植物生理生化学特論 第7回講義

蛍光測定による遺伝子機能解析

第7回の講義では、遺伝子の機能解析をゲノム単位に行ってデータベースを作成する研究例について解説しました。


Q:シアノバクテリアは弱光下で光化学系Ⅰが多く存在し、強光下では光化学系Ⅰの量が減少することから、光化学系Ⅰの量が主に変化することで光化学系の量比調節が起こると言われている。光化学系Ⅰを多く持つことはシアノバクテリアにとって、強光に晒されると活性酸素による損傷を受けるリスクがあることから、こうした危険を防ぐための保護機構として光化学系Ⅰの積極的な分解が進行すると考える。一般的に光化学系Ⅰは壊れにくく、一度破壊されると完全に修復するのに時間がかかるとされている。そのため、環境ストレス下で高等植物は光化学系Ⅰへの電子流量を制限するために光化学系Ⅱの収率を低下させることで、光化学系Ⅰを光阻害から保護している。シアノバクテリアにおける光環境に応じて光化学系Ⅰの量比を調節することは変動光下で強光から弱光に変化した際など、瞬時に環境適応する上で得策ではないように思われる。

A:一つ一つの文は、きちんとしているのですが、全体をまとまりとして読んだときに、何を主張しているのかがわかりません。もう少し、論理構成を考えて文章を書く必要があるでしょう。


Q:今回の授業では、クロロフィル蛍光の時系列変化のデータベースを用いた網羅的な遺伝子解析について学んだ。今回はこのクロロフィル時系列変化データベースをさらに強化するものとして、顕微鏡とPAM測定を合体させている顕微PAMを用いたデータベースの作製を提案したい。今までのクロロフィル時系列変化のデータベースはプレート上に滴下したサンプルを測定したデータによって作られたものであった。しかし、これは細胞の集合体である溶液のクロロフィル蛍光を測定しているものであり、細胞自体のクロロフィル蛍光を測定するのには至っていない。そこで、顕微PAMを用いて複数の細胞について測定を行う事で、遺伝子変異による細胞の大きさや数の差、各分裂段階における代謝の変化によって受けた影響による蛍光の差など、よりパラメーターを増やすことが出来ると考えられる。以前のプレートに滴下する手法と比較するといくらかは手間がかかるが、やはりRNAseq等に比べればコストや時間は節約できる手法である。これによりパラメーターを増やすことでただ発現状態を観察し、遺伝子の一対一の関係を関係を示すような解析よりも、ある表現型をもたらす様々な可能性を考えることが可能となり生物学的な意義を示しやすくなると考えている。

A:アイデアは良いのですが、具体的な部分「顕微PAMを用いて複数の細胞について測定を行う事で、遺伝子変異による細胞の大きさや数の差、各分裂段階における代謝の変化によって受けた影響による蛍光の差など」というところのイメージがつかめません。この、視野に入っている細胞は、すべて同じ遺伝子変異を持ったものなのでしょうか。もう少し、説明があったほうがよいでしょうね。


Q:シアノバクテリアの機能解析をゲノムワイドに行う方法としてトランスポゾンライブラリーを用いて変異体を作製し、その変異体が示す表現型(講義では光合成に着目して光化学系の量)をパラメータとして比較することで解析を行っていた。どのパラメータを取るかは見たい現象や目的によって異なってくるし、スクリーニングを行う環境条件によっては遺伝子を潰したことで本来見えてくる現象を見落とすこともあるだろう。つまり遺伝子を破壊したことによる細胞内の内因的なパラメータと環境条件などの外因的なパラメータを上手くリンクさせて解析を行っていくことが遺伝子の機能解析を行うにあたって大きな課題となると私は考えた。また遺伝子は単独で表現型を決定するものがあれば、複数の遺伝子の制御が重なって表現型を決定するものもある。つまり、ゲノムワイドな解析をするとなると、より複雑な遺伝子の組み合わせが発生する。後者については遺伝子を予め1つ以上破壊した状態で追加でトランスポゾンを導入して変異体を得ることで遺伝子同士の制御ネットワークを見ることも可能であると考えるが、直接的な相互作用やどのようなメカニズムで制御がかかっているかについては他の解析法も併せて利用しなければ分からないものである。これらのことを考えるとパラメータ選びが機能解析においてかなり重点を置いていることが分かり、講義でも述べられていた非破壊的に蛍光の有無や強度を指標として解析するのはリーズナブルで妥当性があると感じた。

