植物生理生化学特論 第9回講義

植物の低温感受性

第9回の講義では、低温感受性植物における低温ストレスのメカニズムについて解説しました。以下に寄せられたレポートとそれに対するコメントを載せておきます。


Q:今回の講義では、弱光かつ低温条件で光化学系1が分解されることを明らかにした研究例を学んだ。低温ストレスによる阻害が不可逆であることから、受容体機能の抑制や受容体の発現低下というより、受容体自体の分解が起きているという点に納得した。この研究では電子受容体であるFxとFa/Fbが破壊されることを確認していたが、p700からの経路にあるA0やA1について調べられていない点が気になった。FxとFa/Fbはどちらも鉄硫黄クラスターであるため、どちらも分解される点は納得出来る。A0はp700と同様にクロロフィルであると考えられているため、p700と同様に分解は起きないと予想できるが、A1はビタミンであると考えられており、p700と性質が異なるため、分解されている可能性があると考えられる。また、低温弱光処理で分解産物が現れたという電気泳動結果が示されていた。泳動結果について、分解産物のバンド上流にある太いバンドにはFxが含まれるが、FaFbは含まれない点に疑問を持った。電子スピン共鳴の結果から、Fxに加えてFaFbも分解されているため、Fxの分解分解産物のバンドが該当サブユニットの下流に現れるならば、FaFbの分解産物も該当するサブユニットの下流に現れるはずである。FaFbの分解産物が現れていないことについて触れられていなかったため、この点について何か答えが出されているのか気になった。

A:レポートには2つのポイントがあって、一つはA1が阻害されているかどうか、もう一つはFA/FBの結合サブユニットが分解されているかどうか、ということだと思います。実は、前者も後者もきちんとした形では証明されていません。A1については、少なくともすべてが分解しているのではなさそうですが。


Q:植物の低温阻害において、低温感受性植物と低温、光、酸素が葉の状態における系Iの光阻害に必要な条件であることを学んだ。しかし、光が強いときは、1日の中で比較的温度が高い状況である場合が多いのではないかと考える。さらに、光が強いときの方が光合成により植物周辺の酸素は増えると考えられる。これらを考慮すると、条件のうち、低温と光、低温と酸素はトレードオフの関係にあると考えられる。そこで、実現象における、低温による影響と光による影響の大小、低温による影響と酸素による影響の大小を見極めることを考える。低温による影響は、弱光下で葉を数時間様々な温度にさらし、光合成を計測することで定量化することができる。系Iでは、閾温度より小さくなると、温度の低下に伴い急に低下することが分かる。つまり、低温にするほど、影響が大きくなるということであり、光の影響や酸素の影響と比較することにより、低温阻害の対策を練ることが可能になると考えられる。光による影響は、低温による影響を調べた実験において、温度を一定に保ち、光の強さを変量することで定量化することができる。系IIはピークを持つが、系Iはピークを持たず、光が強くなるにつれて、阻害が大きくなることが分かる。したがって、十分に光が弱い必要がある。酸素による影響は、周辺に酸素がある場合とない場合で環境を変化させて、他の条件を同じにし、光合成を測定することで定量的に示すことができる。酸素が存在すると、ないときに比べて、約1/4倍まで光合成が妨げられていることが確認できる。低温の影響と光の影響は、低温の影響の方が大きいのではないかと考えられる。低温時には、光の強さは弱いことが考えられる。弱光であれば、系Iは阻害が起きにくく、系IIでも大きな阻害が生じることは考えにくい。このような条件で低温阻害が生じるということであれば、低温による影響が大きく働いているということである。前述した低温による影響を確認する実験と光による影響を確認する実験の条件を統一し、阻害の大きさを比較することでこれを検証できると考える。また、光が弱いほど酸素が少ないことを踏まえると、酸素の影響よりも低温による影響の方が大きいことが予想される。前述した低温による影響を確認する実験と酸素による影響を確認する実験の条件を統一し、阻害の大きさを比較することでこれを検証できると考える。

A:よく考えていますが、酸素についてはもう少し考えてほしいことがあります。光合成による酸素発生は、原則として二酸化炭素吸収と一対一で起こります。その場合、空気中には二酸化炭素が0.04%しか含まれていませんから、発生する酸素は0.04%分であり、もともと空気には21%の酸素が含まれていることを考えると、酸素濃度は最大でも21%が21.04%になるだけです。つまり、光合成によって酸素濃度が大きく上昇するということはあり得ません。一方で、中学などにおけるオオカナダモの実験では、酸素が気泡となってポコポコ出てきます。そこではどのようになっているのかは、考えてみてください。


