植物生理生化学特論 第5回講義

光合成研究と環境応答

第5回の講義では、光合成研究の過去と将来の方向性の一端を解説しました。以下に寄せられたレポートとそれに対するコメントを載せておきます。


Q:講義で示された地球規模のクロロフィル濃度の図を見ると、まず陸地周辺の濃度が高く検出されており、これは、水深が浅いために海底や河川から栄養塩類が十分に供給されているためと考えられる。対して、北極の周辺区域でも特に夏季において濃度が高くなっている点が気になった。低温環境では光合成速度が落ち葉緑体の維持が難しくなるため、北極及び南極付近の寒冷地域ではクロロフィル濃度が低下すると考えられる。そこで、北極付近においてクロロフィル濃度が高く検出されている理由を考えた。まず北極と南極の濃度差を生み出している要因として、オゾンホールの影響が挙げられる。南極はオゾンホールが大きく紫外線が強く降り注いでいるため、そもそも生物の生存環境として適しておらず、植物プランクトンの数が圧倒的に少ないと考えられる。次に陸地配置の影響が挙げられる。北極周辺はロシア、グリーンランド、カナダなどの陸地で囲まれており、河川などからの栄養塩類が豊富に供給されると考えられる。対して、南極大陸周辺には陸地が少なく、北極よりも栄養塩類の供給が乏しいと予測される。また、北極では温度は低いが溶存する二酸化炭素量が多くなり、夏場は日照時間が長くなるため特に夏季でクロロフィル濃度が高く検出されているのは、これらが要因であると考えられる。

A:きちんと考えていてよいと思いますが、オゾンホールの場合、南極大陸の上空ではともかく、周囲の海までいくと紫外線がそれほど強くなくなるように思いますし、水中では紫外線は散乱して急速に減衰します。


Q:今後の光合成研究として、地球規模での二酸化炭素発生量の軽減を考える。近年、二酸化炭素の増加に伴う地球温暖化が問題視されている。そのため、二酸化炭素を軽減することは必要である。二酸化炭素を鉱物内に閉じ込める方法などが模索されているが、光合成速度を高めることによる二酸化炭素の軽減の実現も可能であると考える。講義内において、海洋に鉄をまくことによる植物プランクトンの光合成について学んだ。植物プランクトンを増殖させることで二酸化炭素を減らすことは可能であると考えられるが、増殖による赤潮などの問題点があるため、ある基準を超えた二酸化炭素の軽減は期待できないと考える。そこで、各個体における光合成速度を高めることが有効な方法として挙げられる。光合成速度はある温度で極大値を持ち、その温度を超えると光合成速度が減少する。そのため、ピーク温度が高い高温耐性植物へと植物プランクトンの遺伝子操作を行うことが考えられる。最大光合成速度で保つことができれば、光合成において可能な限りの二酸化炭素を軽減することができる。この遺伝子操作を行った植物プランクトンの光合成を世界中の海洋上で行うことで大きな効果が得られるのではないかと考える。この効果の定量的な数値は光合成速度を変化できる解析で算出することで、どの程度の効果が望めるのかを検証することができる。ただし、植物プランクトンの遺伝子操作に関して、手動であると時間と労力が莫大であるため、自動化システムを構築することで簡単に遺伝子操作を大量の植物プランクトンに行うことができると考える。また、日本のように温度が頻繁に変化する国々では、異なる温度でピークとなる植物プランクトンを利用する必要があるため、確実に植物プランクトンを入れ替えできる水族館にあるような大型水槽を海の中に固定し、海に悪影響のないようにするべきである。

A:読んでいて、プランクトンをどこで生育させるのかが、読み取りにくく思いました。最後の方で、「大型水槽を海の中に固定」とあるところを考えると、実際の海洋中の環境を使うのでしょうね。それにしても、水温が変化するたびに使う藻類を入れ替えるとすると、そのためのコストだけでもなかなか大変そうです。


