植物生理学I 第6回講義

呼吸の電子伝達とATP合成

第6回の講義では、呼吸の電子伝達反応とATP合成を中心に解説しました。ちょっとレポートが中だるみ状態のようで、あまり面白いレポートがありませんでした。


Q:今回の授業でATP合成酵素を構成するα、βサブユニットの3つの組がγ、δ、εに対してぐるぐる回転し、3カ所の触媒部位が順番に働いてATPを合成していることを学んだ。ここで、なぜ生物はなぜこのような複雑な構造をもったのであるか。そもそも、α、βサブユニットが3個ずつ組み合わさった構造をとるのではなくγ、δ、εに一対一で対応をするようなサブユニットをもてばこのような複雑な構造を持つ必要はなかったのではないか。α、βサブユニットには基質と生成物にゆるく結合するL状態、基質と生成物に強く結合するT状態、そして全く結合しないO状態の3つの状態へと変化することでATPを合成している。このことから考えて、ひとつのサブユニットをもってATPを合成するよりブユニットが3個ずつ組み合わさった構造をとる方が効率よくATPを合成することができる(複数のサブユニットがそれぞれ異なる状態でいることでスムーズに一連の反応が起こると思われる)ためにこのような構造をとったのだと考えられる。
・参考文献:「ヴォート基礎生化学 第2版」 DONALD VOETほか 著 東京化学同人

A:そうですね。対称的な構造をとることで機能を果たす例は、生物の様々な場面で出てきます。ATP合成酵素もその一つの例として考えることができますし、この場合の三回対称性を、ATP合成の3つのステップに結び付けて考えることは非常に自然だと思います。


Q:植物は、ごく一部の例を除いては発酵を行わない。発酵を行わずとも、二酸化炭素を有機物に固定する際に還元力を消費し、NADHをNAD+に戻すからである。発酵では最終産物がその生物にとって不要な物質であるのに対し、光合成ではグルコースが生成される。発酵ではATPを得ることができるが、NAD+の獲得という観点からすると、発酵よりも光合成の方が生物にとって都合が良いように思われる。そこで、光合成はグルコース生成のための代謝ではなく、NAD+獲得のためである(光合成により生じるグルコースはNAD+獲得の際の副産物)と考えられないだろうかと思い、光合成の過程のどこでNAD+が得られるのかに注目して、改めて光合成について調べてみた。光化学系ⅡでH2Oが分解されてプロトンが生じ、それがNADP+へ渡されて光化学系ⅠでNADPHを生じる。NADPHはカルビン・ベンソン回路でNADP+となる。1モルのグルコースが光合成により生成されるとき、光化学系Ⅱ、光化学系Ⅰを経て生じるNADPHは12モルであり、カルビン・ベンソン回路で消費されるNADPHも12モルである。ここで思い出したのが、以前の講義で聞いた「光化学系Ⅰをもつ緑色硫黄細菌と光化学系Ⅱをもつ紅色光合成細菌が細胞融合してシアノバクテリアとなり、そして現在の高等植物が持つ光合成機能へと進化した」という説である。光合成がNADP+獲得のための機能であったなら、NADPHを生じる光化学系Ⅰは持たない方が有利に思われる。しかし実際には、光化学系Ⅰをもつ細菌とⅡをもつ細菌が細胞融合して現在の光合成生物へと進化している。よって、光合成はNAD+獲得のための機能ではなく、グルコース生成のための機能であると考えられる。
≪参考文献≫大山隆監修、西川一八・清水光弘共編『ベーシックマスター 生化学』オーム社、2008年11月

A:発想はユニークでよいと思います。ただ、最初に、光合成生物は還元力を消費する系があるので発酵する必要がないという議論をしているわけですよね。そのあとにNAD+の獲得をについて考えていく論理展開が僕にはわかりませんでした。


