植物生理学I 第4回講義

植物の葉と環境

第4回の講義では、植物の葉の形態の共通性と多様性を考えることにより、それらが何に由来し、何を意味しているのか、という点を中心に講義を進めました。


Q:授業では、水中の酸素濃度・二酸化炭素濃度の話があった。酸素濃度は空気中に比べはるかに少なく、二酸化炭素濃度は空気中とさほど変わらないとのことでったが、窒素濃度についてはどうかと思い調べてみた。窒素は光合成系のタンパク質を生産するために不可欠な元素であるが、肥料に窒素が含まれているように、窒素は自然環境において不足しがちな元素である。しかし、水中には、富栄養化といわれる現象があるとおり窒素が豊富な環境というのは珍しくない。植物において窒素の利用効率は光合成能力に大きく関わってくるので、窒素が豊富な水中では光合成も盛んに行われ、酸素も多く生成される。このようにして、空気中に比べて少ない酸素も補えるのではないか。こう考えてみるとやはり水中は植物にとって決して悪い環境ではない。
〈参考〉
・日本光合成学会、http://photosyn.jp/pwiki/index.php?%E7%AA%92%E7%B4%A0%E5%88%A9%E7%94%A8%E5%8A%B9%E7%8E%87
・学研キッズネット、https://kids.gakken.co.jp/kagaku/eco110/answer/a0059.html

A:文章の流れは悪くないのですが、疑問点は調べものによって解決されているので、何を考えたレポートなのか、焦点がはっきりしません。自分の論理をはっきりさせるためには、問題設定を最初の方で定義したほうがよいでしょう。


Q:今回の授業では水生植物での気孔や呼吸について学んだ。陸上植物の気孔の役割として、一つ目は酸素や二酸化炭素等のガス交換、二つ目は蒸散による水の流れ(蒸散流)の形成、三つ目は蒸散による温度調整というものが挙げられる。ここで、水生植物では一つ目と三つ目は必要ないことが分かるが、二つ目の蒸散流が作れないという点についてどのように補っているのかということを疑問に思った。陸上植物において蒸散流があるのは、根から葉への水の流れを作り、水・物質の輸送をするためである。つまり、蒸散流の作れない水生植物では物質輸送の点で不利だと考えられる。私が輸送について学んだこととして、キネシンやダイニンなどのモータータンパク質が有り、これを使えばエネルギーを必要とするものの、輸送を補うことが出来る。ここで、水生植物は陸上植物よりも輸送能力に劣るため、余分にエネルギーを使っても輸送を行う必要が有ったという仮説が立てられる。これを証明するためには、陸上植物と水生植物で細胞内のモータータンパク質の分布や働きを観察・比較すればよいと考えた。

A:考え方はよいと思います。水生植物というときに、藻類を含めているのかどうかがわかりませんが、含めている場合は、そもそも維管束がありませんから、その点を考慮する必要があるでしょうね。


Q:今回の講義では、環境や成長による葉などの形態の変化について学んだ。その中で里芋の葉の撥水性について、光の受容効率や気孔の確保のためと説明を受けたが、光の占有という観点もあるのではないかと考えた。里芋の葉は横に大きく広がっている。広葉型の植物の場合葉一枚ごとの光の占有度はイネ型の葉と比較してかなり高い。この時、自分の近くで他の植物が発芽しても周りの地面に届く光を占有することでそれらの発育を抑えることができる。この時、葉が地面に近ければ近いほど占有する場所が安定して確実に占有できると思われる。しかし、葉を横に大きく広げると雨水などがたまりやすくなり、背丈が低いために風などの影響に受けにくく、雨水が流れにくくなる。この水を流すために葉の撥水性を高め僅かな傾斜や揺れによって葉の上の水が流れるようにしたと思われる。このような考えから、里芋の葉の撥水性は講義で学んだ理由の前に光の占有なども関係しているのではないかと思われる。