Q:光合成研究の方向性として、構造情報に時間をパラメータとして加えた研究が重要になるということが講義内で示された。前回講義と合わせて最も興味があるのは、光合成において様々な状況下で光合成が普遍的な反応を示すかである。様々な状況下とは光合成開始時や、種々のストレスに晒されたときである。特に様々なストレスに晒され光合成が阻害されるような場面では、転写レベルでの遺伝子発現調節が行われることは広く知られている。この遺伝子レベルの調節が光合成全体の反応にどのような影響を及ぼすかはシアノバクテリアなどの光合成細菌のノックアウト株を用いることで間接的に決定できると考えられる。これらの発現データについてストレスをかけてからの時間を変化させたサンプルで確認することで、ストレスなど外部環境によって光合成が受ける経時的な影響を確認できると考える。現在ではシングルセルゲノム解析と呼ばれる1細胞のみの遺伝情報を解析する手法が知られている。これを用いることで、同じ環境下で培養した細胞を微小時間ごとにずらして採取し、その細胞内の遺伝子発現を確認することができる。これを時系列で並べることで、ストレスに応答した遺伝子発現の変化とその時の光合成を評価することで間接的に酵素の機能を考察できると考える。

A:議論の方向性はわかりやすいのですが、シングルセル解析をする必要性がわかりませんでした。藻類の遺伝子発現の経時変化を調べるのであれば、培養液を少しずつサンプリングすればよいはずで、1細胞でこれをやると、むしろ細胞ごとのばらつきの影響が強く出てしまうような気がします。一方で、培養液をサンプリングする方法での発現解析は、すでに20年以上前に行われています。


Q:私の研究ではタンパク質の直接結合を観察する際にIP免疫沈降法を用いている。一方で本講義で紹介されていたようにX線結晶構造解析を用いれば、タンパク質複合体を一目で認識でき、かつ、タンパク質-タンパク質直接結合なんてものは簡単に確認できるのではないだろうかという疑問が生まれた。調べによると、X線結晶構造解析によってタンパク質複合体の立体構造を得ることはできるが、実際にタンパク質-タンパク質相互作用(または直接結合)があるというエビデンスとしては極めて希薄になってしまうようだ1)。よって、X線結晶構造解析を用いてタンパク質-タンパク質相互作用を探りつつ、免疫沈降法によって確証を得ることが正攻法なのかもしれない。
1)タンパク質X線結晶構造解析、http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_05_2k/

A:「相互作用があるというエビデンスとしては極めて希薄になってしまう」ということがどこから出てきたのかがよくわかりませんでした。引用されているWEBページを見てみましたが、そのような記述はないようです。複合体の結晶を得ること自体が難しい場合は多いと思う一方で、複合体の構造が得られれば、相互作用のかなり強いエビデンスではないでしょうか。


Q:光合成系の分子構造に関して、分子構造が判明しているが反応の様子(時間的な変化)がわからないということだったが、それはX線結晶構造解析の弱点である。分子の立体構造と相互作用をシミュレーションできるので、反応前後の構造をシミュレーションして比較すれば、反応の様子を動的に捉えることができるのではないか。ミクロな解析は観察技術よりもドライな分野で進んでいくと考えられる。進化学的な研究に関して、寄生生物の中にはかつて光合成を行なっていたと考えられる種が多く存在する(Imhoff, Johannes F et al.,2017)。彼らは一度は持っていた光合成する能力を捨てたということになる。光合成をするよりも栄養を外部から取り込んだほうが効率が良い環境だったということだろう。シアノバクテリアLeptolyngbya boryanaは、暗く富栄養な培地で育て続けると光合成能を失っていく(Hiraide Y et al., 2015)。"暗く富栄養な条件"をマウスの腸内で再現できないだろうか。光合成生物が寄生生物に進化するのをLeptolyngbyaで再現できる可能性があると考える。
Imhoff, Johannes F et al., Photosynthesis Is Widely Distributed among Proteobacteria as Demonstrated by the Phylogeny of PufLM Reaction Center Proteins. Frontiers in microbiology vol. 8 2679. 23 Jan. 2018, doi:10.3389/fmicb.2017.02679
Hiraide, Y., Oshima, K., Fujisawa, T., Uesaka, K., Hirose, Y., Tsujimoto, R., Yamamoto, H., Okamoto, S., Nakamura, Y., Terauchi, K., Omata, T., Ihara, K., Hattori, M. and Fujita, Y., Loss of Cytochrome cM Stimulates Cyanobacterial Heterotrophic Growth in the Dark.Plant Cell Physiol. 56,334-345 (2015)

