植物生理学I 第2回講義

葉にみる生物の共通性と多様性

第2回の講義では、植物の葉の形態の共通性と多様性を考えることにより、それらが何に由来し、何を意味しているのか、という点を中心に講義を進めました。


Q:葉の形は植物種によって様々であるが、ほとんどの種の植物において葉は扁平であり、その扁平な形状は表面積を最大にし、光合成効率の上昇に貢献していると言える。ではなぜマツの葉のように扁平な構造でない葉が存在するのかを考えていこうと思う。扁平な構造というのは、先に示した通りに表面積が大きい。つまりマツの葉は、一般的な扁平な葉に比べると表面積は小さい。このことが何らかの、光合成効率上昇で受ける恩恵よりも大きな、メリットをもたらしていると考えられる。そこで、植物における葉の役割について考えてみることにした。先ほどから何度も述べている通り、葉の最も重要な役割は光合成であるのだが、それに伴い気孔ではガス交換が行われている。呼吸の際も同様である。このとき、気孔では水蒸気も同時に葉から出ていく。蒸散というこの現象は気孔が開く際に起こっており、葉の表面積が大きいとどうしても蒸散量が増えてしまう。マツはあえて表面積を減らすことで自らを乾燥に強くし、ほかの植物が生育できない環境下で生き抜けるようにすることで生存競争を勝ち抜こうと進化した、と考えられる。

A:レポートとして、一応、必要なポイントを押さえています。ただ、もし、光合成と蒸散が、どちらも表面積に比例するのであれば、針の形にする代わりに、普通の扁平な形の葉をつけて、その代わり葉の枚数を減らした方が、コストが削減できるように思いますが。そのあたり、もう少し考察が必要ですね。あと、針葉樹の葉の話は、他のレポートにもありました。


Q:今日の講義では、植物の葉の形態について学んだ。植物の葉の表面はクチクラ層で覆われており、水分子も二酸化炭素も通さない構造になっており、乾燥を防いでいる。しかし、光合成を行うのに二酸化炭素は必要で、これは葉の背軸側に局在している気孔によって二酸化炭素が取り込まれている。長い進化の歴史の中で、高等植物はこの気孔を自由に開閉できる能力を得て水の無駄な損失を防いだとされている。しかし、気孔が開いている間は水が失われてしまうことから、この機構は完壁ではないと考えられる。二酸化炭素分離膜と言われる、二酸化炭素のみを通す高分子の膜というものがあり、現在、地球温暖化の対策として応用できるのではないかと研究が進められている。長い進化の歴史の中で、高等植物が気孔を自由に開閉できる機構を獲得したように、これから長い年月をかけて、選択的に決まった分子や気体のみを透過させるような膜構造を獲得する植物が現れるかもしれないと思った。

A:これは、一般的な文章としては悪くないのですが、基本的に事実の提示と、それに対する感想で終わっています。僕の講義のレポートとしては、論理的な構成が求められます。もう少しロジックを通したレポートを書くようにしてください。


Q:今回の授業では葉の形状について学び、二次元的な形状と厚さの2種類に分けられると分かった。ここで私は葉の厚さについて、季節によって光や温度の条件が変わるならば植物の葉の厚さについても季節間での変化があるのかについて疑問に思った。光合成は、光が強く気温も高い環境にある葉ほど活発に行うために、葉の厚みも増すと考えた。そのため、光が強く暖かい夏の間の葉は春や秋、常緑樹の場合は冬の葉よりも厚い葉を持つのではないかと考えた。ただし、葉の厚さは実際には光や温度条件だけでは決定せず、その他の条件にも左右されると考えられる。葉が厚くなると、強い風雨にさらされた時に強度が増すために植物にとって有利だと考えられる。また、葉の役割として、光合成の他に水やガス交換が有り、葉の体積に対する表面積との関係から葉の厚さは湿度も関係すると考えられる。これらの条件に付いて、季節間での光、温度、湿度条件や、雨や風などの天候条件について調べ、季節ごとの葉の厚さを調べることで、これらの要素と実際の葉の厚さとの関係が分かると考えた。

