植物生理学I 第2回講義

葉に見る生物の共通性と多様性

第2回の講義では、植物の形の多様性と共通性について、機能とのかかわりから解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今日の講義では葉の形がなぜ「葉のような形なのか」という問いに対し、日光を多く吸収するなどのメリットを得る為だと聞きました。そこで、もっと植物全体を見てみると、植物の部位や器官がなぜそのような形をしているのか、1つ1つについて納得の出来る意味合いがあるのではないかということに気付きました。様々な植物をそういった観点から見てみたいと思いました。講義の中盤で植物の形成には一定の働きをする遺伝子(ex細胞の幅を広げる為に働く)があり、それの発現の有無や度合いによって植物の形が変わってくると聞きました。基本的に葉の形は一定の割合で制限されている、つまり大体の形は決まってるという点について、植物はどのようにして規定の形であるという条件と並行してそれぞれの植物が環境に適応するための特異的な構造を手に入れるのか、そのバランスや遺伝子の発現制御の仕組みを知りたいと感じました。

A:このレポートの中身は、講義の内容とそれに対する感想です。最初に説明しましたが、この講義のレポートとしては、講義内容の反復や感想は評価されません。評価されるのは自分なりの論理であることに注意してください。


Q:植物の葉が広い面積を、薄い光エネルギーを得るために獲得したということ、そしてある形態形成に関わる遺伝子をノックアウトした際に補償効果によりその形態の変化を補う方向に形体を変えるという調節が非常に興味深かった。これらの2つに共通しているのは植物は生育に必要な形態を比較的短いスパンの中で認識しているということである。この認識機能を光受容体が関与していると仮定した場合、青色光で変化を示した場合はフォトトロピンかクリプトクロム、赤色光で変化を示した場合はフィトクロム、また遺伝子の発現解析(リアルタイムPCR等)でも判別することができるのではないかと考えた。一方で他の要因(温度や湿度)についても条件を考える必要があると思った。

A:レポートの方向性は悪くないのですが、アイデアを出した部分で止まっていて、全体としてしっかりとしたロジックに基づいた文章にはなっていません。次回は、もう少し論理的な展開を前面に出したレポートにしてみてください。


Q:本日は植物の葉の形がどのように決められるかに焦点を置いての講義でした。わたしはなぜ他の部位でなく葉の形が共通性と多様性により変化するのかを考えました。もし、ある植物の葉が何らかの障害によりその太陽光の吸収を妨げられた場合、同じエネルギーを生産をするのであれば、エネルギーの変換効率を上げ、外見は同じでも、省燃費な機能を持つ植物に変化していくことも可能なのではないかと思われます。しかし、一旦成長した植物の内面的な機能を変化させることはその植物の外見を変化させるよりも環境に適応するのに多くの時間を要し、さらに多くの植物の場合、エネルギー生産(光合成)を一番多く行っている部位が葉であるので葉の形状を変化させ環境に適応する方向に成長すると考えられます。講義でも例に合ったように、この共通性と多様性が外見上で変化を見せる例としては他にクジラが鰓呼吸でなく肺呼吸ではあるが魚類ににたヒレや尾を持つことにも見られます。

A:論理的に文章を書こうとしていることは感じられて評価できるのですが、もう少し論理が整理されていませんね。外見/中身を変化させる話と、葉がエネルギー生産に重要であるという話が、交互に出てきているのが原因のようです。一度に議論する論点を一つに絞って論理を展開するとわかりやすい文章になります。


Q:今回の授業では、なぜ植物の葉が今あるような形をしているのかということについて学習しました。授業内で葉の2次元的な形状は多様性を特徴として持ち、そこに環境の差異を見出すというのと、3次元的な形状は薄さという共通性を特徴として持ち、そこには機能を見出すというお話があり、確かに多くの植物についてその通りであると思いました。そこで熱帯植物を代表とする、「うすい」と評価するには難しい植物も存在していることを考えると、同群落においてより有利に生育するためのプラスの条件が2次元的多様性なのであるとすれば、その環境下で本質的に「この形状でなければ生育できない」という制約などのために規定される、最低条件的な意味での構造が3次元的構造なのではないかと考えました。
 日本植物生理学会ホームページにて取り上げられていた質問の中で、熱帯植物であるインドゴムノキの葉が通常の植物に比べ海綿状組織が多く分厚いのはなぜかというものがあり、それに対する東京大学の塚谷裕一教授からの回答として光強度が強すぎる環境であるがために、海綿状組織から二酸化炭素を取り込み、光エネルギーを使い切る必要があるためであると示されていました。これからもやはり、同群落内で他の種よりも有利に生育するため、というよりかはその環境において最低限生き延びるために必要であるからこのような形になったのではないかと考えられると思いました。
 『薄さ』という共通の特徴がない、3次元的構造の多様性は、やはり必要性があるから、この形ではないといけないから、という理由で生じているものだと考えられ、カエデの葉などの未だに理由のわからない環境によるものと考えられる2次元的構造の多様性よりもよりどういった理由でそのような構造になるのかという要因が考えやすいと思いました。
引用元:日本植物生理学会ホームページ 熱帯植物の葉の構造について、https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1268 最終閲覧日:2017-4-23