A:考えているレポートだとは思いますが、話が2つに分かれてしまっているので、それぞれでのロジックはそれほどカチッとしていません。焦点を絞って議論した方が、論理的なレポートを書きやすいと思います。


Q:今回の講義を視聴して、光合成研究の多くでは空間スケールが大きくなるほど時間スケールが長くなるならば、逆に小さな空間スケールで長い時間スケールの研究を行ったり、大きな空間スケールで短い時間スケールの研究を行ったりすると、ニッチで面白くなるのではないかと考えた。例えば光合成に関連する分子に概年リズムの制御下にある分子が存在するかを探索する研究は、小さな空間スケールで長い時間スケールの研究になると考えられる。太陽光の量や温度など、光合成生物を取り巻く外環境は季節により変動しているため、光合成生物は(概日リズムが獲得された経緯と同様に)年周期で自律的に制御される機能を獲得し、外環境の変化に適応している可能性があるのではないかと考えた。温度・光条件が一定の条件下で光合成生物を長期間に渡って培養し続け、逐次トランスクリプトーム解析を行うなどの実験を行えば、概年リズムの制御下にある光合成に関連する分子を探索することができると考えられる。ただしここで提案した研究では長い時間スケールで研究を行うために、よくモデル生物として用いられるシロイヌナズナなどの一年草を用いることができないことが問題となるだろう。植物を対象に長期間に渡って分子スケールの研究を行った例としては、シロイヌナズナ属のハクサンハタザオを使った研究があった(工藤, 2016)ため、この種を使用することができるかもしれない。また当然ながら年単位で変動を追跡する以上、研究に膨大な時間と費用がかかり、さらに目的とされる分子が発見できるかも不明である。加えて長い時間スケールに渡って環境を一定に保ち続ける実験環境の確保にも困難が伴うと予想される。しかし未知の制御機構が発見される可能性がある以上、将来的には研究すべき領域なのではないかと考えた。
参考文献 (1) 工藤洋, 植物の分子フェノロジー季節を測る分子メカニズム, 京都大学生態学研究センター, (2016). https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=630. (2022年5月15日閲覧).

A:これは、面白い目の付け所だと思います。確かに、ニッチで面白そうだとは思いますが、実際にやろうとすると大変でしょうね。それだからこそニッチになっているのだとは思いますが。


Q:光合成研究にとっての重要なエネルギーの流れ、電子の流れは結晶構造からは分からないとありました。また、酸素発生時の原子の位置は見ることができるともありました。この二つのことを組み合わせることで光合成研究が進まないかと考えてみました。電子の移動があると、電気や磁気などが生じることがあると思います。その電気や磁気が発生した場所を読み取り、酸素発生時の原子の位置と照らし合わせることで、酸素発生の反応を可視化できるのではないかと考えました。

A:ちょっとふわっとしたレポートですね。文系の学生も取るような学部の一般教養の講義であればこれでもよいかもしれませんが、大学院の生命理工学専攻の講義に対するレポートとしてはちょっと寂しいように思います。