A:問題設定が明確でよいと思います。ただし、最後の実験系は、単に調べればわかるだろうと言っているだけなので、あまり必要性が感じられません。それよりも、途中で出てきた常緑樹についてならば、普通の草に比べて葉が厚いか薄いかを見たことがあるのではないでしょうか。この手の素朴な疑問の場合は、実験を考えるよりは、日常の観察を通して論理を組み立てた方がよいと思います。


Q:今回の講義では、植物の葉の形や、配置が環境に適応することで変化することについて学んだ。この中で私は環境に適応して獲得、変化した要素の一つであるクチクラ層に興味を持った。講義では、クチクラ層は葉からの水分の蒸発を抑えるとのことだった。しかし、クチクラ層の厚みには葉の表側の方が裏側よりも厚みがある。もし、裏側の厚みで水分の蒸発を十分抑えることができるのであれば、表側を厚くすることは蒸発防止という面ではコストの無駄であり、逆に表側ほどの厚みが蒸発防止に必要なのであれば、裏側にも同程度のクチクラ層が必要なのではないかと疑問に思った。これには、「表側は直射日光が当たる事で、細胞へのダメージや水分の蒸発が大きくなるため」、「表側の方が外的な衝撃を受ける確率が高いため」、「クチクラ層が厚くなると気孔の長さも長くなり、ゴミなどが詰まりやすくなり光合成に支障が出るため」などが仮説として挙げられる。この仮説を検証する方法として、「葉の表に日光(または紫外線や赤外線)が当たる個体と葉の裏に日光が当たる個体を用意して、しばらく生育させたのち、葉の細胞の様子や全体の生育状況を確かめる。」、「葉を完全に潰さない程度の重量及び高さで鉄球を葉の表側と裏側に落とした個体を用意してその後の生育状況を観察する。」、「植物の葉の汚れで詰まっている気孔の数を計測し、表と裏で汚れで詰まっている気孔の割合を調べる。」などが考えられる。

A:面白い点に着目していてよいと思います。ただ、これも、仮説に対する実験系は、単に試してみる、と言っているだけなので、必要性が感じられませんね。この程度だったら、思考実験によって(強引でも)一つに答えを絞る方が良いかもしれません。


Q:今回の講義を受けて僕が1番関心を持ったことは、植物の葉がエネルギーを得るためにいかに水分を効率的に保持し循環させているかということです。授業の中で葉は光を効率よく集めるために薄い構造をとるという話がありましたが、僕は葉の厚さは水分の保持にも関係しているののではないかと思いました。植物の成長には水分が不可欠ですが、もし水分が不足していた場合、クチクラに覆われた葉が厚い構造をとっていれば少ない水分量でも十分葉全体に水が保持できるのではと考えました。それを証明するために自分は熱帯地方のような乾燥地帯の葉は厚いのかどうか調べました。2011年の九州大学の葉の厚さと丈夫さの関係性についての研究によると、気温が高い乾燥地方で育つ植物の葉は日本で見られる植物と比べて分厚い構造であることが立証されたそうです。さらにそれらの葉は繊維的に複雑な構造をしており、葉が厚い方が機能面でもより高度になっていることがわかりました。したがって、葉の厚さは植物の水分の保持にも一役買っていることがわかりました。

A:このような場合、その九州大学の研究の情報をどこで得たのか、必ず出典を書くようにしてください。あと、熱帯地方=乾燥地帯、という認識は間違いですよ。その意味では、九州大学の研究における「気温が高い乾燥地方」がどのような地方なのかも重要です。そして、そのあたりを検証するためにも、出典は必要なのです。


