植物生理生化学特論 第6回講義

ゲノムワイドな遺伝子機能解析

第6回の講義では、クロロフィル蛍光を用いて、ゲノムワイドに遺伝子機能解析を目指す研究について紹介しました。難しかったのか、話した内容とは直接関係のないレポートがだいぶ寄せられましたが、ピントの合ったレポートだけ以下に載せておきます。


Q:今回の授業で気になったキーワードはポストゲノムという言葉だった。博物学から生化学、ゲノム科学と生物を普遍化する流れから、ユニークな生物たちの表現型の違いの解析という多様性を重要視する流れになってきているとのことだった。生物の遺伝子の発現はおそらくその生物がさらされているさまざま環境要因に大きく影響されるはずなので、4次元以上の高次元の捉え方も必要になってくる場合もあるのではないだろうか。しかし考慮する要素をむやみに増やしてしまうと解析が複雑になってしまうため、取り扱う次元を厳選する必要がある。さらに表現型を制御しているのはDNA配列のみでなく、エピジェネティックな制御も働いているはずなので、表現型の解析にはエピジェネティクスの観点も重要になってくるだろう。

A:今回お話ししたのは遺伝子の機能を調べようというプロジェクトで、表現型の解析はあくまで手段です。一方、それ以外の生命機能を調べよう、という場合にはもちろんエピジェネティックな観点も必要になるでしょうね。


Q:まず,深度により棲みわけをおこなうProchlorococcus marinusについてです.環境によって種が違うという観点でゲノム情報を比較するということがあるとのことでしたが,まずゲノムの比較ではSNIP解析を行うということでよろしかったでしょうか? またmRNAのマイクロアレイ解析やプロテオミクス解析が行われているか?ということに気になりました.そうするとどの遺伝子の発現が違う,さらに働いている蛋白質の発現の差異によりさらに詳細にフェノタイプの解析ができると考えます.
 さらに,シアノバクテリアを強光にさらしてPSIIとPSIの差異を見るというお話で,強光によりPSIの発現が落ちるというデータがありましたが,気になったこととして強光に曝露する以前にPSIIとPSIの発現に差があったことです.自然の状態で飼育しているとPSIIとPSIは同程度の発現を示すはずではないのか?と考えました.その答えとしてはPSIIの効率はPSIよりも良いということはないか?と考えました.

A:Prochlorococcusの場合は、同じ種といってもエコタイプが違うので、SNIPというよりはだいぶ差が大きいのではないかと思います。ただ、配列に差がある部分に注目するという意味ではその通りです。PSIとPSIIについては、光合成特有の問題があります。ある条件でPSIとPSIIが同じ活性をもつように調節したとしても、例えば光の強さが変わるとバランスが崩れてしまいます。単純な酵素活性などとは異なり、極めて多くの環境要因に依存して活性が変化するため、単に量を見るだけではバランスがとれているかどうかわからないのです。