を生成し光阻害を起こさないために、そのエネルギーで作られ、結果として太陽光を吸収することで余分なエネルギーができないようにするという、防御機構の過程として生成されるようだ。このことから考えるに、キャベツがアントシアニンを獲得しムラサキキャベツに分化したとは考えにくく、まずケール(キャベツはケールが結球したものと考えられている)がアントシアニンを獲得し、その後結球してムラサキキャベツとなったと考えることができる。

A:考え方の道筋は面白くてよいと思うのですが、その場合、キャベツはアントシアンを失ったのに、紫キャベツはアントシアンを保持し続けたということになりますよね。その違いの説明が必要になるように思いました。


Q:今回の講義で扱った紫キャベツに関して考察した。紫キャベツは、一般的な緑色のキャベツに比べ高い栄養価を持つことで知られている。この紫色はアントシアニンという色素の色であり、その色を持つ理由は諸説あるようだが、紫外線から守るという理由があることを知った。ナスも同様の色素を持っており、ナスの果実部分をアルミホイルで覆って栽培すると白いナスが出来ることから、紫外線によるDNA損傷などの影響を減らすという仮説が提唱されたと考えられる。紫キャベツが高い栄養価を持つのは、紫外線によるDNAなどの損傷を防ぎ、必要な栄養素を多く合成していること、また、授業で扱ったように外側の葉だけクロロフィルを持ち、最低限のクロロフィルのみを合成しているため無駄なエネルギーを使わずに済むためではないかと考えられる。この仮説を検証するための手段としては、紫キャベツを室内で栽培し、紫外線を含まない人工的な光を当てて栽培すれば紫色が薄くなり、より栄養価の高い紫キャベツが栽培できるのではないかと考えた。

A:まず、外側を覆われている結球部分の葉が、なぜ紫外線による損傷を防ぐ必要があるのか、理解できません。そのあたりから説明が必要になると思います。あと、「栄養価」というのは、生物学的に何を指しているのでしょうか?その定義をきちんと考えないと、細かい議論は難しいと思います。


Q:今回の講義で学んだことから、植物の紅葉について考察する。今回、植物は食害を防ぐために斑入りや食痕のある葉を作ることを学んだ。ここで、同様に外見を変えることで、植物は食害を防ぐために紅葉しているのではないかと考えた。これについて調べると、紅葉には食害を防ぐ働きがあるという仮説があることが分かった。ここで、食害を防ぐために紅葉があるなら何故限られた季節にのみ起こるのかということを新たに疑問に思い、考察することにした。紅葉のメリットとしては、食害を防ぐ働きを挙げられるが、逆にデメリットとして、光合成色素でない赤色の色素アントシアニンを増やすことで光合成効率が下がることが挙げられる。つまり、春から夏にかけては紅葉しないことで増加する光合成効率が、食害の被害を上回るために紅葉を起こさないという仮説が立てられる。これから、緑の葉を持つことで増加する光合成効率以上に食害が増加する環境を作って、紅葉が観察された場合にこの仮説を説明することが出来る。

A:きちんと考えているという点では悪くはありませんが、論理構成が、仮説の上に仮説を重ねる形になっているので、説得力がありません。せめて、「これについて調べると、紅葉には食害を防ぐ働きがあるという仮説があることが分かった。」という部分を、きちんと引用の形にして引用元を明示すると、少しは説得力が増すかもしれません。


Q:今回の講義では、主に葉の色素やふ入りの葉の意義について学んだ。その中でコリウスの赤と緑のまだら模様になった葉が模様と光合成能力ねが対応していないということから、このまだら模様がどのような意義を持つのか興味を持った。講義では赤の部分にはアントシアンが多く溜まっていると習った。最も考えられることとしては、講義に登場した「ふ」によって食痕を擬態し、食害を減らした植物のように模様によって葉に病気など何らかの異常があるように見せることで食害を減らしているということ、ユキノシタについての推測のように人為的に突然変異などから品種改良によって生み出されたことが挙げられるが、他にアントシアンの蓄積の意義について、光合成器官の過剰な紫外線からの保護も推定されていることから(1)、もともとコリウスの酸化ストレス防御系遺伝子が壊れやすいなどの原因によって、葉が部分的に直射日光に弱くなり、それを補うためにアントシアンが過剰に生成されるようになったとも考えられる。この仮説を検証するための実験としては、コリウスの遺伝子にアントシアン分解酵素のような遺伝子を組み込み、葉の状態を調べるというものが良いと思われる。
(1) 今関 英雅 「日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A 紅葉現象」 登録番号0425 (https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=0425&target=number&key=0425)