Q:今回の授業では葉の形状について取り扱いました。そこで、明らかに光合成に適していない葉の形状(棘)をしたサボテンについて考察していこうと思います。サボテンの葉、すなわち棘があのような形状をしている理由ですが防護のためだと考えました。砂漠という過酷な環境下においてサボテンは球状になることで内部に水分を溜め込み、表面積を少なくすることで水分の放出を防いでいます。水分を蓄えたサボテンは砂漠に生きる動物からすれば格好の水分源です。それゆえ、本来の葉の役目である光合成などを捨ててまで棘を作り出し、防護することで生存することができていると考えることができます。また、サボテンはCAM植物であり独特の光合成炭素代謝経路を持っていて葉に頼らずとも光合成を行うことができることから、葉を防護専門の棘とすることができたのではないかと考えます。

A:考察として悪いわけではありませんが、やはり誰でも考えそうな話ですし、今回のレポートの中には他にも同じテーマのものがありました。サイエンスにはオリジナリティーが必要です。なるべく、人が考えないようなテーマを選ぶようにしてください。なお、CAM植物であることと、「葉に頼らず」という点は、直接的には関係ありません。


Q:今回の授業では、植物の葉がエネルギー密度の低い太陽光を集めるために平たい構造をとっていることを学んだ。では、過剰の光エネルギーが供給されたときに生じる光阻害という機構を植物はなぜ持っているのだろうか。葉の光合成能力を最大にするために、植物が葉を平たくし、葉が重ならないように葉の位置を調節するなどの工夫をしているのであれば、強光下においても同様に光合成能力を最大にするような機構を持つべきであるように思う。しかし、植物の起源であるラン藻類を考えると、海洋中で生活する中で、水ストレスにより気孔が閉じCO2が十分に供給できないとき、弱光下においても葉に供給される光がCO2固定に利用できる量を上回っていたと考えられる。つまり、植物は水中で生活する中で、光阻害の機構を、光合成能力を抑えるために持ったのではなく、水ストレスに対抗するために持ったと考えられる。よって、その後陸上に進出した光阻害機構を持つ植物は、弱光下においても光合成能力を最大にするために、葉の形や厚みを変化させ、逆に光阻害機構を抑制する様々な機構を獲得してきたと考えられる。
参考文献:日本光合成学会編「光合成事典(Web版) 光阻害の抑制」4月20日参照

A:途中でロジックがおかしくなってしまっていますね。そもそも藻類には気孔がありません。海洋中での水ストレスというのも、何を意味するのかが不明です。もし、参考文献が理解できないのであれば、それに頼って論理を展開するよりは、自分の理解できる範囲で、自分なりの論理を展開する方がよいでしょう。


Q:今回の授業では、構造の決定についての話が扱われていた。構造はその物体を作る上での原因的によって決定される場合とその構造を利用する目的によって規定されることによって決定される場合がある。植物、特にその中でも光合成器官である葉の構造とそのつき方では植物が細胞体を自在に組み上げながら構造を作る性質上、よりその目的である光合成の効率化という目的での構造の決定が重要視されたものと考えられる。植物体ではできるだけ葉に多くの太陽光を、すべての葉に均一にあてる必要がある。そのために上部の葉が下部の葉への光を遮らない構造を作るといえる。上部に葉を作らず地面に這う植物ではそのため植物体の伸長方向に対して葉を水平にのばしシュートの長さは葉身の横幅同等になるのが効率的であると考えられる。地面に対して垂直に伸びる植物体では先端部分から葉を作ることで植物が伸長した際には先にできていた葉が大きくなり新しくできた葉の葉身部分すなわち光を遮る部分と同等程度に葉柄が伸びており下部の葉の葉身にも十分に光が当たる構造になる。これらは植物体の伸長方向が決定されたのちより効率的な光の吸収を行えるものが自然選択されたものであると考えられる。

A:意図はわかるのですが、ここで議論されていることは、植物であるかどうかにはよりませんよね。単に、ある物体を、なるべく光が当たるように配置するという問題にすぎません。それを生物学のレポートにするためには、最後に実際の植物に立ち戻って、例えば、縦に伸びるつる植物と、横に這うつる植物で、予想したような形態になっているだろうか、といった考察を最後に入れられるとよいのではないかと思います。


