植物生理生化学特論 第8回講義

光化学系量比調節

第8回の講義では、2つの光化学系の量比調節のメカニズムについて解説しました。


Q:研究室内で小進化が起こっているという話がとても興味深かった。私はシアノバクテリアを扱っていないが、以前ヒト細胞株を培養していた。培養環境(10% FCS DMEM)というのは、自然な状態からは程遠いだろう。細胞株の場合なので、微生物のようには進化のスピードは速くないだろうが、培養環境に順化し遺伝子の発現レベルの変化が起こることはあるのだろうかと思った。また、実験を行っていく上で、観察の大切さを改めて感じた。

A:そうですね。自分の実験材料をよく観察するというのは、ある意味で生物の研究の一番重要な部分かもしれません。


Q:品種改良によりイネの光合成能力を高めても収量が上がらないということだったが、光合成能力が高いとはすなわち葉等の同化器官が大きいということだから、植物全体としてそれらの維持に無駄にエネルギーを消費するためだと考えられる。そのため一草本当たりではなく一細胞当たりの光合成能力を高めることができれば作物の収量は向上すると考えられる。

A:講義で説明したのは「光合成能力を高めても収量が上がらない」ではなく、「光合成能力を高めて収量が上がった実用例はない」です。もし、変異により「一細胞当たりの光合成能力を高めることができ」るのであれば、なぜ進化の過程でその変異が選択されなかったのかを考えてほしい、というのが講義で伝えたかったことです。


Q:今回の授業で興味深かったのはシアノバクテリアの変異株と野生株の強光下における呼吸速度の違いだった。短期的にみると、変異株の方が強光下での光合成低下率は低い。しかし長期的に強光環境にさらされた場合、変異株の呼吸速度は大きく低下した。一方で、野生株の方はほとんど変化しなかった。理由として、野生株では光化学系Ⅰを減らすことによって光合成効率を改善しているからであるとの説明があった。そのしくみについてもう少し考察してみた。変異株では光化学系Ⅰを減らさないため、系Ⅱの量比も多いままになる。そうすると系Ⅱは過還元状態になり、活性酸素の蓄積によって生育速度が下がってきてしまっているのではないかと考えられる。しかし、変異型では長期的に徐々に生育速度が落ちていっている。おそらく野生型でも光阻害が起きていると思われるが、その回復と光阻害の影響の割合が釣り合っているから、同じ生育速度を保つことができ、変異型では回復よりも阻害の影響が大きいから生育速度が下がっているのではないかと考えた。

A:まず、「呼吸速度」ではなく「光合成速度」です。この変異株においては、短期的には生育がよく、長期的には生育が悪いので、おそらく生育期間が長くなると何か生育に悪影響を及ぼすものが蓄積していく可能性が高いのではないかと思います。その場合、活性酸素により酸化された膜脂質などが候補として考えられます。


Q:講義の中で『進化』について触れられていたと思います。生物は世代交代を長い間繰り返していき、突然変異を起こしながら形質を変えていき、適者の生存と不適者の淘汰によって洗練されて今の形態がある。つまり、現在の環境に最も適した形態が今の動植物であり、遺伝子組み換えなどでそこに人工的に手を加えても自然以上のものにはならない。しかし野生型では生育できない環境に分布を伸ばす、あるいは環境を人の手で調節できる屋内プラントなど、別の環境に適したものを創ることは有意義なものではないかと考えます。

A:講義の論旨をなぞった形になっていますね。もう少し自分の考えが表に出たレポートになるとよいでしょう。


Q:適応度と品種改良にについて考察した。人工の土地では植物間で日光を遮断しあわない。そのため背の低いイネに品種改良する。これは風で倒れないことで収穫量を増やすためである。また北の土地では温度耐性のあるイネに品種改良する。品種改良には多様な方法があるが、例えば収穫量を増やすイネを栽培するには、土地に適応したイネを選別していく。品種改良は環境に適応させた結果だと考えた。

A:これも考え方はよいと思うのですが、ややありきたりですね。その人の独自の考えが何かほしい所です。