A:植物の葉のつけ方に関しては、また話す機会があると思います。でも、ここで書かれた考え方も面白いと思います。


Q:今回の講義では水生植物の葉の形状について取り扱った。普段よく磯にて生物を観察しに行く私は海草などの形態についてふと疑問に思った。そこで図鑑(今原幸光,写真でわかる磯の生き物図鑑,トンボ出版)を見たところ、ボウアオノリやミルの仲間といった海草は嚢を形成しているということがわかった。そこで海草が嚢を形成する理由について考察していこうと思う。まずは、水の抵抗である。球体だと、平面に比べて水の抵抗が少ないと想像できる。しかしながら、球体よりもオオカナダモのように線状の方が抵抗が少ないように思える。そこで次に考えられるのが嚢の内部の水分についてである。球状に水分を取り込むことで、浸透圧により濃い液体(海水)へイオンが流出するため内部の水分が薄く保たれると考えられる。それにより、海草が塩などの不必要な成分を取り込まずにすむようになる。これにより、海水中においても比較的薄い水で生育することが出来る。

A:「球状に水分を取り込むことで、浸透圧により濃い液体(海水)へイオンが流出する」という部分がわかりませんでした。浸透圧によって、水は濃度が低い液体から濃度が高い液体へと移動しますが、イオンに関しては濃度勾配に従うことになるでしょう。


Q:今回の授業で、サトイモの葉には表面に小さな突起があり、高撥水性を持つことを学んだ。高撥水性を持つ理由として葉の表面の水滴により光の量に濃淡ができ、光合成量が減るのを防ぐためとのことであった。しかし、多くの植物の葉は、表面がクチクラ層とされにそれを覆うワックス層で覆われており、撥水性を持っている。なぜ、サトイモの葉は他の植物と比べ特に高い撥水性を持ったのだろうか。まず、高撥水性により、水滴が流れるときに、葉の表面に付着した害虫や菌・細菌、汚れを洗い流すことができる。これは葉の自浄作用として知られており、病気への感染のリスクを低くしていると考えられる(参考文献)。加えて、サトイモは、熱帯が原産であり、雨が多く気温が高いところが生育に適している。スコールが降った後、すぐに光合成を盛んに行うためには、高撥水性が必要であったと考えられる。また、葉から直接水を吸収できないことは、乾燥に弱いサトイモにとって不利なように思えるが、高撥水性により落ちた水は根からも吸収することができるうえ、なるべく多くの時間を光合成に費やすことができるため、サトイモは高撥水性を獲得したと考えられる。
参考文献:相賀彩織、伊藤純一「葉の表面構造と撥水性の発現機構—イネの葉における微細構造とロータス効果—」植物科学最前線 2015年 http://bsj.or.jp/jpn/general/bsj-review/BSJ_Review6B_102-111.pdf

A:講義での話がやや分かりづらかったかもしれませんが、光の濃淡は、水滴がない方が少ないので、濃淡だけを考えたら、撥水性がない方が得になります。レポートの論理自体はよいと思いますが、文献に論理を頼っているように見えるので、そのあたり、もう少し自分なりの論理にできるともっとよくなりますね。


Q:光合成に必要な要素は光、水、二酸化炭素の3点である。水中では、水はもちろん水中であるから豊富であり、二酸化炭素は水中のpHが大きくなると炭酸イオンや重炭酸イオンがふえて割合的には減ることはあるが、空気中の二酸化炭素と水中の二酸化炭素は平衡状態となっているため量としては変化がないといいうことを授業で学んだ。つまり水中での光合成での律速要素は光であると考えられる。それを考慮して水中の海藻について考えてみることにした。海藻には緑色だけではなく褐色や赤色など様々な色のものが見られるが、これは光が海に吸収されることによって、波長が変化し陸上の植物が多くもつクロロフィルとは違う色素で光を吸収したほうが効率よく光エネルギーを化学エネルギーに変換することができるのでこのように色が変化しているのではないかと考えた。

