植物生理学I 第8回講義

植物の根と栄養塩の吸収

第8回の講義では、植物の根の形態と機能について、水や栄養塩の吸収という側面と、植物体の支持という側面から解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今回の授業で大根の根の青い部分、白い部分について言及があり、青い部分はもともと胚軸であり、厳密には根ではないことから、葉緑体が存在し緑になっていると学んだ。自分の中で根菜として一番に思い浮かんだのはニンジンであったが、ニンジンは地中にある根であるにも関わらず、白色ではなくオレンジである。この理由が気になったので考察してみようと思う。子供の時に読んだ絵本に「にんじんさんがあかいわけ」という本がある。この絵本によると、ニンジンはお風呂に入った時に、熱かったが我慢して入り続け、ダイコンは熱い風呂を避け、ぬるい水に浸かったため、ニンジンは赤く、ダイコンは白くなったという。大根を熱い湯に入れて長時間放置しても赤くなることはないため、この論理は否定される。冗談はさておき、実際にはカロテンには呼吸などで生じる活性酸素を消去する役割があり、それから組織を守っているという説が有効だと考えられている(1)。大根には他の何かでこの活性酸素を除去する機構が存在するため、カロテンを根に蓄積する必要がないと考えることもできる。しかし、ニンジンにはホワイトキャロットという真っ白なニンジンも存在する。こうなると、ニンジンの色は活性酸素除去のためだという話は、絵本のように論理的でないのではないか。これを調べるためには、細胞内の一重項酸素を検出し、蛍光を発する試薬であるSi-DMA (2)を用いて、オレンジのニンジンとホワイトキャロットの細胞内の一重項酸素の量に違いがないことを確認できれば良い。
・参考文献 1.日本植物生理学会ホームページ「みんなのひろば 植物Q&A カロテン」 (https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2344) 2017/06/11閲覧、2.同仁化学研究所ホームページ「Si-DMA for Mitochondrial Singlet Oxygen Imaging 」 (http://www.dojindo.co.jp/manual/mt05.pdf) 2017/06/11閲覧

A:最後の実験は、確かにそれによって一重項酸素の関与を否定できるかもしれませんが、そうなったとしても、ニンジンの赤い理由は解明できませんよね。違いそうな結果をきちんと否定するのも前進ではありますが、ニンジンの赤い理由を決めるような実験系は思いつかないでしょうか。難しい問題だとは思いますが。


Q:授業で熱帯雨林には気根を枝から垂れ下げるように伸ばしている植物の紹介があった。今回はこの植物がなぜ気根を垂れ下げているのかを考えていこうと思う。まず気根とは、主に空気中の酸素を吸うために地表に現れている根のことである。このような根はマングローブなどにみられ、土壌が水に浸かり酸素が少なくなってしまうため地表に現れている。しかし今回取り上げるのは枝から垂れ下がっている根である。そこで私は空気中の酸素を吸うためではないと仮定して考えていくことにした。酸素を吸う以外の役割として、空気中の水分を吸収するのではないかと考えた。だが、熱帯雨林は雨も多く多湿な環境であるため、わざわざ気根から水分を吸収する必要はないように思われる。しかし高温多湿な熱帯雨林の土壌中では、微生物が活発に働き土壌有機物が分解され少なくなっている。そのためその中でも落ち葉や枯枝によって有機物の多く含まれる地表付近に根を張っている。地表付近は深いところと比べて水分量は少なくなっているため雨が多いとはいえ充分な水分を補給できないのではないかと考えた。そこで気根を枝からたくさんたらすことによって多湿である熱帯雨林の環境を生かして、空気中から水分を吸収しているのではないかと結論づけた。
参考文献 熱帯樹木の根の形態とその生態学的意義 山田俊弘、http://root.jsrr.jp/archive/pdf/Vol.14/Vol.14_No.3_091.pdf

A:空気中の水分を吸収するために熱帯雨林の樹木は気根を伸ばすという前提の上でその理由を考察しているレポートとしては、論理的でよいと思います。ただ、最初の、「空気中の水分を吸収するのではないかと考えた」という部分自体は、やや唐突な展開かな、と思いました。