A:きちんと考えていてよいと思いますが、3つ可能性を考えているだけで、それぞれの可能性の妥当性について比較をしていないので、やや底の浅い印象を与えます。「この仮説を検証するための実験」に入る前に、どの仮説が一番もっともらしいかを考えてみるステップがあったほうがよいでしょう。


Q:今回の講義で紅藻は光合成をするが、紅葉は光合成をしないという話が取り上げられた。ここで、紅藻はなぜ光合成を行うのに赤いのかということを疑問に思ったため考察していこうと思う。紅藻とその他植物の植生の違いについて考えれば解決できると判断したため考えてみたところ、①水中で生育している②イオンが豊富な環境(海水)である、という2点が考えられた。①についてだが、水中では空気中に比べて光が散乱しやすく青色の光以外は届きにくいゆえに、青色を吸収する赤色の葉緑体となったと考えられる。しかしこれではオオカナダモをはじめとした汽水中の植物との差異ができていない。そこで次に考えられるのが水深である。海の方が基本的には汽水中に比べて水深が深い傾向にある。また水深が深いとそれだけ光が散乱しやすいことは容易に想像できる。②についてだが、葉緑体は金属イオンにより構成されており、その金属イオンが豊富な海水中ではより多種な葉緑体が作りやすいと考えられる。

A:面白い考え方ですが、論理が一本につながっていませんね。水中環境とイオン環境の間のつながりがありませんし、散乱が大きいことが、どのような帰結につながるのかも説明がありません。あれこれ話題を増やすよりは、ポイントを絞って論理を展開するようにしたほうがよいでしょう。


Q:今回の授業で、葉が紫色であっても、クロロフィルが存在しているところでは、葉の色に関係なく光合成を行っていることが分かった。それは、アカカタバミのように葉の全体が紫色であっても、コリウスのように葉の一部が紫色であっても同じであった。では、葉を紫色にする利点は何だろうか。まず、アントシアンが過剰な紫外線を防ぐことがあげられる。クロロフィルが存在する限り、光合成は行うことができるため、アントシアンにより過剰な紫外線を防ぎ、クロロフィルの損傷を防ぐことができると考えられる。加えて、私は葉温の点を考えたい。色と熱吸収の点では、緑色よりも赤色の方が、温度が上昇しにくい(参考文献)。そのため、一部分であっても、アントシアンが蓄積している葉の方が、葉温が上昇しにくいのではないだろうか。葉温を一定に保つ機構を持たない植物にとって、少しでも昼夜の温度差を小さくすることは、温度によるストレスを減らすことにつながると考えられる。また、過剰な蒸散を防ぎ、乾燥下の環境にもより適応することができると考えられる。
参考文献:三根晴雄「物体色と熱吸収との関係についての研究」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh1946/14/8/14_8_960/_pdf/-char/ja

A:ずいぶん古い参考文献ですね・・・。それはさておき、ここで比較すべきなのは、緑と赤の間ではなく、緑と「緑と赤の混ざった色」の間ですよね。アントシアンがクロロフィルの損傷を防ぐことが目的なのですから。そうだとすると、前者の緑の方が温度が上昇しにくくなると思いませんか?


Q:授業ではふ入りの葉は食痕の擬態なのではないかという説が紹介されたが他の理由も考えられるのではないかと思い考察することにした。植物にとって光合成をすることは必須であるが、細胞内において葉緑体を持つのと持たないのでは当然持つほうがコストが大きい。よって光があたりづらい場所に位置する葉の細胞ではコストを削減するため、葉緑体が消失した細胞が表れ結果としてふ入りの葉ができるのではないかと考えた。1度葉緑体を持った細胞から葉緑体が消失するというのはエピジェネティクスを考えれば可能であるといえる。しかし光合成の量を減らしたいなら単に葉の大きさを小さくすればよいのではないかと考えられるかも知れないが、時間や季節などによって光のあたる位置や量は変化するので葉が充分大きくなってから光合成の量を調節するためにふ入りの葉が表れるのではないかと考えた。