Q:日常で使う呼吸は生物学的に細胞が有機物を分解してその過程で生じるエネルギーをATPに蓄えることを指す。ADPという空の電池みたいなものです。そこで活きるうえでATP生成をするのに呼吸をするには、酸素を必要とする好気呼吸と、酸素を必要としない嫌気呼吸がある。そしてブドウ糖はビルビン酸となりエネルギーが投資される。しかしブドウ糖がなくなったらどうなるであろうか。たんぱく質をアミノ酸に分解しクエン酸回路を経由してATPとして使われる。つまりエネルギーを枯渇しているときを考えよう。どこにもエネルギーを生産する材料がない時筋肉が分解されたんぱく質になり使われることになる。長距離選手はよりたくさんのエネルギーを消費することとなる。そしてエネルギーが枯渇状態に陥ったときには筋肉が消費される。このことから長距離選手はあんなに細いのであろう。酸素を使うことで好気呼吸をしなければ燃えない脂肪も使うことであろうから脂肪も一切ない。つまり筋肉を減らさないでトレーニングをするにはこまめにエネルギーできれば分解することが必要ないブドウ糖を補給することできるだろう。

A:レポートの内容自体はそれほど悪くないと思いますが、もう少し、日本語を推敲しましょう。


Q:ATPの合成は高エネルギー“中間体”を経て起こると考えられた化学共役説は間違いであり、プロトン濃度勾配という高エネルギー“状態”を経て起こる化学浸透説が正しいということを学習した。では何故ミトコンドリアは高エネルギー中間体では無く、プロトンの濃度勾配という高エネルギー状態をATPの合成に利用したのかを考察する。まず第一に高エネルギー中間体を用いるとエネルギー効率、つまりグルコース1モルにつき生産できるATPの量が減ってしまうのではないかということが考えられる。解糖や各種発酵およびクエン酸回路などの、プロトンによらない場合のATPの産生量をみると電子伝達系で得られるそれより圧倒的に少ないことが分かる。次に高エネルギー中間体は、高エネルギーであるということは安定ではなく効率的に使用できない可能性があるということである。一方プロトンの濃度勾配はイオンチャネルやポンプのような輸送タンパク質が膜にあれば容易に濃度勾配を作ることができる点で有利である。 以上のことからプロトンの濃度勾配という高エネルギー状態をATPの合成に利用したと考えられる。

A:議論としては、もしプロトン濃度勾配がそんなによいのであれば、解糖系の部分にもプロトン濃度勾配を使わないのはおかしい、ということにはなりませんかね。そのあたりまで議論できると、もっと良いレポートになります。


Q:発酵が解糖系と深い関係があると今回の授業で学んだので、発酵について調べてみたところ、乳酸という言葉も出てきました。ピルビン酸が酵素によって乳酸に変換されるのです。乳酸といえば「筋肉に乳酸がたまる」なんていうように聞いたことがあります。では、筋肉と乳酸はどのように関係しているのか調べてみました。『乳酸系では筋肉にあるグリコーゲンからATPを生成します。つまり、筋肉を使うと乳酸が生成されます。この物質が筋肉に溜まると筋肉が疲れを感じる乳酸は著しく筋肉を酸性化させるので、エネルギー生産に関連する酵素の活性を低下させ、筋肉運動のためのエネルギー(ATP)を作れなくします。→スタミナ切れの中心的な原因』ここで考えたのが、乳酸が筋肉痛の原因であるのではないということです。『乳酸は筋肉痛や痙攣を起こす原因では有りません。運動による筋肉のダメージや炎症が遅れてやって来る、筋肉痛が原因なのです。殆どの痙攣は、筋肉疲労により筋肉をコントロールする神経が過敏になる事から来ています。乳酸は運動中も後も、エネルギー源として素早く消費されているので、いつまでも筋肉中に残るものではありません。』この引用文にあるように、乳酸は筋肉痛の原因ではないようです。さらに、炭水化物を代謝した際の役割や、新陳代謝を行う上で乳酸が重要なエネルギー源となる事を説いている者もいるのです。運動選手が乳酸を上手く利用してトレーニングすることが大切であることは間違いないようです。
〈引用文献〉『乳酸とうまく付き合う法』 URL: http://www.sf-magazine.com/june00/lactic_acid.htm、『ボート運動における筋肉疲労について考察』URL: http://www.geocities.jp/nobu3333333/gijyutsu/kinniku.html

A:一般論としては悪いレポートというわけではないでしょう。ただし、前にも言いましたが、この講義のレポートでは、単に調べたことを述べただけのレポートは評価しません。自分の独自の考え・ロジックを評価します。このレポートには自分なりのロジックが不足しています。また、著作権上許されるのは、引用が従である場合です。このレポートはぎりぎりクリアしているようですが、そのあたりも注意してください。