Q:マングローブで見られる支柱根や、地中から突き出る気根、深くない土でも安定させるための板根は全て共通して根が地面から出ていて直接空気と触れている。このような根を持つ植物は空気と直接触れているため根呼吸速度が本来の植物と比べて大きくなると考えられる。地面の中に存在する根と突き出ている根でどれだけ呼吸速度が異なるかを調べるための実験を考える。それぞれの根を取ってきて乾燥重量を測定し、時間あたりの二酸化炭素濃度の変化を測定し検量線を書く。それらの情報から各根呼吸速度が求められる。支柱根はマングローブに存在するので土壌の含水率は高い。よって土壌粒子間を酸素が移動しにくいと考えられるので、地面の中の根の呼吸速度は小さくなって、突き出た根との差が気根や板根に比べて大きくなると考えられる。支柱根自身は呼吸、地面の中の根は水の吸収にウェイトを置くことで同じ根という器官で重視する点を変えている。マングローブという土壌水分が豊富な場所だからそのようなことが可能なのかもしれない。

A:最初の部分から実験を考える部分までは論理が読み取れますが、実験を考えた後、「支柱根は・・・」以下の文の目的がわかりませんでした。全体としてロジックが最後まで完結するようにしたいところですね。


Q:マングローブが生育する環境は土壌が柔らかいため支柱根や板根が体を支える役割を果たし、また水中では根が呼吸するのが困難になるため膝根や気根が空気中に突き出て呼吸をする役割を果たしているということを学んだ。支柱根と聞いて私はトウモロコシを思い浮かべた。小学生の頃家庭菜園でトウモロコシを育てていて、台風が来た時に成長が早く大きいトウモロコシは倒れなかったが、小さなトウモロコシは倒れてしまった。これは今思うと支柱根の成長の違いによるものであったと考える。支柱根が十分に成長していた大きいトウモロコシは強風に耐えることができたのである。トウモロコシは2m近く成長し重く大きい実を付けるため支柱根が存在しているのではないだろうか。しかしながらトウモロコシの支柱根は緑色をしていた。これは今回の講義内容の、根には光が当たっても葉緑体ができないような制御機能が働いているということを踏まえると、トウモロコシの支柱根は根ではないのだろうか。これについて支柱根の断面を観察すれば茎か根かは判断できる。もし根であったとしたら、葉緑体ができないように制御する分子をさらに制御する分子が働いていると考えられる。3~5か月で一気に2m近くまで成長し実を付けるために、わずかでも多く光合成を行う必要があるため光が当たる支柱根にも葉緑体が生成されるように制御しているのではないか。

A:これは、自分の観察に基づいていて面白いと思うのですが、最初に強調されている成長の差の部分が、結局何も議論されずに緑色であった話に移行するので、ややもったいない気がします。


Q:授業では、ガジュマルは気根を伸ばすが、伸ばす位置から酸素を得るためだとは考え辛いと聞いた。以前小笠原諸島の母島に行った際に、ガジュマルが別の木に乗り上げる形で生育している様子を見た。ガジュマルは、他の木の上で発芽した場合、その木を気根によって覆いつつ成長するため、別名「絞め殺しの木」と呼ばれているそうだ。ガジュマルの果実には発芽抑制物質が含まれているため、鳥によって食べられ消化されずに糞とともに落とされた種しか発芽しない(参考1)。上空から落ち、他の植物上で発芽することを前提としている生態と言える。地面に根付き、下方から他の植物と競合しつつ伸長するよりも、上方から成木に絡みつき、樹冠にて十分な陽光を浴びながら根を下方へと伸長させる方が、光合成においてもはるかに効率が良い。母島でガジュマルを観察した場所は海に面した山の腹であり、雲が湧き易く大気が湿っていて大気からの水分供給は十分にあると思われた。地面に到達するまで根を伸長させる過程では、水分吸収が必要になる。そのため、ガジュマルの気根は、空気中の水分吸収もおこなっていると推測する。成木となっても枝から沢山の気根を垂らすのは、周囲の植物を牽制する、あるいは気根による補強によって枝を長く横に展開する目的があるのではないだろうか。
参考1:「ガジュマルの実生に挑戦」http://www.h3.dion.ne.jp/~kuikui/gajum.htm