A:よく考えていてよいと思います。ただ、論理展開をもう少しすっきりさせることは可能なのではないかと思います。他のレポートで、サボテンなどについて議論したものがたくさんありました。おそらく、インドゴムノキのように特徴的ではあるけれどもそれほど大きく違わない葉について最初に議論するよりは、サボテンのように極端に形態が異なる植物についてまず議論することにより論旨をはっきりさせる方が、よいように思いました。


Q:今回の授業内で、葉がそれぞれの形を持つには形態的な理由があるというお話が出てきた。そこで私はカエデの葉がどうして掌のような形をしているのか疑問に思った。調べたところ我々が普通カエデと言われて思い描く、葉の薄い紅葉する種はムクロジ科カエデ属のイロハモミジという種である。同じカエデ属に属する種は、すべて掌状の葉を持っているわけではない(クスノハカエデ、ヒトツバカエデ等は丸い葉をもっている)。最初自分は掌状の葉は、鋸歯が肥大化したものではないかと考えた。掌状ではないカエデにも鋸歯があるため分化する過程で変化した可能性はあるからだ。しかし、「鋸歯は植物ホルモンのオーキシンのはたらきで作られる」(参考文献)が、「鋸歯形成に関わるオーキシンなどのさまざまな因子が、植物の体の他の部分でどれだけ必要かに応じて、それに引きずられてついでに形が変わっている」(参考文献)との説があり、そもそも鋸歯の存在自体に形態的に意義はほぼない様である。したがって適応の過程で鋸歯を大きくする必要性があったとは考えにくい。
 次に私は、もともとの丸い葉に進化の過程で徐々に亀裂が入っていったのだと考えた。分裂した葉(掌でいう指)それぞれの中央に太い葉脈が通っているのでもともとの側脈の間に亀裂が入ったと考えられる。形態的に掌状に進化させた理由は以下のことが考えられる。葉を丸状ではなく掌のように広げることで、葉柄と、一番葉柄に近い側脈とのなす角度が鋭角になる。こうすることで一枚の葉が日光を拾える範囲を大きくしていると考えられる。また、分裂した葉(指)それぞれが少し膨らんだ形をしているのでここでも面積を稼いでいると考えられる。しかし、それなら丸い形を維持したまま葉脈を広げ面積を大きくすればいい話だ。わざわざ掌の形にした理由としてはこう考えた。掌状の葉をもつイロハモミジは陰樹であり、弱い光をもとに効率的に光合成をおこなうため葉が薄い。そのため不必要に葉を大きくすると、風や雨などの刺激で傷ついたり破れやすくなってしまう。そこで掌のように広げそれぞれの指の先を細くとがらせることで衝撃を受け流しやすくしたのだと考えた。遺伝子レベルでの進化の過程や、上記の条件に合わない掌状の葉に関しては全く分からない。今後解明されるのが楽しみである。
参考文献:https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3320「日本植物生理学会 Q&A 鋸歯の役割」東京大学大学院理学系研究科 塚谷裕一氏の回答より 2017/04/23 13:20閲覧

A:これもよく考えています。ただ、この講義に対するレポートは数百字で十分です。長すぎたらだめということはありませんが、このレポートは2つの論旨が含まれていますから、どちらか一つに焦点を絞って短くすることはできると思いますので、その方が良いでしょう。その場合、前半の議論は、調べた結果がほとんどなので、あまり必要ではありません。後半の内容に絞ったレポートにするとよいでしょう。