Q:植物の葉のクチクラ層に注目してみようと思う。クチクラは乾燥ストレスから身を守り、雨水などの侵入を防ぐために存在している。それでは植物の葉の表面からは養分などは取れないのだろうかという疑問がうまれた。しかしながら、農場などで、肥料などの薬剤をスプレーのように葉に散布している光景のイメージが浮かぶ。このことについて調べてみたところ、クチクラは雨水などによりジョジョに劣化していき、はがれていくことがあるようだ。(参考:https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/1-4.html)また、このようなクチクラの劣化による裂け目やひびなどからは親水性の物質が水に溶けて取り込まれ、疎水性の物質はワックス―クチクラ層を直接通過して取り込まれることがわかった。(参考:「これでナットク!植物の謎Part2」日本植物生理学会編)肥料などは界面活性剤などをまぜ、クチクラ層にとりこまれるように疎水性にしてから散布しているようだ。

A:これも悪くはないのですが、全体の流れが、疑問に思って調べたら理由がわかった、という構造になっているので、著者の論理が感じられません。この講義のレポートでは、単に調べものレポートに終わらず、自分なりの論理を展開するように努力してください。


Q:主に砂漠などに生えている多肉植物の葉の表面について考える。多肉植物は葉を厚くしてその中に水分を貯蔵することで乾燥から身を守っている。しかしよく見ると単に厚いだけではない植物が多い。普通の植物のように葉の表面が平らではなく、ゴツゴツとした突起が並んでいることが多い。なぜこのような形をするのか主に二つの仮説が考えられる。一つは、細胞あたりの葉の表面積が圧倒的に小さく光を集めづらいため、なるべく葉を厚くしつつ表面積を広げるためにこのようなゴツゴツした形に進化してきたという仮説。もう一つは頻繁に発生する砂嵐などの物理的ダメージを受けにくくする構造に進化してきたという仮説。授業で太陽エネルギーの密度が葉の面積に関係性について触れていたが、砂漠は雨が少なく日光が強いため、エネルギー密度は高く、そこまで表面積を広げる必要はないのでは?と考えると厳しい環境で生存するためには後者のほうが有力なのではないかと私は考える.

A:仮説を立てて、根拠を考えて議論しているという点で、よいと思います。ただ、「ごつごつした形」だとなぜ「物理的ダメージを受けにくい」のかがわかりませんでした。イメージとしてはそんな気もしますが、科学的レポートではイメージだけでなく何らかの説明が欲しいところです。


Q:今回の授業では、葉に共通する平たい形についてHowクエスチョン(どのようなメカニズムでその形になったのか)とWhyクエスチョン(どのような目的でその形になったのか)という二つの異なる考え方を扱った。しかし、これらのうちWhyクエスチョンすなわち葉がどのような目的でその形になったのかという考え方にはやや疑問が残る。本来生物の進化というものは方向性が決まっているわけではないというのが現在の生物学の主流の考え方である。ランダムに発生する突然変異のうち、たまたま環境に適応している形質のみが生き残り、結果としてある方向性をもって進化したかのように見えるわけである。したがって、ここでのWhyクエスチョンに対する答えは葉の形が変化した目的というよりはむしろ原因、すなわち広義のメカニズムとしてとらえることができるのではないだろうか。このクエスチョンに対しては、次のように答えることができるだろう。「葉の形質は突然変異によってさまざまに変化する。それらの中で、各々の環境に適応した形質すなわち光合成に有利となる形質が生き残り、繁栄した結果、現代の葉は共通して平たい形となった。」

A:前半はよいと思うのですが、後半の「したがって」以降で何を言いたいのかがよくわかりませんでした。結局最後のカギかっこの部分も、「光合成に有利となる」となっているので、単にそれを「目的」と呼ぶのか、それとも「広義のメカニズム」と呼ぶのか、という名称だけの問題であるように感じます。