A:光合成色素については、植物生理学IIの最初でやりますが、基本的には、このような考え方でよいと思います。


Q:水生植物は気孔を持たず、水中に溶け込んでいる二酸化炭素や酸素を細胞から直接取り込んでいる。二酸化炭素は溶解度が高いので水に溶けやすく、空気中と水中で濃度に大きな差はない。しかし、酸素は溶解度が低く、空気中に比べて水中での酸素濃度は高いといえる。ここで、水中の植物は光合成のたまに二酸化炭素を取り込むことは水中でも陸上と同様に可能であるが、呼吸のために十分量の酸素を取り込むことが少し難しいのではないかと考えた。溶解度が低い酸素はそもそも水中には空気中に比べて少ないため、溶け込んだ酸素という考えより、水中で酸素が作られる、水分解により酸素が水中に供給されているという考え方ができるのではないか。2H2O→2H2+O2 この反応をおこすためには外部からのエネルギーが必要とされるだろう。そのエネルギー源は太陽エネルギーだと考えられる。

A:うーむ。大胆で面白いのですが、そもそも呼吸は何のためにするのでしょうか。エネルギーを得るためだと思うのですが、呼吸をするためにエネルギーが必要だとすると、そのエネルギーを直接使ったほうがよい、ということになりませんか?そのあたりの説明が必要でしょう。


Q:今回はどのような環境に植物を置くと1個体あたりの光合成量を高められるか?について考える。僕は今週の授業で水の中に生息する植物は浮力を使えるため、地上に比べ頑丈な体を作る必要がないというところに注目した。そこで無重力空間である宇宙(空気はコントロールし地球と同じ環境)で植物を生育した場合さらに頑丈にする必要がないのではないか?と考えた。つまり、茎が太くなくてもとても大きな葉をつけることができる。さらに東北大学の高橋教授によると(参考文献)無重力空間では成長の進行方向が制御できなくなり、色々な方向に伸びていくため、一方向からの日光のみならずあらゆる方向からの日光をどこかの葉が受けることができると予想できる。さらに無重力空間のため根から得た水分や養分を茎、葉に運搬するエネルギーは地上より少なく済むと考えられる。よって植物の光合成量を高める可能性のある環境として宇宙を挙げることができる。 参考文献:http://www.jaxa.jp/article/special/kibo/takahashi_j.html

A:これも大胆で面白い考え方ですが、根の成長の方向が制御できなくなると困りませんか?葉は、あらゆる方向から人工的に光を当てることで何とかなるかもしれませんが。


Q:今回の授業では、キクモやミズハコベなどの水生植物は、気中葉と水中葉で形が大きく変化するということを習った。気中と水中で葉の形態が変わるということは、外界の環境変化に応じて葉の形態形成にかかわる遺伝子発現が制御されていると考えることができる。Ludwigia arcuataでは気中葉を水に浸けることで、途中から水中葉が形成されることが確認されている[1]ように、水生植物の葉の形成に関する環境応答は極めて迅速である。このような水生植物は一度陸に上がった後に水辺へ戻ったため、かつて陸に適応していた時の葉の遺伝子を持っているはずだ。おそらく水深の浅い場所で生活する植物たちにとって、両方の形質を発現させる選択肢を持つことは有利であったのだろう。しかし、せっかく水中に適応した水生植物が気中葉を作るのは、非常にもったいないようにも感じられる。というのも、気中葉は水中葉と比較してクチクラや気孔を必要としたり、細胞層を厚くしたりとコストが大きいからだ。かつて植物が陸上に進出して、今では植物のほとんどは陸生である。多くのリスクがありながらも植物が陸上に進出できたということは、それだけ空気中の方が光量や酸素の獲得などメリットが多いということでもあり、水生植物が今でも陸生植物の形質を発現できるようにしているのは、それだけ陸上が植物にとっての楽園であるということを示しているのではないだろうか。
[1] 総合研究大学院大学 生命科学研究科http://www.nibb.ac.jp/event/cat114/06/12/post_197.html (2018/5/12アクセス)

A:これもよく考えていますし、論理的につながっているのですが、なんとなくエッセイを読んでいる感じですね。科学的なレポートとしては、もう少し問題設定を最初の段階ではっきりさせて、その問題設定の解決に向けて議論を進める形式にした方がよいと思います。