Q:植物の葉は大きさや形は千差万別であるにもかかわらず、ほとんどの葉は薄く平たい。植物の本質的な機能である光合成を効率よく行うために、光が当たる面積を広く取ろうとした結果だということが分かった。この授業で私は、茎について同様に考え、茎はほとんどの植物で細長い筒状という共通点があるが、断面の内部構造は維管束の並びなどで単子葉類と双子葉類で異なると気が付いた。したがって葉についても、見た目は薄いという共通性があっても、細胞レベルで見ると異なるかもしれないと思った。これについて答えを求めるために2年の時に受けた植物形態学でいろいろな植物の葉の断面や維管束系などの内部構造を顕微鏡で観察し比較したときのことを思い出した。ツバキ、ゴムノキの葉の断面を作成し、他にもナデシコやレモンも画像で見たが、どの種類も上面表皮と下面表皮に覆われて、上面側に柵状組織があり、下面側に海綿状組織があって、組織の配置に多様性はなかった。ほとんどの植物の葉は内部構造までも共通性を持つと結論付けた。

A:このレポートは、自分の頭の中で考えた流れを書き綴っているという点では論理の流れが感じられます。一方で、これを読んだ上で、改めてその論理を再構築すれば、「葉の内部構造を複数の植物種で比較すると共通性が見られる」という一点に集約されてしまいます。つまり、このレポートの流れは、考えの道筋であって、科学的なロジックではないのです。このようなレポートは、別にダメなわけではないのですが、もう少し科学的なロジックに基づいた流れのレポートに修正できればその方が良いでしょう。


Q:シロイヌナズナでan遺伝子が葉を広げ、rot3遺伝子が葉を長くするということが分かったが、これはこれは葉内の細胞一つ一つを大きくしたりすることによる。またan変異体であったが野生型より細胞数を多くするというレギュレーションが働いているということを学んだが、では細胞一つ一つはどのようにして完成形となるように調節されているのだろうか?細胞一つ一つはそれぞれDNAを持ち、細胞膜、細胞壁で隔たりがあり一見独立しているように思われる。しかし、我々が各種ごとに共通する「葉」の形態になりうるためには細胞の大きさを決定する遺伝子のみでは説明できないはずである。では何が葉の形態を制御しているのであろうか?一年生の時に細胞生物学Ⅰを受講したがそこでは植物細胞には細胞骨格が存在し、細胞内の情報伝達、そして細胞外へと伝達するように機能しているとのことであった。つまり基部で細胞があるタンパク質を作り、そのタンパク質が制御タンパク質として働き先端では例えば細胞の分裂を抑制したり、細胞自体の成長を停止させたりというふうに関わっているのではないかと考えられる。

A:このレポートも、いろいろ考えて書いていることが読み取れます。「何が葉の形態を制御しているのであろうか?」という疑問に対して「タンパク質が制御タンパク質として働く」という答えを与えていますが、その間に入っているのは細胞生物学で聞いた話です。その話がなぜ答えにつながるのか、一番大事なそのロジックをきちんと示すようにするとよいでしょう。


Q:講義で葉の平面の形は様々であり、個々の植物がおかれた環境に応じていると、述べられていた。そのように考えると、イチョウは同じ木にある葉の中でも中央付近に切れ込みがあるものと、そうでないものがあり、1本の木でもそこに付く葉はそれぞれ環境が異なっていると言える。そこで、なぜイチョウの葉に切れ込みがあるものと無いものがあるのかについて考えてみた。そもそも、切れ込みがあることで個々の葉の表面積が小さくなり、受け取る光エネルギーが小さくなるので、同じ期間中の個々の葉の光合成という観点では効率が悪くなるはずである。それでも、切れ込みを作る必要性について、以下の2つが考えられた。ひとつとしては、葉の表面積を小さくすることで風の受ける面積を小さくし、葉が落ちないようにしているということである。そうすれば、光合成を行う期間が長くなり、結果的に光合成量は大きくなる。つまり、切れ込みがある葉は風圧を受けやすく、切れ込みが無い葉は風圧が受けにくい場所にあるのではないかという予想がつく。もう一つは、切れ込みの間から光が入るため、下層にある葉までが届きやすくなるかもしれないということである。その場合、上層に切れ込みがある葉が多く、下層に切れ込みの無い葉が多いという予想ができる。

A:このレポートは、単純ですが明確な問題設定をして、それに対して仮説を提唱していて、さらにその仮説のうちの一つを検証する実験系を提案していますから、きちんとロジックがあり、僕の講義のレポートとしての必要条件を満たしています。