A:考え方は面白いのですが、もし、葉緑体の総量を減らしたいのであれば、部分的に白くなるまで減らすより、全体を均一に減らして薄緑にした方が、葉緑体同士の重なりも少なくなって効率的でしょうから、得だと思うのですが、どうでしょうか。葉の色を薄くするのではなく、斑入りにする必要性としては、もう少し別の仮説が必要であるように思います。


Q:ウイルスやファイトプラズマによっての花の模様の形成について調べた結果、ウイルスによって花の模様が形成される例としてチューリップやツバキがあげられ、ファイトプラズマによって花の模様が形成される例としてアジサイがあげられる。まず、チューリップやツバキについてだが赤色の花のところどころが不規則に白くなる品種がある。個々の花がそれぞれ違う色になるため貴重な品種として維持されてきた品種も多いが、これらの模様形成はウイルスにって引き起こされている。このような品種を穂木にして接ぎ木を行うと、穂木の花の赤色が部分的に抜けてくることが明らかにされており、これは、ウイルスが穂木に移行して増殖しているためであると考えられる。また、ウイルスによって花弁が白く抜けるのは花弁分化の初期に茎頂部で起こる反応であり、花弁のpHやアントシアニンの分解で起こるものではないと考えられている。また、アジサイの例を考えると、ファイトプラズマが感染すると花弁が緑色のまだら模様になる。これは、アジサイののがく片がファイトプラズマの感染によって、量的に葉に形態形成するからであり、がく片の形成にとって重要な役割を果たす遺伝子発現の変化によることを明らかにしていると考えられる。

A:これだと、調べた結果を単に書き連ねているようにしか見えません。自分なりの論理をきちんとレポートに書くようにしてください。


Q:光合成色素について考える。植物の葉は青々とした状態で光合成を行い、老化が進むとだんだんと葉緑体がぬけ、完全に紅葉した状態ではほぼ光合成を行わなくなる。葉緑体がほかの器官に比べてコストが高いのであれば、仕事を終え次世代に交代する老化した葉においては維持コストを効率的に減らすという意味で有意義であると言える。ここで私が疑問に思ったことは果実についてだ。果実も紅葉するのと似たように緑色から熟すにつれて色を変化させていく。しかしこの色の変化は葉緑体の欠落ではなく有色体への変化とその有色体によるカロテノイド合成などの反応によるものだ。最終的に有色体が作り上げられる点に関しては捕食者の気を引きつけるという意味で納得できる。だが、有色体の前段階として葉緑体を経由する必要はないように感じられる。なぜなら葉緑体自体に高い製造コスト、維持コストが要求されるはずだからである。単純に最初から果実では有色体を作れば良いのではないだろうか。白い果実が成熟して赤くなる方がコストは低いと考えられる。この疑問の解決方法として考えられるのは原色素体から有色体に変化するまでと葉緑体を経由する場合との呼吸量や時間といったコストと考えられるものの差を比較することがある。また、それを行うためにもあまり解明されていない有色体形成のプロセスを解明する必要があると考えられる。

A:きちんと考えていてよいと思いますが、講義の中の写真で示したように、緑色の果実もきちんと光合成をしています。そうすると、もっと単純な仮説として、白い果実だと光合成の稼ぎが0なので、果実は緑色にしておいた方がよい、という考え方があるように思います。


Q:葉の色によって光合成効率は変化するのかという点から、海藻の光環境への対応について考える。陸上植物は基本的には緑色であるが、海藻は種によって緑、赤、褐色、黄色など様々な色をしている。これは海では深くなればなるほど波長の長い光から届かなくなることや水面近くでは植物プランクトンが豊富であり緑色の光が大きいことがかかわっている。例えばワカメは緑色の光をクロロフィルに伝達する光合成色素フィコビリンによって緑色~青色の光を吸収することに特化し、光合成効率を高め生存競争に有利に働いていると考えらえる。またフィコビリンを持つ紅藻は、生息する深度が浅ければ浅い紅藻ほどフィコビリンの量は減少しているという報告がある(参考文献)。ここでこの光環境をどのように海藻たちは認識しているかについて考える。ここで深度の異なる別の環境で育つ紅藻を比較すると、植物プランクトンによる緑光や栄養分などのほかの要因も関わってくると考えるため、同じ個体を使用したい。そこで大きいもので5m以上になる海藻、アカモクを使用して、深度ごとのアカモクの光合成色素の発現量と発現にかかわるタンパク質を調べることで海藻類の光環境への対応機構について知ることができるのではないか。
参考文献:日本植物学会 第二回 海の中の赤い植物“紅藻”の謎、http://bsj.or.jp/jpn/general/research/02.php