Q:水中植物は気中植物と違い葉に気孔が無い。それは水中で生活する場合、水に溶けた二酸化炭素を葉の表面全体から吸収できるからである。茎や葉は水中で適応できるように変化させていて茎でも光合成できるものもある。また、水を利用した受粉もできるようになっている。水中植物は水中で生存できるように独自の進化を遂げている。しかしそもそも水中から出てきた陸上植物がなぜまた再び水中に住みだしたのか。激しい自然環境の中生き延びるために水中へと移動したと考えられる。陸上に住み続けていた植物にとって水中というのは未開拓の地であった。陸上から水中へと再び適応し、進出したのは新生代第三紀初期だと言われている。流れとしては古生代からコケ植物シダ植物、中生代から裸子植物、新生代から被子植物が出現し始めた。陸上に完全に適応してから再び水中に戻って行くのはなかなかに難しいように感じる。水中に行かなければいけないほど追い詰められていたということになる。
参考文献 水生植物とは http://www2.kobe-c.ed.jp/shizen/wtplant/wtplant/14006.html

A:自分の頭で考えているのが感じられてよいのですが、一方で、考え付くままに文章にしている感じです。レポートなので、問題設定をはっきりさせて、論理でもってその問題を解決する、という形式をとってみてください。


Q:水生植物の葉には細長い形のものがよく見られる。理由として1つに挙げられるのは葉に対する水流の抵抗を抑えることが考えられる。そのことから、特に水の流れを受けやすい水中葉はその生育地の水流の速さに影響されて形が変化しているのではないかと考える。川の流れが速い地点であるほどより細長い葉を持つ水生植物が多く生息しているのではないかと予想する。

A:これだけだと中学生でも思いつきそうですよね。もう少し、大学生らしいロジックを組み立ててください。


Q:ヒイラギの葉はどれも棘があるとばかり思っていたので、大木になった後葉が丸みを帯びていくことを知り驚いた。そこで疑問に思ったのは、幹が成長しヒイラギの葉が外敵を上回る高さまで成長したことを、植物体のどの部分がどうやって感知しているのかということだ。まずどの部分がという点について、私は植物が気孔の数を感知する部分で葉の高さを推測していると考えた。当たり前だがシカなどの外敵に葉が食べられてしまえば、その分気孔の数が減り植物体が持つ気体を循環させる力が小さくなる。これによって孔辺細胞の体積を増やそうとするシグナルも伝達できなくなるだろう。このことから葉は自身が外敵に食べられてしまうような低さにあることを感知し、それ以上食べられないようにするために棘を持つ葉を増やそうとすると考えた。

A:これも、面白い問題を取り上げているのですが、論理がぼんやりしていて明確ではないので、展開に説得力がありません。そもそも、気孔の数を感知しているのかどうか、という点がわからなければ、単にわからないものをわからにものに当てはめているだけのように感じます。そのあたりを改善して欲しいと思います。


Q:光のエネルギー以外が植物の光合成を律速していたら葉は平たくならず、葉の形が変化していたら光以外の環境要因が重要な役割を果たしていることを学んだ。この観点からクビレズタ(海ぶどう)の形態について考察する。クビレズタは多核単細胞の植物で、葉に相当する位置には柄付きの球形部分がある(参考文献1)。クビレズタは全体が一つの細胞でできており、細胞層は一層である(参考文献2)。このことは水草の葉の構造に見られる「細胞層が少なく間隙がないことで植物体の表面からの拡散による物質の取り込み効率を上げている」ことと対応していると考えられる。また、球状の形態は表面積が最も広くなるので、拡散による取り込みに最適なものであると予想される。さらに、球状部分が密集した房同士は間隔をあけて配置されているが、このことは「葉の部分部分で受光の度合いにむらがあると全体的な光合成の効率が落ちること」と関係しており、受光度合いのむらを防ぐための工夫であると考えられる。
参考文献
1.「そよかぜの中でPart2:クビレズタ(海ぶどう)」,https://soyokaze2jp.blogspot.jp/2017/03/blog-post_24.html?m=1.(参照日 2018-5-12)
2.「クビレヅタ→クビレズタ(その他自然科学)-瀬田葉月の「南の島の静謐な日々」」,https://blogs.yahoo.co.jp/coral_lounge84/53267114.html.(参照日 2018-5-12)

A:論理の立て方、組み立て方はしっかりしていてよいと思います。ただ、「球状の形態は表面積が最も広くなる」というのは、何を言っているのでしょうか。少なくとも体積当たりで考えた場合は、球は、最も表面積が小さい形状です。