Q:今回の講義では、植物の低温感受性についてキュウリにおける低温障害のメカニズムの研究例が示された。その中で、低温障害に必要なものとして酸素や光が紹介された。研究の際に実際に現れる条件下で行われた研究が主に紹介されたが、植物種によっても変わる低温障害について、光合成に関連する要素を検出することでセンシングできるのではないかと考えた。一般に考えられるものとして、これまでに学習したクロロフィル蛍光を利用することが考えられる。量子収率をモニタリングすることで光合成活性の低下を確認し、致命的な阻害が起こる温度の閾値を確認する。また、PSIによる律速を受けることから、PSIIからPSIへの電子移動の飽和が起こっていることが予測されるため、酸化還元電位の測定によって障害をセンシングできると考えた。ここで、どちらの手法においてもキュウリやホウレンソウなど既に低温障害とその閾値温度が知られるものを用いて実験を行い、その結果との比較を行い、閾値温度を設定する。可視障害の遅延のメカニズムも疑問に思うが、こうした光合成関連のセンシングを行うことでリアルタイムで低温障害の有無を判断できるという利点があると考えた

A:最後の方の「可視障害の遅延のメカニズムも疑問に思うが」という部分が何を意味しているのかが分かりませんでしたが、それ以外は、よく考えられていてよいと思います。少なくとも可視障害の発生よりは早期に低温障害を検知するシステムは作れそうですね。


Q:講義では低温ストレスによる光合成阻害の代表例としてトマトとキュウリが紹介されていた。低温ストレスを受けそうなその他夏野菜を調査してみた1)。文献1)には冬野菜についても記載されていたが、やはり講義で示されていた通り冬野菜の最低生育温度は夏野菜のそれより低く、冬野菜は低温ストレス耐性が夏野菜よりは強いことがうかがえる。一方で、トマトの最低生育温度は5℃と、冬野菜に劣らない低温ストレス耐性を有しているように感じる。この理由について講義を元に考察する。冬野菜とトマト、キュウリの光合成割合を比較していたがそこでは顕著に差が現れていたため、トマトの低温ストレス耐性は光合成に関与はしないと考えられる。一方で講義冒頭、動物細胞と植物細胞の比較の際、動物細胞は外部環境と内部環境を体液によって隔てているため恒常性を獲得できていると紹介されていた。このメカニズムはトマトの内部環境とも似ているのではないかと私は考えた。トマトの外側は密閉された硬い皮で覆われており、一方で内部はその他夏野菜にあたるスイカやメロンとは比べ物にならないほど液体に近い。このトマトの構造自体が圧倒的低温ストレス耐性を生んでいるのではないかと私は考える。
1)『野菜の生育温度』https://www.atariya.net/kiso/ondo.htm

A:最後の方の書き方だと、内部が液体というのは果実をさしているのではないかと思いますが、一方で「最低生育温度」は、その温度のままで生育して果実をつけるということではなく、その温度を経験しても枯れないということではないかと思います。葉の生育と開花そして結実は、それぞれ別の温度要求性があるのではないかと思います。


Q:今回の授業の中では、光化学系Ⅰが強光と低温で阻害されることが示されたが、実際のキュウリの光合成阻害は明け方の光が弱い時に起きるし、可視障害の遅れが生じる。特に可視障害の遅れは、様々なタンパク質の相互作用が関係あると考えられる。光合成阻害を受けたキュウリとそうでないものの遺伝子発現を比較がほしいと感じた。

A:レポートとしては、単に「ほしいと感じた」と書くのではなく、例えばどのような遺伝子発現データがあれば何を結論することができるのか、といった形に議論を展開するようにしてください。