A:これは最初から論理が一貫していてよいと思います。一つ一つ論理の段階を追っている点がよいのでしょう。


Q:今回の講義で「ある種の植物は土壌を低酸素状態に置くと細胞の自死が起こり茎の中に空洞が出来ることで通気性を確保する」ということを扱った。しかし本当にこれが植物にとって最適解だったのだろうか。茎に空洞を作るということは周辺の細胞に変化がなかった場合すなわち茎の物理的な強度を低下させることにつながり強風などの外的衝撃のへの耐性が低くなると考えられる。例えば低酸素状態に置かれたら落葉したり細胞の活性を低下させるなど要求酸素量を減らすなど他の対処法もあるはずである。そこでなぜ茎に空洞を作るという方法に至ったか考えてみた。植物に限らず生物において一番大きな行動原理は子孫を残すことである。1つでも多く自分の遺伝子を残すことを第一に多くの生物は生きている。その観点から見ると上述の仮説として提唱した選択肢はあまりふさわしいものではないと考えられる。落葉した場合光合成量の低下し生存に必要なエネルギーの確保が難しくなり細胞の活性を低下させた場合はその分成長が遅くなり他個体の繁殖期と自分の繁殖期が一致しなくなる、といった理由が挙げられる。その点茎に空洞を作ってもあくまで物質の運搬を行うのは導管、師管であり生存への影響はより少なくなると考えられる。

A:非常に面白い考えなのですが、外的衝撃への耐性が低下したら、子孫を残しにくくなりませんか。生物の世界では、すべての点で他の生物よりも勝るスーパー生物は存在しません。だからこそ生体の多様性が保たれているのです。では、衝撃への耐性と、エネルギーの確保のどちらがより子孫を残すのに重要か、と考えれば、風の強い環境では前者でしょうし、弱光環境では後者でしょう。それこそが、個体と環境の相互作用が生物の多様性を生み出しているという、講義の最初のテーマにつながるのです。


Q:今回の講義では、根は植物によってさまざまな形態をとっていて、代表的なものとしては、主根と側根、ひげ根があるということであった。ここで、植物は土壌から水分や栄養分を取り入れ成長していくため、より表面積が大きくとれるひげ根の方が植物にとって良いのではないかと感じた。確かにひげ根は水分吸収の効率は良いが、地上部のことを考えたときにデメリットがあることに気づいた。陽性植物の場合より光を多く受容するためにより高いところに葉をつけようとする。そのためには茎をより高く伸ばす必要があり、必然的に茎が太くなっていく。しかしその重さや風に抵抗するためにはひげ根では不十分であり、茎も太くしていく必要があった。またただ太くするだけでは不十分で、より地中深くに太い根を伸ばすことで抵抗力を強くしていった結果、主根ができたのではないかと考えた。ただ主根だけだと水分吸収効率が悪くなってしまうため、それを補うために主根から側根を伸ばすことで解決したのではないかと考えた。ここから、背の高い植物ほど主根と側根を持つものが比較的多いのではないかと考える。