Q:今回は光合成研究の現状、未来について学んだ。現在はミクロ、マクロ両方の視点から光合成の研究が活発に行われており、新たな研究を生み出すのは非常に困難であると感じた。そのためあまり論理的ではないが新たな研究について考える。植物の光合成は光の強度や低温のストレスなどによって光合成量が増減するとされている。これら以外の増減因子として大気組成が考えられる。ハリケーンやサイクロン、スコールなどの突発的な気候変動がある地域では変動前に必ず大気の組成や気圧の変化が起こるはずである。その際に植物が呼吸や細胞内の水分濃度の変化で大気組成や気圧の変化を感知した場合に光合成量が変化するかどうかを解析することができるのではないかと考える。具体的には感知した場合、ハリケーン中などには光合成ができないことを考慮して光合成量が通常よりも増減するのではないか?または来る災害に対するストレスを受け止めるために光合成ストレスを調節するのではないか?という仮説である。実験方法としては年単位、24時間植物の光合成量と外気のモニタリングを行う必要があり、ノイズ、バックグラウンドを非常に厳密に測定する必要がある。結果として植物が外気の変化に対応して光合成量を増減させることがあれば、外気の調節によって植物のより効率のよい育成、管理が行えるのではないかと考える。

A:これは、植物が環境変化を「予測」しているのではないか、という趣旨でしょうか。例えば、摂氏数度の低温にさらされることにより、氷点下の気温に下がる可能性を「予測」することにより、凍結耐性を獲得する例などは知られています。アイデアはよいと思うのですが、後半の論理展開は、もう少し論理的に進めることが可能なのではないかと思いました。


Q:今回の講義で、あまりにも強い光は光合成を妨げるという、光阻害に興味を持った。ここでいう「強い光」とは暗所と比較して強いのか、光阻害が生じる光の強さは種によっておおよその光の明るさによって決まっているのか興味を持った。調べてみたところ、より強い光環境で生育した光合成生物はその環境に順応し、強光耐性が上がることが知られていると知った。また、この要因がEF-Tuタンパク質の存在によるものだと分かった。参考文献ではシアノバクテリア内のEF-Tuの存在量を増やすことで強光耐性を増加させたことまで実証していた。私はさらに、このEF-Tuタンパク質をタンパク質工学により変異を加え、野生型よりも活性及び温度変化により光合成量が変化することも知られているため、耐熱性も高めることでより光合成量を増やしていくことができるのではないかと考える。

A:調べた結果をレポートで紹介するときには、必ず典拠を参考文献として載せるようにしましょう。あと、このレポートでの唯一の論理は、最後の1文の「~ため、~と考える」という部分だけです。評価の対象となるのは、調べたことではなく、自分で考えた論理なので、そこをもう少し膨らませるようにしてください。


Q:今回の講義では光合成に関する研究の歴史・現在行われている研究及びこれからの展望について学んだ。シアノバクテリアの概日時計を扱う当研究室においても、光合成は非常に重要な過程である。研究室では単離したシアノバクテリアを、蛍光灯のON/OFFによる疑似的な昼と夜を作り、細胞内で作り出されるタンパク質の量やリン酸化状態をみて様々な遺伝子の働きを調べる手法を取っている。実験環境を自然環境と照らし合わせてみると、当然ながら多くの要素が排除されていることに気づく。日照の日内変動や気温、天候といったパラメータは慣習的に無視される。実験室での培養条件に日照や気温の日内変動を加える程度であれば簡単に実行できそうだ。現行の培養による細胞内と比較できれば意外な発見があるかもしれない。あるいは、現行の実験環境が妥当であることの裏付けになることだろう。

A:実験を計画するときには、一度に変える変数は一つにしなさい、と指導されると思います。変化させる条件を増やすことは可能だと思いますが、その場合に、解析をどのように進めるのかを考えるのは、かなり難しいかもしれませんね。