Q:今回の講義では葉の長さと幅は独立に制御されておりそれぞれ異なる遺伝子により制御されていることを学んでいきましたが、葉の形以外の部分も長さと幅が独立で制御されている部分があるのではないだろうか。例えば花の花びらの部分も人間の感覚として平たく、薄い印象を持っている。花びらのメインの役割としてはミツバチなどの昆虫たちに受粉してもらうための受け皿やそれらの昆虫を誘うなど用途は多岐にわたる。この花びらの長さと幅も葉の形のようにそれぞれ独立した遺伝子により制御されているのではないだろうか。そう考えた理由として1つは葉の形は光合成を効率よく行うため、長さと幅が独立して制御されていた。葉の働きとして最も重要視される光合成に合わせて葉の形が決まっているのであれば花の形も花びらの用途により決定しているのではないかという点、もう1つの理由としては植物の形態は多くの部分でパターン化されていることが分かっている。ということは遺伝子レベルでもパターン化されていると仮定すると葉の形がそれぞれ独立して制御されているのであればほかの部位に関しても独立して制御されていてもおかしくないという2点から考えられる。これらを証明するために行う実験としては葉の形がそれぞれ別の変異体で制御されていることを証明したように花びらの遺伝子をノックアウトし、成長経過をみていくことが最も効率がいいと思われる。

A:このレポートも、上のレポートと同様に、必要条件を満たしています。ただ、最初の「役割」についての議論は、以降の論理にあまり寄与していないようです。もう少しすっきりした論理展開にすることはできそうですね。


Q:講義では植物の葉はなぜ「葉のような」形であるかについて仕組みと理由の二つの観点から扱っていたが私は現在の形に至るまでのプロセスが気になった。進化というものの性質上その時の環境に適した形質のみが発現することはありえずその他さまざまな形質を持った個体が存在したはずである。その中で現在まで生き残った個体と生き残れず絶滅してしまった個体との分岐点を知りたいと思った。さすがに植物界という分類区分が確立されてから現在に至るまで全部の個体変異を観測することは不可能でありそもそもその個体が滅んだ理由が環境による必然的なものなのか捕食者や単発的な自然災害などによる偶発的なものなのか区別できないため意味がない。そこで調査対象を一時代において隆盛を築いたもののある時代を境に徐々あるいは急激に個体数を減らし現在では絶滅してしまった種について現在まで生き残っている種との形態的差異や個体数が減り始めた時代の気候変動について調査、考察することで現在の植物の形態についてより深く理解することができると思う。

A:これも、論理的に考えようという姿勢は感じられます。「偶発的なものなのか区別できない」という問題点を解決するために提案された「調査対象を…」以下の部分が、どのように問題点の解決につながるのかの論理が明示されていません。全体の論理展開の中でここが一番重要だと思いますから、この部分を説得力を持って説明できるとよいでしょう。


Q:最初に、葉を表す形容詞を考えたときに、自分もそうだったが、上から見たときの形(丸いや手のひらのようなど)は多様なものが想像つくが、横から見たときには、比較的、「薄い」に関連したものが多く思いついた。普段我々が身近な植物を見たときに、そのほとんどが薄いために脳が葉とはそういうものだと認識しているためだと考えた。では、なぜそのような形をしているのか。それは、光合成の効率を上げるためだと自分も考える。太陽からの光エネルギーは薄く広い範囲に届くため、葉の面積が広いほど光をたくさん受けることができ、また、分厚くしないことで、重さを軽減し、葉を支えるのに使うエネルギーを少なくできる。それと、葉が重なっている部分があったときに、葉が薄いことで、光の一部は透過してそれがまた下の葉にも当たるので、光を光合成に無駄なく使えると考える。また、葉柄が薄くないのは、葉を支える機能を主としていて、葉柄の長さを変えることですべての葉に光が当たるようにする工夫であると考える。それとそもそも葉柄がなければ、葉を思い通りの方向に向けることができないため、上記のすべての葉に光が当たるようにする工夫はできないと考える。だがしかし、薄ければ薄いほどいいかというとそうではないと考える。光合成の効率は上がるが、葉の強度は下がっていくため傷ついたり、落葉の確率が上がり、それが光合成の効率を下げる結果につながり、最終的に寿命を短くする結果になるので、ある程度の厚さが必要であると考える。

A:このレポートには、講義で紹介した情報がたくさん含まれています。一般的には、それは必ずしも悪いことではないのですが、この講義のレポートでは講義内容をまとめたレポートは評価しません。その部分、つまり「平たい理由」や「洋平の意義」の部分はばっさり削除して、自分の独自の考えの部部をもっと膨らますようにしてください。