A:これは、論旨が一貫していてよいと思います。特に最後の一文によって多様性の原因を指摘している点が高く評価できます。


Q:今回の講義では、主に根の役割や種類、水およびイオンの根での輸送について学んだ。植物と言えば葉での光合成をよく考えるが、その光合成を行ううえで根の役割はとても重要であると感じた。今回の講義中で面白いと感じたのは根の種類と特性についてであった。根には幾らかの種類があり、支柱根は柔らかい土壌に直立し生育するためであり、板根は未発達で土壌層の薄い場所に生育するためであり、気根は酸素濃度の低い高含水率の土壌中ではなく酸素濃度の高い空気中から酸素を得るための進化であると学んだ。これらは主に熱帯地方で見られるということであったため、日本でこのような特殊な根を持つものはいないのかと思い調べてみたところ銀杏が気根を形成するということが分かった。しかし、日本で生育している銀杏は比較的安定した土壌(神社など)に直立し、気根を持つ理由が分かっていないため、これについて考察を行う。まず、気根を持つ銀杏には樹齢数百年のものが多いことが分かった。そこで銀杏の成長について調べると、日本では「銀杏の木とは、『孫の代になってやっと実をつける』」(1)と言われているようで、孫の代であるからおよそ60年で実をつけるのであろう。つまり、実をつけるようになってから長い時間を経た後に気根が形成されるということになる。したがって、銀杏が気根を形成する1つの原因として、実をつけることで樹体に何らかの変化が生じ、気根が形成されると考えられる。これは主にDNAの転写や酵素に関係があると考えられるため、気根の形成されている根元の組織の転写されたRNAをオミクス的に解析し、通常のものと比較することで原因が特定できると考えられる。また、従来より気根を持つラクウショウの転写RNAと比較することも有益であると考えられるが、生物種が異なるため難しいと考えられる。そこで、この2つのオミクス解析を行うことで原因RNAおよび作用経路が特定できると考えられる。つまり、銀杏の持つ気根の根元のRNAと気根を持たないRNAを解析し、いくつかの原因RNAを特定し、さらにラクウショウなどのRNAと比較することで原因RNAやそれらの作用経路などを特定することが可能であると考えられる。そして作用経路の特定により、銀杏の形成する気根の特性を知ることにもつながるのではと考えられる。
(1) 銀杏大辞典, 意外と知らない銀杏の木, http://www.ginnan-guide.com/2016/02/16/post-36/, 2017年6月5日

A:これは着眼点も面白いですし、きちんと考えてもいるのですが、前半の問題設定までは何のために気根を作るのかというwhy質問について議論している一方で、後半の実験系は、どのように気根を作るのかというhow質問に対して回答しているように見えます。前半の流れを継続するのであれば、後半も、目的を明らかにするような実験を考えないといけないでしょう。


Q:今回の講義を受け、植物の根について調べてみた。そこで、イネについての論文を読んだ、文献①によると、イネは通常の植物とは異なり、新たに形成された不定根は他の不定根よりも太く形成されるという。植物は、根からももちろん酸素を吸収し、自身の生育に活用している。しかし、過湿環境下においては、酸素というものは拡散しにくく不足しがちになる。根自身は動くことができないため、このような環境下になると酸素が欠乏することになる。これを解消するためにイネは茎の部分から根の方へ酸素を送りと届けるが、植物は酸素供給を能動的に制御する機構を持たないという。そのため、太い不定根を形成するもしくは伸長角度を調整し地上付近に根を作る、もしくは通気組織の発達によってこれらの問題を解消する。しかし、今回の講義で習ったような気根等を使用しないのであろうか?イネは下部は水中に浸かる状態で育成されるため、酸素欠乏条件下に陥りやすいため、空気中から直接空気を得るほうが効率的であると考えられる。しかし、これを選択していない理由を考える。まず初めに考えられるのは、単純な過湿条件下ではなく、浸水条件下に近いということである。気根は過湿条件下のような環境では空気中から空気を吸い込み、生育に役立つが、浸水条件下では風などの環境条件化によって気根自体が腐る、もしくは管内に水分が流入し機能しなくなるということが考えられる。また、土壌の安定性も関係していると考えられる。浸水条件下での土壌は非常に柔らかく、安定性という点においては非常に弱い。緩い土壌にあまり幅広く根を拡大させると深さが足りなくなり、横倒しになる可能性がる。以上のような理由もあり、イネはこのような選択をしているものと考えられる。

A:これは、問題点をきちんと設定し、それについてロジカルの議論を展開していてよいと思います。さらにぜいたくを言えば、過湿条件と浸水条件を対比しているわけですから、それぞれの環境に生育する植物間での比較をできれば完璧ですが、それはこの講義のレポートの範疇を超えるでしょう。