Q:なぜシダ植物の祖先は茎に相当する器官しか持たなかったが、折りたたまれて平面化することにより大葉が進化したのか。このことには2つのことが考えられる。1つ目は地球上に大きな生物が出現したことで、光を得るためには生物より大きく成長する必要があった。そのためより光合成をおこなえるよう光を浴びる表面積を大きくするかつ、気孔の数を増やすためだと考えられる。2つ目は地球上の空気のうち二酸化炭素が占める割合が減少した。そのためより効率よく光合成をおこなうため、空気と触れる表面積を大きくしたのだと考えられる。またその進化の過程で針葉樹が亜寒帯に多く出現したのは1つ目は雪が積もりにくくなるようにするため、2つ目はシベリア(内陸)などでは空気が乾燥するので、蒸散を防ぎ水を貯めておくため、3つ目は針状の形をとることで外敵から身を守るため、4つ目はより光の当たる表面積を大きくするためだと考えられる。

A:目の付け所は良いですし、自分で考える姿勢も感じられますが、単に「考えられる」というだけで、「なぜ」がなければ、人は納得しません。「自分はそう思うんです」だけだとサイエンスにはなりません。


Q:今回の授業おいて、光のエネルギー以外が植物の光合成を律速していたら、葉は平たくならない、すなわち、葉の形が変化していたら光以外の環境要因が重要な役割を果たしているということに興味を持った。植物の光合成を律速する光エネルギー以外の要因として、温度、二酸化炭素、湿度など複数の要因が考えられる(文献1)。これらの要因を光合成の律速における関与を最小限にし、より平たい葉を育てることは可能なのか疑問に思った。この問題を解決するには、様々な要因において、一つずつ対照実験を行い、光合成の律速における関与を数値化し、またグラフ化することで、それぞれの光エネルギー以外の要因においての最小限の律速関与条件を見つけるという方法が一つの手ではないかと私は考えた。
参考文献 1.光合成の律速、http://photosyn.jp/pwiki/index.php?%E5%85%89%E5%90%88%E6%88%90%E3%81%AE%E5%BE%8B%E9%80%9F

A:疑問が明確に設定されていてよいと思いますが、その回答は、ごく一般的なものですし、やはり「考えた」というだけで、論理的な流れが存在しません。この講義のレポートで必要なのは論理の流れです。


Q:今回の講義では水生植物の気中葉と水中葉では形状に違いがあるという内容が扱われた。そこでいろいろな水生植物について調べみると、アヌビアス・ナナという水生植物において気になる点があった。アヌビアス・ナナは気中葉と水中葉で形状の違いがほとんどないらしいという点である。講義でも扱ったとおり、通常気中葉に比べて水中葉は、水の抵抗の影響で細くなり、光が届きにくいため(これだけの理由ではないが)薄くなるなどの傾向がある。今回、アヌビアス・ナナにおいて気中葉と水中葉の形態にほとんど変化がない理由として、次のようなことを考えた。アヌビアス・ナナはアフリカ中部原産である。アフリカはテーブル上の地形をしていて傾斜が緩いため川の流れが遅いと考えられる。してがって川の流れによる水の抵抗に対する防御として葉の形状を細くする必要がなかったと考えられる。また、アフリカ中部は赤道直下であり日照が非常に強く、水中であっても十分に光が得られるために光合成効率を補うため葉が薄くなる必要がなかったとも考えられる。

A:問題設定が明確でよいと思います。ただ、「これだけの理由ではないが」と書かれているように、葉の薄い背景には、二酸化炭素の吸収の問題が生じます。これは、講義で詳しく解説したわけですから、二酸化炭素をどのように厚い葉で吸収しているのかという説明が必要だと思います。


