生物学通論 第9回講義

遺伝子組換え作物

第9回の講義では、遺伝子組換え作物の現状と問題点を紹介しました。今回のレポートを見ると、講義を聞いた後でもまだ色々誤解があるようですね。


Q:遺伝子組み換え自体は自然にも行われていることと言うのは納得出来たが、その速度に問題があるのではないだろうか?と考えた。自然の進化よりも桁違いのスピードで突然変異が起きてしまうので、そこに大きなリスクがあり、注目すべきなのではないかと思った。自分なりに解決方法を考えてみたが、どうしても物理的なものに頼るしかないと言う結論になった。授業で述べていた、物理的なことの無意味さも納得は出来たが、あくまでそれがないことを前提に拡散しないような「物理的に隔離された小さな世界」を作って実験すること以外に解決方法はないと思った。つまり、そこに上述のようなリスクが存在する以上は隔離した世界でやる以外に最善の方法がない。極論になってしまうが、実験自体は宇宙でしかやらないとか。そもそも生物的な拡散防止が大切とは言っても、それも不確定要素が多いと思う。例えば、野生生物の競争関係はある一つの側面で決まるわけではなく、たくさんの要因があって決まる。物理的なことより生物的な拡散防止の方が重要とは言えないと思う。

A:遺伝子組換えの実験自体は、小さな規模で専門家がやることが多いので、リスク管理に比較的問題を生じません。しかし、その結果得られた組換え作物の商業的栽培は、規模も大きくなりますし、農家がやるので、必ずしも専門的な知識を持っているとは限りません。なんとなく「実験」が危ない、という感覚があるのかもしれませんが、今問題となっているのは、組換え実験というよりは、組替えた結果である作物の栽培をどこまで許容するか、という問題なのです。


Q:前回の講義で私が特に興味を惹かれた内容は、遺伝子組み換えによる発がん性(毒性)の変化についてだった。講義の内容から、ただ遺伝子組み換えがなされた食べものというだけでその食べものが発がん性を持つという解釈は少しずれているということが理解できた。しかし、例えば何か遺伝子組み換えがなされた食べものがあったとして、その遺伝子組み換えによってどの程度発がん性リスクが高まったのか、逆に発がん性リスクを減少させる食べものがどれだけ入っているのか、などを詳しく知ることは一般の人にとってはすぐにできることではない。発がん性物質がどのようなメカニズムで我々の体に影響を及ぼすのかなどがわからないので具体的に良い案は考え付かないが、例えば過去の発がん性物質による発がんのデータから発がん性リスクを数値化して一つ一つの食べものの発がん性パラメータのようなものを表示させられることができれば、誰にとってもわかりやすい良い指標になるのではないだろうか。

A:「遺伝子組み換えがなされた食べものというだけでその食べものが発がん性を持つという解釈は少しずれている」という部分、ずれは「少し」ではなく、「すごく」ずれています。遺伝子の組換え自体は自然にも起こることですから、特に発がん性に関連する操作ではありません。しかし、組換えによって生物が変化している以上、発がん性物質が生じる可能性はゼロではありませんが、それは自然の組換えでも同じことです。


Q:今回の講義を聞き、"遺伝子の組み換えは自体は自然にも起きていることであるから、遺伝子の組み換えが自然に反しているというのはナンセンス"というトピックについて考えた。自然の状態であっても、遺伝子組み換えは起こることであるから、これが自然に反しているということはナンセンスであることは当然である。しかし、人工的な遺伝子組み換えと自然的な遺伝子組み換えは、区別をつけるべきなのではないかと考える。この講義を受けるまでは、遺伝子の組み換えとは、人間が手を加えなければ起こりえないものだと勘違いをしていた。したがって、買い物等をする際も遺伝子組み換えという単語を目にすると"人が手を加えたのか、では人の都合の良いように組み換えただけであろうから、リスクが必ずしもないとは考えにくいな"と考えていた。もちろん、自然のままであるものがリスクを必ず持たないと断言することはできないが、印象の問題で信頼性に疑問を抱いてしまうこともあった。授業中に出てきたグラフや産業の状態をニュースなどを見ても、遺伝子組み換え食品に絶対的な信頼を持てる人は少ないように思う。遺伝子組み換えの商品の印象をよくするためには、遺伝子組み換えは、自然にも起こりうるのだということを広告などで宣伝しつつ、人工的な遺伝子組み換えも自然の遺伝子組み換えに極力近づくようにおこなったと宣伝をすれば、遺伝子組み換え食品に対する人の不安感は少々改善されるように考えた。生物的内容ではなく商業的な話になってしまったが、信頼感を増すための手段として、あえて自然と人工の区別をつける必要性があると考えた。

A:「宣伝」あるいは「広告」とありますが、僕が講義の中で求めたのは、教育学部を卒業する以上、一定の科学的リテラシーをもって、例えば誰かに遺伝子組換え作物の安全性について聞かれた時、科学的に妥当な返事ができるようになってほしい、ということです。科学的に十分事実を理解した上でなら、感情的に遺伝子組換えに不安を持つ人がいても、それは全く構わないと思います。僕だって、イモムシに触ったからといって悪いことが起こるわけではないと理解した上で、やっぱりイモムシには触りたくないので。