Q:今回の授業ではいろいろな形態の根が紹介された。そのうちの一つである、板根に興味をもち、サキシマスオウノキの画像を眺めているとあることに気付いた。それは、板根には地面と水平なスジ模様がいくつも存在することだ。このスジ模様から板根の成長様式を考察してみる。通常の根のように成長するのであれば、板状ではなく、半円柱のような形をした根が地面から出るはずである。スジ模様と板のような形から、板根は地面の横に張った根の上断面が木部となるのを繰り返して薄い板のように根が成長すると考えらえる。スジ模様は木部が形成されたのち次の新たな木部との境界線と考えらえる。そうであるならば、切り株の年輪のように、板根のスジの数から、樹齢が分かるかもしれないとかんがえた。

A:これは面白いですね。僕自身は、この考え方が妥当なのかどうか知りませんが、自分の観察から論理的な思考によりある結論に達しているという意味で、この講義のレポートとしては高く評価できます。


Q:支柱根の形状に、真っすぐな形と曲がった形のものが写真で示されていた。この違いについて少し考えると、まず思いつくのは支柱として必要な機能の違いだろう。曲がった形状は茎の時の話に似ているが、しなるために横からの負荷に比較的強い。マングローブ林が水流の早い区域にあることを考えると、潮の満ち引きによる水流で根が抜けないようにしているのは容易に想像がつく。これだけ考えると支柱根が真っすぐである必要はないようにも考えられる。しかし、現に近隣の環境で真っすぐな支柱根の植物は存在している。これが何故なのかと考えると、真っすぐな支柱根は比較的水の少ない場所に生えているような印象を覚える(google画像検索で支柱根の画像を多数閲覧)。これは先に述べた水による負荷の方向が少ないことが違いの原因であることも考えられるが、もう一つ考られるのは根の付近ではなく木の中央から上部にかかる強い負荷に対する抵抗だ。これは曲がった根では強制的に支えることが出来ない負荷も真っすぐであれば留めることが出来るのではないか、ということである。動物や強風など様々な要因が考えられるが、どの原因にせよ木の上部にかかった負荷で根こそぎ倒れることを避ける目的なのではないだろうか。

A:これも、観察の結果を生かして論理を進めていてよいと思います。ただ、まっすぐな支柱根の方が不可に対する抵抗が強いという部分の説明、これは性質上物理的な説明になると思うのですが、この部分がやや弱いように思いました。


Q:今回の講義で、生体内の水の運搬を実現する上でアクアポリンが重要な役割を果たしているという話があった。アクアポリンは水のみを選択的に透過することが出来るタンパク質であるため、細胞への水の取り込みに大きく関わっている。アクアポリンは生物に共通して存在する一方で、動物と植物によって種類や発現量が違う。見てみると、ヒトが体内にアクアポリンが10種類であるのに対して植物は35種類持っているという結果になった。ここで動物と植物における違いが分かったところで、植物内での違いについても考える。植物内でのアクアポリンの量は、根や葉の方が多く存在している。前述の事実から、より水分の運搬が必要な場所の方が、アクアポリンの発現量増えるのではないかと思った。今回は動物の生体内においてどのような場所にアクアポリンの発現が多くなるか考えた。植物と同じく、水分の運搬が多く行われる場所に多く存在するのではないかという考えから、体液バランス調節や浸透圧調節に使われると考え、具体的に動物の場合には腎臓や皮膚表面などの、水分の運搬がかなり必要になる体内の部位で、アクアポリンの発現量が多くなっているのではないかと考えた。

A:全体としてよく考えていることはわかるのですが、話題がややあちこちに行っていますね。なるべく、最初に明確に問題を設定して、その回答へ向けて論理を進めるようにした方が、科学的なレポートにはなります。