A:これだと、半分以上が参考文献の紹介なので、自分の考えた部分が貧弱ですね。また、「光環境をどのように海藻たちは認識しているか」という問題設定があいまいで、それに対応して「光環境への対応機構について知ることができる」という結論部分もあいまいです。もう少し問題点を明確にして、提案する方法によってなぜその問題点が解明されるのかがわかるように書く方がよいでしょう。


Q:今回の講義でキャベツの話が出たが、キャベツは外側の葉が古く内側の葉のほうが新しい葉である。光合成の面では、外側の葉のほうが光を浴びられるので外側のほうが光合成量は多いと考えられる。しかし、呼吸面から考えてみるとどちらのほうが呼吸量が多いのであろうか。内側のほうが細胞は活発で必要とする酸素量は多いはずであるが、葉の内側にあるために酸素供給量は少ない。しかし外側の葉は細胞が衰えているためにあまり酸素は必要としない。この問題はそれぞれの葉の呼吸量を測定することで解決できると考える。重さと呼吸速度を求めることで呼吸量を知ることができる。予想では内側の呼吸量が多いのではないかと考えられる。酸素濃度が薄くても呼吸速度は内側が大きいと思われる。

A:「この問題は」とありますが、これは、その前に言っている酸素濃度の勾配に関する仮説を指しているのですね。そうだとすると、その後に引き続くのは、単にその勾配を測定する、という話ですから、当たり前としか言いようがありません。もう少し、自分なりの論理が欲しいところです。むしろ前半を膨らませたほうがよいでしょうね。


Q:今回の授業では、緑葉が紅葉になる過程で葉緑体を失っていき、代わりにアントシアニンが合成されていくということを習った。ここでまず生じる疑問は、なぜ植物がアントシアニンを合成する必要があるのかということである。まず紅葉のメカニズムにて説明すると、植物は冬になると気温の低さや日照時間の短さなどから光合成効率が悪くなるため、クロロフィルを分解して枝にとりこむ。この時、同時に枝と葉の間に離層と呼ばれる壁をつくり、水や栄養の行き来を少しずつ遮断する。葉ではまだクロロフィルが少なからず存在し、光合成を行っているため、光合成によってつくられたグルコースは枝に送ることができず、葉に蓄積される。細胞の液胞中でこの過剰に蓄積されたグルコースが行き場を失い、様々な生合成経路を経てアントシアニンが合成される[1]。すなわち、ここでの疑問はなぜ植物がグルコースからアントシアニンを生合成する回路を持っているのかということである。これに対しては現在仮説が立てられており、葉緑体が分解される際にクロロフィルがむき出しになり、これが青色光を吸収するときに活性酸素を作り出すが、アントシアニンは代わりに青色光を吸収してくれる[2]といったものである。この仮説は非常に論理的であり、個人的にも賛同できるものであるが、次に生じる疑問点は、なぜすべての植物で紅葉が起きるわけでないのかという点である。この仮説に従えば、植物は葉緑体を分解するときは紅葉した方が得であるはずだ。しかし、実際は多くの落葉植物では葉が茶色や黄色になり、紅葉する植物は決して大部分を占めてはいない。紅葉しない植物においては、葉に蓄積されるグルコースは呼吸によって消費されていると考えるのが妥当だろう。アントシアニンを合成して活性酸素を吸収するか、アントシアニンを合成せずにエネルギーを得ることを選ぶのか、どちらにも利点はあるため、紅葉をする植物としない植物が共存しているのだと考えられる。同じ種類の植物で、紅葉している葉としていない葉の呼吸速度を比較すれば、この仮説の是非を確かめることができるだろう。
参考文献:[1] もみじかえで研究所https://www.momijikaedelab.jp/%E3%82%AB%E3%82%A8%E3%83%87%E5%B1%9E%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A0%B1%E5%91%8A/%E7%B4%85%E8%91%89%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0/、[2] 森林・林業学習館 https://www.shinrin-ringyou.com/topics/kouyou2.php