Q:今後の光合成研究において、植物における共生微生物の存在を考慮した実験系を増やしていく必要があると考える。多くの植物が野外では微生物と共生しており、例えば菌根菌は陸上植物の約80%に見られると言われ、他にも機能不明の内生菌が存在するという(Harley & Harley, 1987)。また植物体から子実体への光合成産物の転流が見られており(寺本ほか, 2011)、菌根菌共生が光合成による炭素獲得を促すという報告も存在する(牧田ほか, 2011)。このように光合成動態には共生微生物が大きく影響していると考えられる。しかし現在の実験では多くが植物体のみに着眼し、根を中心としてどの共生微生物が存在するのか存在しないのかほとんど考慮されていないように思う。これでは野外における光合成動態の実情にそぐわなかったり、適切な対照実験になっていない可能性もあると考える。よって今後は共生微生物と植物がどのように相互作用しているのか研究するとともに、その存在を考慮して実験を組み立てていくべきだと考える。
・寺本宗正, 呉炳雲, & 宝月岱造. (2011). 菌根菌ウラムラサキの子実体形成過程における光合成産物シンク能. In 日本森林学会大会発表データベース 第 122 回日本森林学会大会 (pp. 339-339). 日本森林学会.
・Harley, J. L., & Harley, E. L. (1987). A check‐list of mycorrhiza in the British flora. New Phytologist, 107(4), 741-749.
・牧田直樹, 山中高史, 吉村謙一, 小杉緑子, & 平野恭弘. (2011). 外生菌根菌の感染は樹木生理機能を変化させるのか?-コナラ実生の根呼吸・光合成に着目して-. In 日本森林学会大会発表データベース 第 122 回日本森林学会大会 (pp. 293-293). 日本森林学会.

A:これは、議論の方向性はよいと思います。「共生微生物と植物がどのように相互作用しているのか」という部分が一番重要なのだと思いますが、ここが一般論に終わっているところが残念です。少しでも具体的な提案があると、ぐっと良いレポートになるでしょう。


Q:これから先想定される地球環境の酸素および二酸化炭素の濃度変化について考えた。現在、地球環境において酸素濃度は減少傾向にあり、二酸化炭素濃度は増加傾向にある。将来的に二酸化炭素濃度が酸素濃度を大幅に超えて上昇する場合、自分はある時点で再び酸素濃度が上昇し二酸化炭素濃度が減少する、さらにはその後、現在の地球環境のように酸素濃度が減少し二酸化炭素濃度が上昇する、といったような濃度変化を繰り返すのではないかと考えた。C3植物ではRubisco によって炭素固定反応と同時に行われるオキシゲナーゼ反応でO2による炭酸固定阻害が起きる1ため、酸素リッチな現在の地球環境ではC3植物の光合成は大きく抑制されていることが考えられる。そのため、酸素濃度の変化がC3植物の光合成速度を変化させ、これから先想定される地球環境の酸素および二酸化炭素の濃度変化は上記のようになると考えた。
1 Mika Nomura, Sakae Agarie, Mitsue Tokutomi-Miyao, Makoto Matsuoka: Evolution of C4 Photosynthetic Genes and Possibility of Improvement of C4 Photosynthesis Pathway in Rice. 化学と生物 Vol. 36, No.2, 1998

A:純粋に論理的に考えれば、ある変化と、それと反対にはたらく変化が同時に起こる場合、ここに書かれているように増減を繰り返す場合の他に、一定値へ向けて漸近的に変化する場合もあるはずです。そのあたりについても、目配りがあるといいですね。


Q:海洋に鉄を投入した実験で、Day12で植物プランクトンが増殖している様子が確認できていたが、植物プランクトンの増殖スピードの速さに驚いた。ほとんどの環境ストレスにおいて、光との相乗効果が認められることを初めて知った。確かに環境ストレスによって破壊されかけた光合成系に光を加えると、植物の性質上強制的に光合成が始まってしまい、光合成に伴う活性酸素の発生などにより光合成系の破壊に追い打ちをかける状態になってしまうと思った。光合成系を修復するという観点に立つと、修復のためのATP産生のため光合成を行うことは植物にとって必要かと思っていたが、確かに光合成系そのものが壊れてしまっては元も子もないな、と思った。植物の進化の方向として、不要の際には光エネルギーを受け取らない機構を構築することができればストレス耐性が著しく上昇すると考えた。そのような機構が存在するか調べたところ葉緑体が光に応答して移動する「葉緑体定位運動」[i]が存在することを知った。これは強光の際には葉緑体が光の入射方向と平行になるように整列し、光の入射を防ぐ機構である。しかし逃避するだけでは根本的な解決になるとは考えづらい。そこで他に光を受け取らない手段としてクロロフィルを強光時にあえて破壊する機構を考えた。クロロフィル生合成、代謝経路のスピードをあげた変異体を作ることができれば、光の強さに応じてクロロフィルの数を調整し、光によるストレスを抑えられるのではないかと考えた。
[i] 谷口光隆・三宅博、「C4植物におけるストレス応答の細胞特異性」、植物科学最前線7:2(2016)