Q:今回の講義を視聴して、低温環境下に置かれた冷帯の常緑樹(特にタイガの針葉樹)が葉を落とさない理由について疑問に改めて思った。凍結ストレスは細胞の脱水を引き起こし、また光化学系IIが酵素反応であることを考えると光合成速度もとても小さくなると予想される。このことを踏まえると、光合成速度の小さい時期に落葉によって表面積を減らすことで乾燥ストレスを低減する落葉樹の生態は合理的だと考えられる。一方常緑樹は葉にクチクラ層を発達させることによって乾燥ストレスを低減し、冬季に葉をつけた状態を保っている。しかし冬季は前述の通り乾燥ストレスがかかり(あるいは乾燥ストレスに対応するためのエネルギーが必要になり)、光合成速度が小さい時期であることを考えると、落葉して夏季に集中的に光合成をした方が効率的なように思える。ここでは冷帯の常緑樹が冬季に落葉しない理由について考える。一番考えやすいのは、「冷帯域は冬の期間が長いために、夏季のみに光合成をする戦略をとった場合、固定できる炭素量が少な過ぎる」という仮説である。ヘルシンキと東京の気候を比較すると、ヘルシンキの月平均気温が東京の12月の平均気温を上回っている時期は、5か月間(東京の場合8か月間)のみである。東京の落葉樹が12月頃におおよそ落葉が終わることを踏まえると、温帯域の落葉樹と同じような条件で落葉した場合、冷帯域の樹木が光合成できる期間はわずかに5か月のみとなる。ゆえに光合成速度が小さく、乾燥ストレスに曝されたとしても、光合成が可能な期間を延ばすために、葉が冬季にも対応できる機構を獲得したのではないかと考えた。しかし、1年の中でも特別気温が低い時期は、光合成速度も特別小さく、乾燥ストレスも特別酷いために、落葉する冷帯域の樹木が存在しても良いはずである。しかし冷帯の殆どの樹木は年中葉を付けている。この理由については、葉が冷帯の大部分の季節に対応できる機構を獲得したことで、(タンパク質などの物質的な制約のためか)特別気温が低い時期にも、ある程度の光合成と乾燥ストレスへの対応が可能になったからではないかと考えた。言い換えると1年の中でも特別気温が低い時期に対応するためには、冷帯の大部分の季節に対応できる機構があれば十分だったからではないかと考えた。
参考文献:(1) 東京書籍. 雨温図. 平成28-31年度用Dマークコンテンツ. (2015). https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/digi-contents/chu/shakai/shakai_c_025_00/start.html?v=20191211. (2022年6月12日閲覧).

A:全体としてよく考えています。論理性も十分ですが、「冷帯の大部分の季節に対応できる機構」の具体像がないので、もう一息「納得した」感が出ないように思います。ここで考えているのは「凍結しない」といったことなのか、それとも光合成の側の生理的変化の話をしているのか、そのあたり少しでも話に具体性を与えることができると、説得力が大きく増すと思います。


Q:今回は植物の環境適応、ストレス耐性について学んだ。光独立栄養生物であるシアノバクテリアでは明期に様々な遺伝子が高い転写活性を持つ一方で夜間になるとその活性はほとんど失われる。その中で暗誘導遺伝子群と呼ばれる少数の遺伝子は暗期に明期よりも高い活性を持つ。暗誘導遺伝子の役割はまだあまり解明されておらず、おそらく次に来る明期のセットアップを行っているのではないかと言われている。しかしDarkで培養した株についてRNAseqを行った結果、窒素飢餓状態の株のRNAseq結果と非常によく似た結果が得られ、暗誘導遺伝子と呼ばれていた遺伝子のうちいくつかが窒素飢餓時に非常に活性が高くなっていた。そのため暗誘導遺伝子は明期へのセットアップだけでなく飢餓状態などのSOSに対応するための遺伝子ではないかと考えられる。同じように低温ストレス時のRNAseq結果とよく似た結果がほかの培養条件(条件Aとする)で得られた場合、条件Aで予想される制御機構をあてはめることができるのではないだろうか?また条件Aで働いていると思われる遺伝子が低温ストレスに関与している可能性なども考えられる。

A:その手の実験は、20年ほど前には、DNAマイクロアレイを用いて盛んにやられました。低温、強光、栄養欠乏といった各条件での遺伝子発現は、一部は共通で、一部は異なっているという結果になりがちで、そこからだけでは何かを結論できなかったと思います。暗誘導遺伝子の場合は、数が限られていたので、意味がつかみやすかったという側面もあるかもしれませんね。


Q:今回の講義でのPSI及びPSIIの温度変化による挙動の変化を見てきたが、実験に使用していた植物が夏野菜のキュウリのみだったことが気になった。各植物における温度と光合成能のグラフにおいて夏野菜は12℃付近で急激に光合成能が落ちていたが、冬野菜のホウレンソウは光合成能の変化は小さかったことから、PSIの阻害もほとんど生じていないと思われる。そのため、冬野菜のPSIの配列と夏野菜のPSの配列をアライメントにかけて比較してみるとよいのではないかと考えた。アミノ酸情報が大きく異なっている箇所が低温域でのPSIの阻害の原因となっている箇所であると考えられる。また、スクリーニング法を用いた進化工学によりPSIにランダム変異を加えることで、低温ストレスに強いPSIの開発及び品種改良にも役立つのではないかと思われる。