A:最後の方の論理展開はまあよいと思いますが、最初の半分以上が、背景の説明に充てられているので、この部分はもっと省略したほうがよいでしょう。あと、内容に関しては、もう落葉間近な葉が、エネルギーを得て何をするのだろうか、という疑問が残ります。


Q:今日の講義では葉の色について扱った。なぜ斑入りの葉のうまれるかについて考えられる原因の一つにウイルス感染があるという。感染すると葉は柵状組織だけなどと限定的に侵される場合も多く、それが模様として現れるというわけだ。ここで疑問に思ったのがウイルスにとって、葉を白くさせたり黄色くさせたりして光合成効率を落とすことのメリットである。寄生や共生して生きる生物には、宿主から養分を安定的に吸収するために宿主を生かすよう立ち回っているものがいる。私はこれを合理的だと感じていたからこそ、葉の光合成効率を下げることはウイルスにとってもマイナスに働くのではないかと考えた。そこで考えられるのはウイルスにとって葉は感染する上でゴール地点ではなく、葉を足掛かりに広く蔓延することが目的であるということだ。外気に触れる器官のうち大きな面積をもつ葉に大きく感染することで、そこで生活する昆虫や微生物にウイルスが付着しやすくできる。これにより隣の葉へとウイルスが蔓延していくことが可能であると予想する。すべての葉から緑色色素を抜くわけではなく部分的であることからも、光合成効率を下げることでウイルスに働くマイナス点は低いと考えられる。

A:これは、着眼点は良いですし、文から文へと論理もつながっていますが、全体として一つの流れになっていません。これを第一稿にして、最初の部分に問題設定を置いて、対応する結論を末尾に置くようにして間を整えると立派なレポートになるでしょう。


Q:葉に斑点模様をもつことで虫に卵を産み付けられるのを回避している植物があることを知った。授業で紹介された実験系では直接模様を書き込んでいたが、プロジェクションマッピングの技術による斑点模様の投影でも同様の効果が得られるならば、それを作物の栽培などに応用して害虫による被害を減らせるのではないかと考えた。プロジェクションマッピングによる虫害の予防効果を調べるための実験系について考察する。同じ投影機器を用いて、①何も投影しない場合、②白色光のみを投影する場合、③白色光とともに葉に斑点を投影する場合、の3つの場合での産卵された葉の数を比較する。植物は、葉の繁り具合が同じような別個体を近辺で探し場合ごとに1サンプル用意する(植物体が大きく、ある場合の投影範囲が他の場合の投影範囲に干渉しないならば単一の個体をサンプルとして用いても構わないかもしれない)。また、マッピングの投影範囲を予め決めておき、投影範囲内の葉に関して産卵の有無を調べるものとする。産卵が行われたどうかについては、実物を見ることによる直接的な確認と暗視カメラの記録映像を調べることによる間接的な確認によって判断する。マッピングは夜間に行うので昼間に産卵が行われた葉はデータとしてカウントしない。この実験を何度も行い、産卵された葉の数のデータを統計的な解析にかけ、虫害による被害の程度に有意な差があるかどうかを確認する。

A:プロジェクションマッピングを使うというアイデアは、斬新でよいと思います。鍵は、虫がどの時間帯に散乱するかでしょうね。色で判断すると仮定している以上、昼間に散乱している可能性が高いように思いますが。


Q:今回の講義では、紅葉や斑入り葉のような葉の色について生理学的な内容が取り上げられた。その中でも若葉は成熟した葉と比較すると色が薄いという内容に関連して気になることがあったので考察することとする。先月中旬から自宅の庭にある梅の木に若葉が生え始めた。しかし、快晴が何日か続いた月末に梅の木を見ると、新しくついた若葉の多くが丸まってしまっていた。対してそれ以外の成熟した葉は通常とおりの形状であった。原因として最初はアブラムシなどの害虫による食害を考えた。しかし例年食害が見らるのはもう少し前の時期で、農薬による対策も行っていたため原因としては考えにくい。そこで生理的な要因が関連していると考えることとした。講義内で、若葉は防御構造が未発達であるため貴重な葉緑体をあまり含んでいないという事を学んだ。そこから、若葉は成熟した葉に対して葉緑体密度が小さく光飽和点も低いと考えられる。そのため今回のように強光条件が連続すると光阻害による葉緑体の酸化損傷を防ぐため、光飽和点の低い若葉が成熟した葉よりも先に、葉が丸まって葉の表面にあたる光量を調節するしくみが働くと考えられる。