A:ここで述べられているように、複数の遺伝子破壊の相互作用まで明らかにすることができれば素晴らしいのですが、それを網羅的にやるのは難しいでしょうね。これからの課題かもしれません。


Q:今回の講義はクロロフィル蛍光を用いた遺伝子機能解析の話であった。この話を聞いて動物を扱っており、遺伝子機能解析にはノックダウンからの解剖をしなければいけないこちらとしては、外部からの計測から遺伝子機能を解析する手法をうらやましく思う。であれば動物でも蛍光を用いて外部から観察することで遺伝子の機能解析ができれば効率がとても上昇するであろう。つまり影響を調べたいタンパク質にGFP等の蛍光タンパク質を標識するようにし、外部からの計測でノックダウン後の所在の変化やそれに伴う生理的な変化の計測を行うことができれば解剖の頻度を下げて遺伝子の機能解析ができるのではないかと考えた。問題点としては、外部からの蛍光観察の技術が細かい観察には対応できないこと、遺伝子やタンパク質は種類によって発現量に差があるのでごく微量しか産生されないものは解剖して切片を作成しないと判断がつかないこと、などがあげられる。しかし技術の発達や蛍光標識の対象を考えることで解決する問題であり、動物実験においてかなりの時間を食ってしまう解剖や切片の作成の手間が減少するのであれば積極的に取り入れたい実験手法になる可能性は非常に高くなると考える。

A:最近「透明化」手法が注目を浴びていましたが、それも、ここで述べられているような要請によるものなのでしょう。非破壊的測定も、今後の方向性の一つなのかもしれません。


Q:今回の講義では、多くの生物ゲノム配列が決定された現在、その複雑な遺伝子の機能を解析する手法として、光化学系量比によって非破壊的に解析できること学んだ。その中で、生態学的視点で、同種でも光や栄養塩の量の関係で、生育場所が異なる生物の遺伝子解析を行うことで、その機能を推定しうるということを学んだ。しかし、これだけではやはり遺伝子の機能を細かく推定することはできない。私は同じように,呼吸に着目して様々な環境要因(pH,光,特定の酵素反応阻害剤等)にその生物と変異体を置いたときの成長速度や、呼吸速度に着目することで遺伝子の機能を絞っていくことができるのではないかと考えた。

A:最後は、なぜ呼吸に着目するのかがよくわかりませんでした。これは、シアノバクテリアでの話でしょうか。そのあたり、もう少し説明が必要でしょう。


Q:今回の授業ではクロロフィル蛍光を用いたシアノバクテリアの遺伝子機能解析について学んだ。シアノバクテリアは原核生物であり細胞小器官をもたないため、光合成電子伝達は呼吸鎖、窒素代謝、炭素代謝、硫黄代謝などの他の代謝と相互作用があるため、クロロフィル蛍光が遺伝子機能解析に使えるということであった。一方で真核生物である高等植物ではクロロフィル蛍光は葉緑体の中のことであるため、クロロフィル蛍光を調べたところで機能がわかるとは限らない。しかし光合成に関与している遺伝子かどうか、さらにシアノバクテリアのデータベースと比較することによって光合成の中でもどこに関与しているのかということはわかるのではないであろうか。場合によってはシアノバクテリアと高等植物で遺伝子は違えども機能は同じということがわかることもあろう。それは進化を解き明かすのに役に立つのではないであろうかと考えられる。

A:そうですね。考え方はよいと思うので、できたら、あと、シアノバクテリアと葉緑体の違いについて少し考察できると、議論の流れに説得力が増すと思います。