Q:今回の講義では、植物の形(特に葉)には理由があるということや、多様性や共通性、そしてそこから光合成の話に絡めて、現在の地球のエネルギーと太陽光について学んだ。葉の構造について、まず、葉は基本的に薄く平たいという共通性を持つ。多くの葉の目的は光合成にあり、そのためにも同体積あたりでより多くの面積を生み出し、より多くの光を得るためであると考えられる。その結果、葉を茎などで支えるために、一枚一枚の葉は薄く軽くなったものと考えられる。ではなぜ、植物の葉は階層的に生えているのだろうか。まず初めに考えうるのは、360度どの方向からのどの角度で入ってくる光もすべて回収するためである。単一平面的に葉を展開してしまった場合、光の反射率が高くなったり、そもそも葉に当たらない光が増加してします。次に、薄くしてしまったが故、光を吸収しきれず葉を透過してしまうものがある。それを階層的にすることによって余さず回収しているものと考えられる。

A:これも上のレポートと同じで、前半は講義内容の反復にすぎません。後半はまあ良いと思います。ただ、後半の前提となる「植物の葉は階層的に生えている」という点を観察なりからきちんと説明する必要はあるでしょう。植物の葉の付き方は極めて多様ですから、どのような植物でそうなのかは、最低限示す必要があるでしょう。


Q:今回の授業で、「葉がまるで将来の自身の大きさを知っていて、その大きさに向かって調整しながら成長しているように思えるが、そのメカニズムは未解明」という話があったので、そのメカニズムについて考えた。まず、葉の成長は葉の基部の細胞分裂による、細胞数の増加によるものと考え、細胞分裂の終了=葉の成長の終了、と考えた。では、細胞分裂の終了のタイミングの決定のメカニズムはどうなっているのか?以下の2パターン考えた。1つ目は、葉の基部の細胞分裂の回数がもともと決まっている。2つ目は、外的要因(光、水、温度etc)によって細胞分裂の回数が支配されている。どちらのメカニズムにより決定されているのか調べるには、次のような実験をすればよいと考えた。ある植物個体とそのクローン個体を用意し、どちらかの個体の外的要因(光、水、温度etc)のうちの一つ条件を変えて生育する。そして、2個体の同じ位置の葉の細胞数をカウントする。このとき、二つとも細胞数が同じならば、葉の細胞分裂の回数(葉の将来の大きさ)がそもそも決まっている、細胞数が異なれば、外的要因に応じて、葉の細胞分裂の回数(葉の将来の大きさ)が決定される、といえるのではないかと考えた。

A:これは、考えようという姿勢は感じられますが、最初に「そのメカニズムについて考えた」と言っている部分のメカニズムと、その次の細胞分裂の終了のタイミングのメカニズムは別のものですよね。論理展開にやや飛躍があるので、もう少し論理を一つずつ展開するようにした方が良いでしょう。


Q:今回の授業では、植物の葉の形態について取り扱った。そのなかで、なぜ葉のような形になったのかという理由には機構および目的が関わっている、という話があった。ここで、やはり「葉のような形」といって真っ先に思い浮かぶのはやや楕円形の薄いものである。そこで、一般的な「葉のような形」とは異なる、針葉樹の葉の形態の意義についても考えてみようと思う。針葉樹の生息域は亜寒帯であるが、その気候の特徴としては寒冷な時期が長いということが挙げられる。広葉樹に特徴的な楕円形の葉は、たしかに光合成をする上では理想の形かもしれないが、寒冷な気候においては雪や低温にダメージの方が大きいのではないか。針葉樹に特徴的な針のような葉であれば、雪が積もっても葉自体にかかる圧力は軽減されるのではないかと考えられる。
 さて、葉にとって重要な役割である光合成を中心に針葉樹の葉について考えてみる。葉1枚あたりの表面積は、楕円形の方が針のような形よりも圧倒的に大きい。しかし、亜寒帯において針葉樹が優位になれる理由として、針のような形であっても充分に光合成が可能なのではないか、という仮説が生まれる。これは、同じ体積であれば針葉樹の葉のほうが広葉樹の葉よりも枚数が多いこと、つまり面積あたりの葉に光が当たる割合はほぼ等しくなるのではないかということである。ある層に於ける光の吸収率をそれぞれ算出することでこの仮説を裏付けることができると考える。温暖な環境下では針葉樹の葉は広葉樹の葉に比べてデメリットとなる部分が存在するが、寒冷な環境下では優位性が逆転し、針葉樹の葉の形態が優位になるのではないか。

A:よく考えていてよいレポートだと思います。レポートで一番評価できるのは、環境による優位性の逆転を論じているところですが、これは、最初に問題点として設定されている「針葉樹の葉の形態の意義」と必ずしもマッチしません。考えているうちに論理がシフトしていっているようですが、最後にレポートを読み直して、問題設定の部分を、得られた結論にふさわしいものに合わせて修正すると、より良いレポートになります。