Q:ホテイアオイなどの浮遊性植物について興味を持った。浮遊性植物が他の植物と大きく異なる点は植物体全体が移動可能だということだろう。移動できることのメリットといえば、繁殖のしやすさが考えられる。大雨で流されることなどにより生育範囲を拡大できる。一方、浮遊性植物のデメリットはなんだろうか。一つ挙げるとすれば養分の吸収がある。一般的な植物は土中の養分を吸収するが、根が水中に漂っている浮遊性植物は養分をどのように取り入れているのか疑問に思った。仮に根以外の場所から取り入れているのならば、根は何のためにあるのだろうか。調べてみると、ホテイアオイの場合は「水中の窒素やリンを吸収する」(文献1)とあり、また、ホテイアオイは葉柄が浮き袋状になり(文献2)根以外の部分がほぼすべて水面上に出ていることから、恐らく根で養分を取り入れていると考えられる。このことは、植物が生育するのに十分な量の窒素やリンが水中にも存在するということを示しているかもしれない。初めは養分の吸収が欠点だと考えていたが、これはどうやら間違いのようである。他のデメリットについても考えてみたが、思いつかなかったため、浮遊性植物の根の役割についてもう少し掘り下げることにした。一つは既に挙げた養分の吸収がある。また、(文献3)には「水面に出ている部分が上に伸びるものは、その分根も深く垂れ下がり、バランスを崩して倒れないように調整しているようです。」と記載されており、ここからは根はバランスを保つ役割をしているように解釈できる。しかし、別の理由もあると考えた。(文献2)によれば浮遊性植物の中には、①全体または少なくとも葉身が空中にある抽水葉をもつもの、②水面に浮き、葉の上面が空気に、下面が水に接する浮葉をもつもの、③全体が水中にある沈水葉をもつものがあり、沈水葉をもつものはほとんど根がないような記載がされている。この点から根の役割について考察すると、浮遊性で抽水葉をつけるホテイアオイなどは水を吸収するために根を利用しているといえる。以前自宅にホテイアオイがあり、触ったときに葉がつるつるしていて厚みもかなりあったことからも、葉の表面から水を取り入れているとは考えにくい。つまり、浮遊性植物の根は水分や養分を吸収するという役割をもち、仮にバランスを保つ働きもしているのだとすれば、土に根をはり、植物体のバランスを取りながら、水分や養分を吸収する陸上植物の根と機能に大きな差はないという考え方もできるだろう。
文献1: ホテイアオイ国立環境研究所 侵入生物DB、https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80810.html
文献2: 5-2. さまざまな生育様式 国立大学法人 福岡教育大学、https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/5-2.html 2018/5/12閲覧
文献3:ガーデニング園芸情報サイト ビオトープに適した植物、https://www.gardening-engei.org/ninki/ビオトープに適した植物/ 2018/5/12閲覧

A:全体としてきちんと書けていてよいと思います。一つだけコメントするとすれば「植物が生育するのに十分な量の窒素やリンが水中にも存在するということを示している」という書きっぷりには、「水中」という環境を単一のものとして捉えているように感じられます。ここは、むしろ多様な環境を考えて、その中で窒素やリンの濃度が高い場所ではホテイアオイが優占するが、低い場所では、例えば抽水植物が優占する、といった生物多様性に絡めた議論が必要であるように思いました。


Q:講義内でサトイモやハスの葉は水をはじくという話が挙げられた。しかし葉の上に転がった水玉は光を屈折させ光合成効率を低下させる。このように水をはじく葉にはどのような利点があるのか。サトイモとハス以外にも水をはじく葉をもつものはあるだろうが、今回はこの二種を代表として考察をしたい。サトイモの原産は東南アジアで、湿潤な環境で生育する。ハスは池や沼の水面に葉を広げ生育する。この二種の共通点は、いずれも葉が水にぬれる機会の多い環境に生育しているということだ。このような環境で親水性の高い葉をもっていると葉に小さな水滴がたくさん張り付いた状態となってしまう。水滴をわざとはじいて葉の上を転がしてまとめ大きな球体に近い形状にすることで、葉上全体としては水滴の存在する面積が少なくなり、水滴部分以外の多くの場所で均一な光環境を作り出すことができると考えられる。また、これらの葉は扇状で中心に向かってくぼんだ形状をしているため、はじかれた水滴は中心部に集まる。中心部は葉柄が近く構造を支える組織が多いため葉緑体が少ない特徴があり、レンズ効果によるダメージも少なくすることができる。さらに湿潤環境や湖沼の水面という葉の汚れやすい環境でも、葉の上で水の流れを作ることで汚れも水滴とともにまとめて光合成への影響を最小限に収める役割があると考えられる。このように環境に応じた適性の一環として葉の表面構造の多様性が存在すると考察できた。
参考:“さといも”.独立行政法人 農畜産業振興機構.(参照 2018.5.10).http://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0412/yasai1.html