Q:今回の講義は根の役割がテーマであり、根は水の吸収や栄養塩の吸収を担っているということだった。また、根に発現しているアクアポリンは水の膜透過だけでなく、二酸化炭素の膜透過にもかかわっているという。二酸化炭素は無極性分子であるから細胞膜の脂質二重層を通過できるのになぜそのようなことになるのか疑問に思った。まず、高校までの生物学の講義では植物は気孔から二酸化炭素の吸収を行うとのことだった。しかし、よくよく考えてみれば気孔は孔辺細胞によって開閉されるだけのただの「穴」であり、そこに物質を能動的に運び入れるようなシステムはない。エネルギーを使って働くNa+ポンプのようなものがあれば別だが、そんなものはない。そうなると気孔による二酸化炭素の輸送は濃度勾配に従ったただの拡散であり、そのような安定した二酸化炭素の供給を行えないものを供給源にするはずはない。前述のとおり、アクアポリンが二酸化炭素輸送に関係しており、また講義内の「根は水に溶けた様々なイオンを細胞内に取り込むために各イオンに特化した輸送体をもつ」という話を踏まえると、植物が利用する二酸化炭素は気体分子由来のものではなく、炭酸イオンまたは炭酸水素イオン由来のものが主であると考えられる。そして、その輸送体はアクアポリンと共役している可能性が高い。

A:事実はさておき、自分なりの論理を進めているという点で評価できます。ただし、アクアポリンによる水または二酸化炭素の輸送も、受動輸送ですから、能動輸送のステップは、他に考える必要があるでしょう。


Q:今回の講義で根は繁殖のためのツールとしての機能を備えていると紹介されていたが、私は竹のことが思い浮かんだ。竹は基本的には地下茎でジェネートを作ることで仲間を増やしていることで知られているが、数十年に一度、種によって異なる周期で花を咲かせて受粉することで、種子を残す代わりにすべてのジェネートを枯らせてしまう上、それは個体ごとではなく、同時多発的に起こるという。(https://www.ffpri.affrc.go.jp/tmk/event/documents/kouza201265.pdf)これらは個体もしくは群レベルでの自死とも呼べるが、なぜ無性生殖の可能な竹が、すべてのジェネートを枯らせてまでこのような行為に及ぶのだろうか。理由は2つ考えられた。1つには、単純に竹の寿命のようなものが存在するということである。通常の木は以前学んだように死んだ細胞を幹の内部で支柱がわりに用いて、幹の外側は成長し続けるが、竹は内部がほぼ空洞であり、通常の木とは違って死んだ細胞の処理や、外部への成長がしづらい。よって、他の種と異なり、外部からのダメージの回復が難しかったり、経年による劣化が致命傷になりやすいため、新しい世代を生み出すことで、解決しているものと考えられる。もう1つには、環境が変わって生存に不利になった場合、より外部ストレスに強い種子の状態となることで、自身の遺伝子を残すという戦略をとっているものと考えられた。いずれの理由も、ある地域で同時多発的に花を咲かせ枯れる説明となりうる。

A:よく考えていてよいと思います。ただ、竹の一斉開花の周期は数十年にも及びますから、その間、一つのラメートがずっと生き続けるわけではありません。ラメート自体は枯死と再生を繰り返しているはずですから、ダメージの回復ができないということ自体は問題にはならないでしょう。


Q:今回の講義で特殊な環境で生息する植物の根の例として土壌が薄く、下が岩なため根が深く張れない、サキシマスオウノキも板根が挙げられた。この話を聞いて特殊な環境について海水など塩分が多く含まれる環境で根を伸ばし生育する植物の根はどのようになっているのだろうかと気になったので予想される塩分が多く含まれる環境での根の機能について考える。まず塩分が多い環境で考えられる問題として浸透圧による水分の流出問題と水分を吸収した際に塩分を体内に多く吸収してしまうという問題が考えられる。それらの問題の解決法の一つとして海水魚と同じようなメカニズムを持つ植物はいないかと考えた。根の一部で能動的に海水を多く取り込み、そのうち塩分だけをろ過し、一部の細胞に蓄積させ、枯死などにより排出しているのではないかと。実際にはどのように対処しているのかはわからないがこの予想と同じような方法で対処していたら海水魚と海水に生息する植物が海水に対し同じように適応していったのだと考えられ面白いなと考えました。

A:植物の中には、根が塩水にさらされたときに実際に塩嚢細胞という塩分を濃縮して隔離する部分を作るものがいます。内の研究室でも研究対象として実際に扱っていますよ。