A:PSIの光阻害のメカニズムの解明については、次の講義で紹介する予定です。


Q:今回植物の低温感受性があげられたが、関連して発熱する植物、特にザゼンソウに関して考察する。ザゼンソウは肉穂花序が発熱し、一週間ほど温度が20℃前後に保たれることで知られる(伊藤, 2012)。一定期間一定温度に保たれる理由について、伊藤(2012)は、花粉管の伸長に重要であり、発熱が訪花昆虫の誘引を主な目的とするのであれば、温度が特に一定に調節される必要性はないとしている。しかし本講義で扱ったように、植物は細胞反応を変化させることである程度寒冷な環境に適応できる。現在花粉管の伸長に重要であったとしても、それが発熱することへの主要な選択圧だったとは考えにくい。よって、今回は訪花昆虫の誘引を主要な理由と仮定して話を進める。本仮説を説明するためには、ザゼンソウが他の発熱植物と異なり一週間ほどと比較的長期にわたって発熱する理由と一定温度に保たれる理由を説明する必要がある。ここで私は、これらの理由をザゼンソウに産卵し羽化まで進める訪花昆虫がいるためと考える。まず発熱期間の長さについて、訪花昆虫が産卵から羽化までの期間に対応していると考える。ザゼンソウのような臭気のある植物に訪花する代表種に、キノコバエのような双翅目があげられる。これらの双翅目は世代交代が早く、種類によっては1週間前後で世代を回す。よってザゼンソウが発熱期間を延ばすことで、訪花昆虫がそこで世代を回すことで、実質的に訪花する昆虫の量を増やすことができる。さらにこの前提では、訪花昆虫の発生にとって最適な温度に保たれるとより世代を早く、かつ訪花昆虫の生存率をあげることができる。実際、例えばショウジョウバエでは20℃程度がこの温度域にあたる。本仮説は冬という訪花昆虫が少ない環境では十分な選択圧になりうると考える。またこの仮説を検証するためには、発熱時に訪花する昆虫を調べ、実際に産卵していないかどうかや発生時の至適温度を調べることが有効と考えられる。
参考文献:伊藤菊一. "ザゼンソウの発熱現象と呼吸制御." 生化學 84.10 (2012): 853-857.

A:これは、少なくとも僕にとっては斬新な仮説で面白いと思いました。ただ、どのような点から仮説にたどり着いたのか、という記述が少ないので、やや「思い付き」という印象を与えているかもしれません。


Q:講義にて、植物にとっての低温ストレス(chilling)で、炭素同化と光化学系のアンバランスが挙げられていたが、窒素同化の関与すなわち共生菌である菌根菌が低温下で植物にもたらす影響について疑問を抱いた。そこで、菌根菌が低温にさらされた場合、植物の成長に影響を及ぼすかどうか調べた。すると、20℃から30℃では菌根菌あり/なしの植物では有意に菌根菌ありの植物の方が成長していたのに対して、15℃では有意差が出ないことがわかった(1)。このことから、菌根菌の植物の低温ストレスへの関与の可能性は低いことが考えられた。
1. 温度条件に着目した共生菌の有無によるレンゲツツジの成長の違い 杉山 涼太(筑波大学 生物学類)、廣田 充(筑波大学 生命環境系) つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2014) 13, 33