A:よく考えていますし、しっかり書けていてよいと思います。しいて言うとすると、全体としてみたときに、やや焦点が絞られていない印象を受けました。700文字以上の力作ですが、この講義で要求しているのは数百字のレポートなので、テーマを絞って、コンパクトに書いてもらっても構いません。あと「水面に葉を広げ」という表現は、もしかしたらハスとスイレンをごっちゃにしていないか、少し心配になりました。


Q:蓮の葉について考察する。蓮の葉は葉に当たる光に濃淡があると、全体として光合成量が減ってしまうため積極的に水をはじくと授業で教わったが、この説明は納得できなかった。蓮が生息するのは池や湖などであって、上方に光を遮るような大型の植物がいるような環境であるとは考えにくい。上方に遮るものがなく、蓮同士も水面に広がっていて、光を思いっきり享受できる状態にある蓮が、光に濃淡があると全体として光合量が減ってしまうからと言って葉を撥水性に変化させるとは思えない。蓮の葉を一般的な葉と比較して考察する。蓮の葉と一般的な葉の違いは、気孔の位置と葉の生育環境である。一般的な葉は気孔は裏側に集中しているが、蓮の場合は表にしかない。つまり、雨が降って表側が濡れても通常の葉は呼吸できるが、蓮の葉は表面の水滴を落とさないと呼吸に影響をきたす考えられる。そして、蓮の葉は水辺に生育しているため、普通の葉よりも葉に水が乗りやすいと考えられる。水が乗りやすいうえに、通常の葉であれば風が吹けば水滴は落とされそうなものの、蓮はさらに水しぶきを受けそうである。このため、蓮は水を落とすように葉を進化させなければいけなかったと考えられる。このように、蓮が葉の撥水性を進化させた要因としては光合成より、呼吸の方が重要であると思う。

A:これも、もしかしたらハスとスイレンをごっちゃにしていますかね。ハスの葉は、水面に浮かんでいるのではなく、空中に支えられています。水面に葉を広げるのはスイレンです。ただ、レポートをスイレンに関してのものだと読めば、きちんと考えられていてよいと思います。


Q:今回の講義の冒頭で、ヒイラギは葉の形を変えるということを学んだ。ヒイラギが若く小さい時の葉はギザギザな棘があるが、年を取り大きくなるとギザギザがなくなり丸い形になる。これは、ヒイラギの枝が小さく低い位置に葉がある時はシカやヤギなどの動物に食べられないようにするために棘がある形になり、大きくなり高い位置に葉があれば外敵に食べられる心配が少なくなるので丸い形になると思われる。また、棘がある形より丸い形の方が葉の表面積は増えるので、高い位置の時は丸い形であるのは太陽に近づくためより光合成できるようにするためだと考えた。この前テレビで、アカシアの葉は動物に食べられるとタンニンの量を増やし、さらにエチレンガスを放出して他のアカシアにも危険を知らせるということがやっていた。その実験をするために、アカシアの葉を人間の手で摘みわざと食べられた状態を作り出していた。 それを見て思ったのが、大きくなったヒイラギの葉を人為的に摘みそれによって葉の形が変わるかを調べたらどうかと考えた。もし、外敵に食べられることを防ぐために棘のある葉であるのならば、大きくなったヒイラギでも外敵がいる場合棘のある葉のままで丸い形に変化しなくなるのではないかと考える。または、一度丸い形に変化してももう一度棘のある形に戻ることも考えられる。このことによって、ヒイラギの葉が変わるのは外敵から守るためなのか光合成効率をあげるためなのか、はたまた人間のように老化現象なのかが調べられると考える。
参考文献 樹も、年をとると丸くなる、http://www.jugemusha.com/dan-toge.htm 2018/5/12閲覧

A:これは、面白い実験を思いつきましたね。独自性があって、非常に良いと思います。