Q:先日私が所属するサークルの活動で植物園を訪れた際に森林エリアで上を見上げると、光を透過して黄緑色に見えている葉を持つ木と、光をほとんど透過せず濃い緑に見えている葉を持つ木が存在することに気づいた。そこで今回私は葉の形状のうち薄さ(光の透過度)について考察することとする。まず、光を透過しやすい葉というのは葉緑体をもつ細胞の密度が低いと考えた。そうなると、光のあまり当たらないところで生育する陰樹は、光の多く当たる場所で成育する陽樹に比べて光飽和点が小さく必要な葉緑体数も少なくなり薄い葉をもつと考えられる。しかし、陽樹や陰樹を調べてみるとハンノキのように陽樹にも関わらず光を通しやすい葉をもつものも存在し、この仮説に当てはまらないものも多かった。また図鑑を見ていると、比較的冷涼な温帯に分布しクチクラの発達していない夏緑樹林には光を透過しやすい葉が、比較的温暖な温帯に分布しクチクラの発達した照葉樹林には光を透過し辛い葉が多いことに気が付いた。それらの事実から、葉の光の透過しやすさは光合成の観点から考えた葉緑体密度よりも、水分蒸発を防ぐためのクチクラ層の発達の有無によるところが大きいと考えた。

A:非常に面白い点に着目していてよいと思います。ただ、相関関係と因果関係は別物です。クチクラ層の発達と葉の光透過性の間に相関関係がみられるとしても、そこに因果関係があるというためには、もう一つステップが必要でしょう。もしくは、クチクラが光を吸収すると考えられる理由を考えて、それを根拠にするという方向性もあるかもしれません。


Q:授業では肋が葉の裏側に突き出ている理由(目的)として物理的な補強材としての役割が挙げられていたが、ほかの理由(目的)も考えられる。
 1つ目に、葉脈をつくるコストの観点からみると葉身の中に筒状の穴をあけた場合、少なからず柵状組織の一部を削ることになる。柵状組織が隙間なく並んでいるのは、光が最もよく当たる葉の表側できるだけ多く光合成をおこなうためであると考えられるため柵状組織を減らすことは光合成の効率を下げることになる。これを避けるために葉脈の位置が葉の裏側へと次第に移動していき、ついには葉から飛び出すようなものが現れたのではないだろうか。また、安易な考えではあるが葉という「土地」に葉脈という「パイプ」を走らせようとしたときに地下(葉の中部)を通すよりも地上(葉の外部)を通すほうがはるかに簡単なはずだ。
 2つ目に重力が関係していると私は考える。葉で作られた糖などの養分は液体に溶けて全身へ運搬されるはずだが、液体を運ぶ場合、重力を利用して川のように低いところに集めるのがコストのかからない方法だろう。葉の内部に葉脈がある場合、葉脈よりも鉛直方向において低い位置で作られた養分を師管に運ぶためには浸透圧などの圧力的なものを利用する必要がある。また、一般的に葉脈の中で道管が葉の表側、師管が葉の裏側にあることもこの発想の根拠であり、重力が関係していると考えられる。道管は根から吸い上げた水を葉の組織に届けるのが役目であるから、少しでも高い位置にあったほうがエネルギーを節約できる。一方、葉で作られた養分は重力に従って低い位置に移動するため、師管は葉の裏側でも問題ないのだろう。ただし、ここで考えられる反論として、光合成を活発に行う柵状組織に近いところに葉脈を通したほうが水や養分の運搬の面で効率的だというものが挙げられる。葉の裏側に突き出た葉脈の場合、柵状組織まで水を運ぶのが課題になるかもしれないが、この点を議論するには、もう少し水や養分の運搬機構について調べる必要があるだろう。
 最後に、肋ができたメカニズムの観点から考えるならば、葉柄の一部が変形したものとみることもできるだろう。葉柄は葉に効率的に光があたるようにし、葉を支持するものであり、肋を葉の物理的補強材と考えれば葉柄の変形物ととらえても不思議ではない。つまり、葉脈自体が補強材なのではなく、葉柄が一体化して補強しているのではないだろうか。

A:よく考えていて素晴らしいと思います。せっかくここまで考えたのであれば、考えた理由の中で、どの理由が主な要因となっているのか、といった相互の関係についても、最後に少し触れてあるとよいと思います。