A:この講義では、調べた結果を記述しただけのレポートは評価しません。もう少し、それをベースに自分の頭で考えた結果を記述するようにしてください。


Q:「光合成研究の方向性」「光合成研究と環境応答」の回で、ほとんどの環境ストレスにおいて光との相乗効果が認められることを学んだが、低温ストレスの場合これが化学的な反応で温度依存性のある炭素同化と、物理的な反応で温度依存性のない光化学系のアンバランスさによるものだと知った。植物では光受容タンパク質であるフォトトロピンが温度受容タンパク質として働いている[i]ことを知った。確かに低温であっても植物に光が届かなければ炭素同化と光化学系のアンバランスさは生じないので、光と温度を同じ受容体が感知していることは理にかなっていると感じた。ただシロイヌナズナではフォトトロピンの温度検知の結果葉緑体が光を受けづらい場所に逃避するが、これは低温下での光阻害を回避するための機構である。よって(ホウレンソウでも葉緑体の逃避行動が見られるならば)授業で取り上げていた低温による系1の光阻害は葉緑体の逃避行動では対応しきれない場合に起こると考えた。フォトトロピンは活性型LOV2(光受容ドメイン)の寿命を測ることで温度検知しているため、低温・弱光が「持続」していることは感知できない。であるならば系1光阻害は、温度受容体だけでなく、それの持続時間を測定できるような機構(低温時に発生する代謝物の量の測定など)の組み合わせで発生するのではないかと考えた。葉の状態での系1における光阻害に必要な条件で、低温・光・酸素だけでなく低温感受性植物が挙げられていたが、確かに感受性がなければ応答できないので、系1での光阻害は長期的な視野で見たときに植物を守るような反応なんだな、と思った。
[i] 児玉豊、「植物が温度を感じる仕組み ようやく発見!植物の温度センサー分子」、化学と生物 vol.57 No1 2019年

A:よく考えていてよいと思います。結論は、最後の分の一つ前の文であるという認識でよいのでしょうか。そうであれば、論理の流れもよいと思います。実際の光化学系Iの阻害メカニズムについては次回の講義で解説します。


Q:阻害の程度と酸素の有無による変化について、系Ⅰは酸素気流中において阻害が発生していると説明があったが、同実験において系Ⅱについても窒素気流中において阻害が発生しており、大気の8割を窒素が構成していることや地球上で光合成が活発に行われる以前は酸素濃度が低かったことを踏まえると無視できるものでは無い。系Ⅰと系Ⅱを直列に接続した上で光合成に利用している以上、どちらか一方にとっての阻害が発生する悪条件が揃った場合であったとしても光合成全体に影響してしまうため、その分デメリットが増え、阻害を受けてしまう環境や時間帯を増やしてしまっていることとなる。不可逆的な阻害である以上、その回復には葉緑体を再度作り直す必要があり、そのようなバックアップを可能にするエネルギーを日中に生命の維持や個体の成長にも余りあるほど生産するだけでなく、夜に向けての貯蔵を毎日行う仕組みが備わっていなければ光化学系Ⅰ・Ⅱを直列に接続した運用は成し得ないことが考えられる。

A:きちんと考えているとは思いますし、論理もつながっているのですが、文章全体として、結論に向けて論理が流れている感じがしません。最後の1文が結論なのであれば、もう少し簡潔にまとめて、その結論に対する問題設定を文章の最初に埋め込んでおくと、起承転結のはっきりした論理的な文章にすることができると思います。


Q:本講義では、植物の低温感受性と、特にchillingストレスの光化学系Ⅰに対する阻害について学んだ。この低温ストレスに対する植物としてまず思い浮かんだのがセイタカダイオウである。低温と遮るもののない紫外線に対する防御として苞葉が花を覆うことで温室のように花を守っている。このセイタカダイオウの花を保護している苞葉を取り除くと、低温ストレスに代表的な正常な花粉形成ができなくなる。また凍結ストレスについては、食用となっているセイタカダイオウの味が、酸味が強く、糖分やアミノ酸を多く保持することによる甘味とは異なるため、生育環境では低温ストレスにさらされていると考えられる。このセイタカダイオウの光合成活性が曇りや、雨天であったとしても低地の草本植物と同様の光合成活性を示し、阻害が起こらないことが分かる(1)。あくまで温室の構造をとることで保護しているのは花のため、低温下で阻害を受けていない理由を考察した。このセイタカダイオウの光合成は緑色のロゼット葉によって行われている。これにより風の影響を最小限にしつつ、地熱の利用ができると考えられる。そしてこれに加えセイタカダイオウは巨大な個体である。葉をロゼット葉にし、さらにその葉そのものを巨大化させることで、動物におけるベルクマンの法則のように日光の当たる葉の表面積を大きくするという方法で光合成効率を上げていると考えられる。
(1)セーター植物・温室植物にみる極限の適応 http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Publish_db/1997Expedition/05/050800.html (2022/06/12 アクセス)

A:結論は、低温で阻害を受けていない理由は「地熱」と「大きな面積」ということなのだと思います。その場合、前半部分はあまり関係ないので必要ありません。一方で、「地熱」もしくは「大きな面積」であると考えた理由がそれぞれ述べられてはいますが、そのように考え付いた理由としてはよくても、それを検証するような論理がないのが少し物足りなく思います。例えば「地熱」だと思ったのであれば、それを別の角度から検証するロジックが展開されると科学的なレポートになります。