植物生理生化学特論 第2回講義

吸収測定の方法

第2回の講義では、吸収測定の原理を吸収・散乱・透過といった基本の部分から解説しました。


Q:本日の講義では、自分が普段使用している機器の仕組みをより詳しく知ることができました。対象セルを使う理由も、1つ目は普段から使用しているので分かっていましたが、2つ目の理由は言われてみれば納得できる話でしたが、自分では発想もできませんでした。また、透過率・吸収率・吸収の関係や、吸収の式がlogをとる理由など先生がおっしゃっていた、なぜそのような仕組みなのか?理解して機器を使うなり、実験を行うなりすることの大切さが分かりました。

A:初回の講義でレポートの採点基準を言ったと思いますが、単なる感想では評価されません。自分なりの論理を展開してください。


Q:今回の授業では、様々な光度計の吸光原理について学んだ。それを踏まえて、より簡便で精度が高く安価な吸光光度計について考察する。まず疑問を持ったのはオパールグラス法である。「光をわざわざ屈折させる」とのことだったので屈折させて光電子増倍管に集めるのかと考えていたが、逆に散乱光、入射光問わず一様に屈折させることで入ってくる入射光の純度を上げている。(*1)確かに理に適っているが、私は「集光」に重きをおくことにした。第一に、セルと光電子増倍管の間に凸レンズを置く。こうすれば入射光の取りこぼしは防げるはずである。試料の濃度や性質によってレンズの位置が動かせるようになれば更に詳細なデータを得ることができるかもしれない。第二に鏡の設置である。レンズは入射光の集光のみ有効である。そこで、反射光を集めるためには鏡を使用する。反射光を集めるという原理については積分球で既に用いられているが、酸化マグネシウムが高価であることから積分球の内部に直接セルを入れることが出来ず、多少の誤差が生まれている。しかし、鏡は安価であり、反射率も良いものでは99.998%(*2)とかなり高い精度のものも存在する。以上より、凸レンズと鏡を用いてより精度が高く安価な吸光度計を設計できるかもしれない。
(*1)http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/39177/1/67-062.pdf#search='%E3%82%AA%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9%E6%B3%95'
(*2)http://www.luminex.co.jp/products/products04/products04_15.html

A:ここの入射光というのは、「散乱光、入射光を問わず」とありますから、直進光のことですね。そうだとするとレンズを入れる意義がよくわかりません。もともとそのまま光電子増倍管に入るのでは?また、鏡の利用に関しては、どのような形になるのかを考えてみないといけないでしょうね。このようなアイデアの場合は、実際の出来上がりをイメージしてみることが非常に大切です。


Q:今回の講義では、懸濁試料の吸収測定法の理論と具体例が紹介された。どの測定法も基本的に直進光Isを小さくする、またはpIDのp (散乱光捕捉率)を大きくして懸濁試料の吸収を測るものである。Isを小さくし、pを大きくしたいのであれば、「光路長の長いセルを検出器に密着させる」という方法でも懸濁試料の吸収が測定できると推測される。以下では、その推測ができる理由と、光路長の長いセルを測定に用いる際に想定される欠点について述べる。細胞懸濁液の吸収を測定すると仮定する。同じOD値(仮にOD = 1とする)であっても、光路長が10 mm(セルA)と50 mm(セルB)とでは、単位面積当たりのOD値はセルBの方が5倍大きくなる。つまり、セルBを用いた場合、入射光が細胞に当たる確率は5倍高まる。よって、光路長の長いセルを用いることで検出器に入るIsを小さくすることができる。そして、セルBを検出器に密着させることでpを大きくすれば、Isに対するpIDは大きくなる。したがって、光路長の長いセルを検出器に密着させれば、細胞懸濁液の吸収を測定できる。以上が理由である。以下ではこの測定法の欠点を述べる。セルAとセルBに同じ液量の試料を入れた場合、セルB試料に入射光が当たる面積はセルA試料の1/5になる。セルBを用いると入射光量が減ってしまうのである。入射光量が減ってしまうと、OD値の小さい試料では吸収が正確に測れないと予想される。よって、光路長の長いセルを用いて正確に吸収を測定するには、試料液量を増やす必要がある。1回の測定により大量の試料を消費してしまうことが、光路長の長いセルを用いる欠点である。一回の測定で試料を大量に消費してしまうのは、継時培養の際などに不都合であるから、上記の方法はあまり試料されていないのかもしれない。

A:ここで考慮されていない重要なポイントは、長い光路長の光電子増倍管と遠い側は、当然ながら光電子増倍管との距離が大きくなるという点です。単に試料溶液がたくさん必要だというだけでなく、光電子増倍管に到達するセルBの試料からの散乱光は、同じ試料を5倍に濃縮してセルAの方へ入れた場合に比べて、大きく減ってしまいます。これが、実際には光路長の長いセルが散乱試料の測定に用いられない大きな理由でしょう。


Q:今回授業で教わった懸濁試料測定に基づき、考案した測定手法について記す。前提として、大きさの違う粒子AとB(大きさはA>B)が溶液に入っているとする。溶液の懸濁物質がAとBのみであることは分かっている前提で、AとBがどの程度の割合で含まれているかを測定する方法を考える。例えばAとBの割合の異なる2種類の溶液を比較する際に、含まれている割合がA>Bのものをα溶液、B>Aのものをβ溶液とする。今回の授業から、吸収(A)=log(Io/Is+p*Id) の関係式のうち、濃い溶液を使うとIsが小さくなることが分かっている。また、“粒径が小さい場合Rayleigh 散乱に近い偏光特性を示すが、粒子径が大きくなるとこの特性は失われる”[1] という記述がある。ここから、濃度を数種類かに分けてα溶液・β溶液を測定すると、各々の濃度下において散乱を起こす粒子の数は異なっているので、Isの値は変化するはずである。この変化とは具体的に、α溶液の高濃度下で最もIsが低く、β溶液の低濃度下で最もIsが高いというものである。そこで生じるスペクトルの変化を元に関係性を得られると仮定でき、溶液内のAとBが存在する割合を推定することができると考えられる。また、効率的な実験を行うための方法として、 ①上記の結果からオパールグラスで測定した結果を引く ②積分球で測定した結果から上記の結果を引く 2つの方法が考えられる。
[1] S. Yamagishi, T. Murayama ,Tokyo University of Marine Science and Technology ,Depolarization measurements of light backscattering polarization in turbid media

Q:もう少し説明の仕方を工夫した方がよいでしょう。自分の頭の中の論理の展開をそのまま書くのではなく、その論理が人から見た時にどのように見えるかを意識すると、わかりやすい文章になります。このレポートの場合、Rayleigh散乱の部分が、その後のどこに役立つのかが読み取れません。引用部分は、「偏光特性」についての記述であると考えられますが、その後に出てくるのはIsの話で、偏光の話は出てきません。このようなギャップをなくすようにレポートを再構成した方がよいでしょう。