植物生理学I 第12回講義

人工光合成

第12回の講義では、人工光合成について、太陽電池や光触媒などと比較しながら解説しました。東西線が大混乱だったので、講義の正規の開始時刻には10名ほどの学生しかいませんでした。そのせいか、あまり独自の視点をもったレポートがありませんでした。


Q:私は授業で半導体を用いた光電変換システムで太陽電池への実用化は可視光が使えないから難しいと知り、どうして紫外線しか使えないのか気になったので調べてみた。半導体である二酸化チタンは光のエネルギーをもらうことで自分自身が高エネルギーの状態となり、光が当たった表面の電子を放出する。光からもらったエネルギーで価電子帯にあった電子は一気に伝導帯に飛び上がる。また、エネルギー=ブランク定数×光速÷波長である。このときの光のエネルギー=光の波長であるため、電子が飛び上がるために必要なよりエネルギーの高い紫外線領域(400nm以下)の光が必要であると考えられる。日常では紫外線は少ないため、太陽電池への応用はできないが、光触媒として、現在実用化されている。光を当てることによって、水素が発生し、有機物を分解してくれるのである。冷蔵庫や掃除機、ビルの壁、トンネルの照明などに取り入れられている。しかし、昔から、われわれ人間は光触媒をつかっていると考えられる。たとえば、洗濯物を乾かすときには、太陽の光に当てて乾かしている。これは、抗菌力をはたらかせているのである。また、金魚の水を替えるときは、汲み置きしていた水をつかうのも、紫外線によって、水道水の塩素を分解しているのである。このように、光触媒は、我々の生活に根付いているものであると考えられる。

A:最後の部分、「触媒」という言葉の意味からするとちょっと違うのではと思いましたが。


Q:今回の授業で本多-藤嶋効果によるTiO2の触媒効果について学習した。TiO2に光(吸収のピークは紫外線)を当てることによりH2OをO2とH2に分解して、さらに電流をも得ることができるというものであった。紫外線は地球上ではあまり利用できず、効率も悪いという理由から、エネルギーを得る目的では利用されていないということであった。では、宇宙空間での利用を考えてみてはどうだろうか。宇宙空間では紫外線も豊富であり、生じたO2とH2を燃料電池として利用することにより、無限のエネルギーを得ることができるのではないかと考えた。基本的な反応機構はH2Oの分解と生成なため燃料の消費と補給を同時におこなうことができる。燃料電池と共に用いることで発電効率もカバーできるのではないか。問題点としては、人工衛星などの利用を考えた場合に、影などに入って紫外線が途切れたりして紫外線吸収ができなかったり、二つの反応機構の速度の違いによってH2OまたはO2とH2の供給バランスが壊れることで、どちらかの反応がもう一つの反応を律速してしまうことが考えられる。また、現段階では太陽光発電の代わりに使用するメリットがあまり考えられないことも問題点の一つである。しかし太陽光発電で使用する触媒には紫外線に弱いものもあることから、太陽光発電よりも長期間使用できる可能性がある。また、太陽光発電と併用することにより、紫外線から可視光まで無駄なく光エネルギーを利用できると考えられる。

A:地球上では紫外線が少ないのがネックになっているという時に、何とか可視光線を使えるようにする、というのではなく宇宙空間で紫外線を使う、という発想の転換が大胆で素晴らしいですね。


Q:今回の授業では、人工光合成について触れた。人応光合成は人工的に酸素とエネルギーないしは有機物を合成する技術で、現在様々な研究が盛んであり、中には既に反応が成功しているものもある。約30年ほど前に東大工学部の本田先生と藤島先生が本田・藤島効果という酸化チタンと白金の電極を水の中に入れて酸化チタン電極に光を当てると、水が分解して酸素と水素が発生して且つ、電極間に電圧を発生する反応を発見した。この方法では光エネルギーから酸素と水素並びに電気エネルギーを得られるという画期的な反応であるが、生産効率が極めて低いために、エネルギー供給源としてはあまりよく使えない。そもそも光エネルギー(つまり太陽エネルギー)から電気エネルギーを取り出すのであれば、人工光合成よりも太陽電池が既に実用化されている。しかし、この技術の研究価値は電気エネルギー意外に生命にとって不可欠な酸素を発生させ、更には燃料電池などにも応用できる水素も発生させることとである。確かに、現在では光エネルギーから電気エネルギーを変換する技術や酸素や水素を発生させる技術も存在する。しかし、それぞれの技術のなかでは、その経過中でエネルギーを消費し、ロスが出てしまう。そこで、もし本田・藤島効果の効率を非常に高く上げることが出来るのならば、一回の反応で三つの産物を得ることができるので、生産コストがあまりかからずに済むと考える。これを実用化に向けて考えると、光合成に似た効果を示すので、地球温暖化対策が考えられるが、実際地球温暖化は二酸化炭素によるもので、これを解消するには二酸化炭素を固定しなければならない。本田・藤島効果では二酸化炭素を固定化することが出来ないので、地球温暖化対策をするのであれば、人工光合成よりも植林をした方がコスト的に見ても有効だと考える。そこで、本田・藤島効果を有効活用するのであれば、例えば宇宙空間等で、使用すれば、酸素と電気エネルギーの供給、そして水素が出来ることから、それを燃料として用いることが出来るのではないかと考えた。この方法を効率化すれば、スペースシャトルのような場所では非常に有用に思える。したがって、人工光合成技術は宇宙空間などの特定の環境下では非常に有用だが、地球温暖化のような大規模な問題には対応するには、コスト的に考えて現在では非効率的だと考えた。
参考文献:http://www.masam.info/002886.html

A:このレポートも比較的広い視野で考えていますね。