A:そのような可能性もあるかもしれません。ただし、葉緑体の密度が小さくても、一つ一つの葉緑体が、普通の葉緑体であれば、最大光合成速度は違っても、酸化損傷の受けやすさなどはそれほど変わらないかもしれません。未成熟葉は、クチクラなども薄いでしょうから、むしろ乾燥ストレスを受けていた可能性もあるかもしれません。


Q:キャベツは形からして、光合成をしにくい葉の付き方になっていると考えられる。キャベツは、主軸の芽が肥大化したものである。多くの植物の芽は、短い茎にたくさんの葉が付いて萼や苞に包まれているので、若い葉は互いに重なり合い、密に詰まり、キャベツのようになっている。キャベツができるまでは、展開したロゼット状の緑葉をもっていて光合成をし、栄養をため込んでいる。ある時期になると、主軸の芽が貯蔵器官となり、それまでに茎や光合成葉にため込んだ栄養を送り込んだり、新たな光合成産物が芽に送られて、肥大した結球キャベツができる。そのため、結球キャベツ自身は光合成をしなくても大きく成長することができる。つまり、キャベツは、開く前の芽が貯蔵器官化して大きくなったので、光合成器官ではない。なので、葉はたくさんあるが、光合成に不向きな形をしていても生き残ることができるのであると考えられる。

A:最後の「なので、葉はたくさんあるが、光合成に不向きな形をしていても生き残ることができるのであると考えられる。」という部分が結論なのだと思いますが、これだけだと論理展開として不満が残ります。ただ、文を書き連ねるのではなく、この結論に持って行くと決めたら、最初に「キャベツはなぜ光合成に不向きな形をしていても生き残ることができたのであろうか」という問題設定を明確にして、そこへ向けて論理を構築すると、理系のレポートっぽくなります。


Q:若い葉の色が明るい理由について、授業では貴重な葉緑体を外敵から守るためだと習ったが、別の理由もあるのではないかと思う。一つ目に、もし維持コストの問題や光合成効率の問題から葉緑体の密度に上限があるのだと仮定すれば、葉の薄い若葉では空間的に葉緑体を置ける場所が限られている可能性がある。葉緑体は細胞壁の細胞間隙に接する部分に沿って並んでおり、重ならないように隙間なく並べたとしても一つの平面に置ける葉緑体の数には上限がある。柵状組織ではこれを三次元的に何層も重ねたような構造になっている。例えるなら、カーボンナノチューブのような葉緑体の配置をしている。つまり、密度に上限がある場合、葉緑体数を増やすには厚みを増やす必要があるということだ。若葉では柵状組織の縦方向の厚みが小さいために葉緑体を置く場所があまりないのではないかと考えられる。二つ目に、成長に伴う細胞間隙の増加によって透過性が下がることが葉を暗緑色にすると考えられる。実際に細胞間隙の空気を抜くと光の透過性が上がり、暗緑色に見えていた葉が鮮緑色になる[文献1]。これら二つの要因によって若葉は古い葉に比べて明るく見えるのだと考えられる。また二つのうちでより強く効いているのは後者であると予想される。それは、すでに述べたように葉の細胞間隙の空気を抜いた時、葉緑体を多くもつ古い葉でも葉の色が明るくなったためである。寿命の短い草本で、若葉と古い葉の色の違いがあまりないのは、寿命の短い植物ほど組織の成長速度が速く、葉緑体を置く空間や細胞間隙ができるのが早いためだと推測した。もしそうであれば草本にも葉の色が明るい時期が少なからず存在するため、発芽の初期段階から経時的に観察することで確認できる可能性がある。
文献1:福原達人 植物形態学 4-4. 葉の背腹性と断面・色 Webサイト https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/4-4.html (2018/5/16閲覧)

A:これは、講義で僕が述べた内容を鵜呑みにせず、批判的に自分で考えているという点で高く評価できます。また、知りえた情報から、きちんと論理的に考察していてよいと思います。