A:面白いアイデアだと思います。ただ、普通の植物がクロロフィルを破壊する戦略をとっていないということは、当然ながら、それに伴うデメリットがあるからだと考えることができます。なので、そのデメリットを避ける方策も同時に考えられるとよいですね。


Q:硝酸濃度の地球規模での可視化についての話を聞き、世界的に計測データが存在しマッピング可能なデータの利用可能性について考えた。昨今では、新型コロナウイルスの感染対策として飲食店等の店内での密閉を避けるため積極的な換気を行うことが求められていることを受け、一部施設では二酸化炭素濃度を計測する装置を常設している他、利用者に対し店内の空気の入れ替えにかかる時間を掲示している場合がある。これらを利用することで、観葉植物等による二酸化炭素濃度が高く直射日光の少ない空間での光合成の働きを観測できる可能性がある他、全国展開を行っているチェーン店等を利用した場合、複数の地点で条件を揃えた上で周辺環境を反映した詳細なマップの作成が、交絡する要因が多くなるなどの懸念はあるが、設置個所の確保や協力の要請の上での負担を軽減できるという点で比較的容易に可能となるのではないかと考えた。

A:面白そうな話題ではあるのですが、最後の長い文が日本語として完結していないため、結論がはっきりしませんね。もう少し日本語を推敲するとよいと思います。


Q:本講義では光合成研究が以降、どのように展開していくか、特に様々な時間軸を交えた実験が主となるということを学んだ。生物の適応、進化は何千年、何万年という尋常ではない時間を経過させなければ、人間の目に見える形質として確認できない。これを解決するために生活サイクルの短い菌や微生物を用いることで比較的短時間での進化の再現ができるようになったが、一個体として非常に寿命の長い種、例えば大木になる植物を用いて進化の再現をするとなると一世代をまたぐのにとんでもない時間が必要になる。そこで生活サイクルの長い植物種を用いて進化の再現実験を行う実験系を考える。一般に生物の寿命は細胞分裂をする際に減少するテロメア長であるが、永年植物であるリンゴやサクラでテロメア長を測定した結果、過去20年間の成長でテロメア長に変化がないことが分かった(1)。これは、多くの動物種と異なり、テロメラーゼ活性が体細胞において発現していることに起因する。しかしトマトの持つテロメア結合タンパク質であるLeTBP1をタバコBY-2細胞に遺伝子導入することでテロメア長が減少することが分かった(2)。これに加え、さらに特異的に阻害できれば抗がん剤として使用が期待されるテロメラーゼ阻害剤を用いることで、植物の生理的寿命を短くデザインし、進化研究に役立てられるのではないかと考えた。
(1)高等植物におけるテロメア長の解析とテロメア結合タンパク質のクローニング 森口 亮,金浜 耕基,金山 喜則 日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 DOI:https://doi.org/10.14841/jspp.2004.0.589.0
(2)園芸植物におけるテロメア長とテロメア結合タンパク質の機能に関する研究 森口 亮 https://tohoku.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=75286&item_no=1&page_id=33&block_id=46(アクセス日:2022/5/15)

A:考えの出発点としては非常に面白いと思います。ただし、細胞の分裂回数を規定した際に、固体の成熟にかかる時間が同じであれば、子孫を残せずに破綻しますよね。柿が8年で実をつけるとして、細胞の分裂回数によって生理的寿命が7年になれば、その柿は存続できません。そのあたりをどうするかのアイデアも欲しいように思いました。