Q:飽和食塩水と湿度80%の空気を比較すると細胞にとってより過酷なのは空気中であるという話から、なぜ太古の時代に植物が海中から陸上進出したのかについて考察したい。植物にとって重要な条件に水分があるが、この面からのみでは植物が陸上に進出したのか説明できない。そこで海中と空気中での植物にとっての環境条件を比較する。今回は水分以外に植物にとって主要と考えられる条件である光、植物体を固定するための地盤、重力、二酸化炭素濃度について比較する。光については深層海中では光が届かないが、地球の大部分は海であり海面だけでも莫大な量の光をうけることができると考えられ、地上と海中は条件によるがほとんど遜色ないと考えられる。地盤については圧倒的に陸上のほうが強固で植物体を一か所に固定する役割が大きい。一方海中では表層の光を受けることと地盤で固定することの両立はごく一部の領域以外不可能である。重力条件については陸上では海中のように浮力が働かないため光を効率的に受けるためには強固な構造を作る必要があり、海中のほうが有利である。二酸化炭素濃度条件については海中の二酸化炭素濃度は空気中に比べて低いため空気中でより有利である。原始地球では現在よりもさらに空気中で二酸化炭素濃度が高かったためこの違いは顕著であったであろう。以上のように今回考えた4条件からは、植物は、地盤に固定されて一定密度で同種を繁栄させることで確実性の高い交配を可能にし、高い二酸化炭素濃度条件下で植物体を支える強固な構造のコストを賄い陸上に進出したと考えられる。

A:要因を一つずつ論理的に検討していてよいと思います。ただし、一点だけ、「海中の二酸化炭素濃度は空気中に比べて低い」というのが、何の根拠もなく示されているのが気になりました。実際には、比較の条件にもよりますが、海水中の無機炭素の濃度は必ずしも低くありません。


Q:「葉はなぜ葉のような形をしているのか」この問いに対して授業では二次元的要素と三次元的要素、つまり広さと薄さに分けて説明した。しかし、二次元的要素のなぜこの形であるのかについてまでは至らなかったので、そこを考えてみようと思う。葉の形は非常に多様だがその中にもある程度の共通性を見て取ることができる。今回は最も一般的な楕円形の葉について考察する。横長ではなく、縦長であるのはその方が葉の重なりが少ないためと考えられる。葉の最大の目的は光の獲得であるため、葉の重なりが多いことは非効率的だからだ。縦長の方が葉の重なりが少ないことを実際に確認するには、茎に見立てた棒を2本用意し、菱形の葉をそれぞれ同じ位置に縦につけた場合と横につけた場合をつくり、重なった部分の面積を比較し、総面積がより小さい方が光の獲得に向いていると言える。さらに横長では主脈が短くなり、葉を支えにくいという問題も考えられる。以上から横長の図形より縦長の図形の方が良いと考えられる。しかしこれは必要条件を満たしたに過ぎない。楕円形である理由として、メカニズムによる制約を受けていると考えられる。葉を作る細胞分裂が、根元を中心として開始され先端ほど少数の細胞のみで作られているので細く、徐々に細胞分裂が活発になり広くなっていく。それがまた根元に向けて細くなっていくのは、これは、葉を作るという作業も、いつかは止めないといけないからである。また、先端をとがらせることで水を滴り落ちやすくしているとも考えられる。この条件だと徐々に太くなりまた細くなる菱形のような図形でもいいように思えるが、植物の葉は滑らかな曲線を描いている。これは直線図形より、曲線図形の方が雨や風を受け流しやすいためだと考える。実際に長方形の紙と葉形の紙を用意し同条件(風速、素材、紙の角度)で比較実験を行う必要がある。

A:これも、ステップを一つずつ論理的に考察を進めていて、非常に良いと思います。実際には、単子葉の葉と双子葉の葉では、葉の作られ方が違いますから、そのあたりも考慮に入れる必要がありそうです。