Q:今回の講義では、品種改良と遺伝子組み換えについて学んだ。遺伝子組み換えについて、安易に、毒性がある、生態学的影響があるなどと否定するのではなく、リスクと利点を比較した上で考えるべきだと思った。そこで、遺伝子組み換えに関することで個人的に肯定的であったバイオ燃料について考えてみたい。バイオ燃料は遺伝子組み換えを行ったサトウキビや大豆を使い、エタノールやバイオディーゼルを作る。メリットとして、燃料に依存しない持続可能なエネルギー源であることや、原料となる植物が光合成により二酸化炭素を吸収するため、燃焼させても二酸化炭素は増加しないとみなされている。ことなどがある。一方デメリットとして、遺伝子組み換え農業では大量の化学肥料や農薬の使用が前提となっているため、化学肥料を作るには大量の天然ガスが、農薬には石油が必要となる。つまり、化学燃料を多量に使うことになる。このように、メリットもデメリットも存在し、賛否し難いが、今後デメリットを改善していくであろうから、研究は進んでいってほしい。

A:「遺伝子組み換え農業では大量の化学肥料や農薬の使用が前提となっている」というのは、勘違いです。農家は、除草や農薬の使用の手間が省けるから遺伝子組換え作物を使うのであって、もし「大量の化学肥料や農薬」が必要なら、誰も栽培しないでしょう。むしろ農薬の使用量などを減らせることこそがメリットなのです。


Q:今回の講義で学んだ遺伝子組み換えのリスクについて、物理的拡散の可能性を限りなく少なくする方法として、たとえ発生自体は完璧にコントロールできたとしても、生物的な増殖をコントロールすることは自然界では厳しい。また、遺伝子組み換えは品種改良よりも構造的な自由度が高いので、品種改良で安全性の確認できたメリットを目指して密閉空間で生成し、その中での増殖テストを行うことが必要である。

A:レポートという以前に日本語にやや問題があります。レポートを書いたら、一度読み直して推敲する習慣をつけるとよいでしょう。


Q:今回の講義では遺伝子組み換えについて扱い、その中で遺伝子組み換え食品は安全なのかどうかについて触れました。講義を聞き、遺伝子組み換えによる食品に真っ向から不安を持つことは間違ったことである。とありました。一般に遺伝子組み換えは常に人工的なものであり、また、害虫対策に重きを置いているため、人体には何らかの影響をもたらす可能性があるのではないかと考えられることが多いだろうと私は考えていたので、遺伝子組み換えについて知っておくべきことを知ることができました。重要なこととして、遺伝子組み換えによって生じるメリット、デメリットを比較すること、とありました。遺伝子操作よってできる農作物は天然ではない、というところのみに目が行き、やはり天然のものの方が上位、と容易に判断されがちですが、メリットとして、たとえば、野生のものと比べ、毒素の含有量が少ない点などがあるように、講義内でもあったように、人体に害を及ぼすリスクを定性的に分析し、判断することが大事だと思いました。広告などでは天然の植物からなる食品を推すものが多く見受けられますが、偏った箇所のみに注目するのではなく、もっと多くの視点から検討することが大事だと思います。

A:毒素の話の部分は、一般的な品種改良の話とごっちゃになっていますね。全体として意見を述べる文章になっていますが、この講義のレポートとして求められているのは、評論ではなく、独自の論理展開です。


Q:今回は遺伝子の組み換え方法と、制限酵素、PCR、遺伝子組み換え植物について習いました。遺伝子組み換え植物のリスクのところで、拡散による生態系への悪影響が問題視されていました。僕は、ここで、遺伝子組み換え植物には生殖機能があるのか、ということを疑問に思いました。動物で人為的な交雑によって多様性を生み出そうとすると、その雑種は生殖機能を持たないことが多いと思います。例として、「ラバ」や「ライガー」、「レオポン」などです。なので、遺伝子に何らかの急激な変化があると、生殖機能に異常をきたすことが多いのだと思いました。
 しかし、制限酵素でDNAを切断する際に、変にたくさんのところで切断してしまうと、そのDNA自体に悪影響がでると思います。なので、その際に、必要最低限の部分だけを切断し、DNAそのものへの影響を最低限にして、生産していると思います。よって、必要なところのみを切断するため、生殖機能に関わるDNAはそのまま保たれているのではないでしょうか。もし、制限酵素で生殖機能に関わる塩基配列を切断できるようになれば、生態系への悪影響は考えなくてすむのではないでしょうか。
 また、品種改良のところを考えると、「①単純な選抜による品種改良」「②交雑による品種改良」「③放射線照射による品種改良」「④同種生物の遺伝子導入による品種改良」「⑤異種生物の遺伝子導入による品種改良」の5つがありました。①番は同じ種類の優秀な品種を掛け合わせているので、生殖機能があるのは当たり前です。②番が主に上記の問題にあたるとことです。近しい品種を掛け合わせても動物だと生殖機能は失われてしまうことが多いです。②番の方法で品種改良したものは生殖機能がないのではないでしょうか。もしくは、動物と植物との違いにより、生殖機能が保持されるのかもしれません。②番の方法で育てた植物をもとの親の両方の植物と交配を試みることで生殖機能の有無が分かると思います。③番は放射線照射の際に、生殖にかかわる遺伝子が傷つかなければ生殖機能を持ちそうです。同種の植物と交配させれば、生殖機能があるのかないのかわかると思います。④番は上記の通り、制限酵素で切断する際に生殖機能に関係のない部分だけを切断すれば、生殖機能は保たれます。⑤番も④番と同じで生殖機能に関係のない部分に他種の塩基配列を紛れ込ませても、生殖機能は保たれるのかもしれません。このように、生殖機能が残る可能性があるので、生態系への影響を考慮しなければいけなくなったのでしょう。

A:拡散防止を生殖機能と絡めて考察していて非常に良いと思います。一般論としては、同じ種の別の品種など、近縁のものをかけ合わせても生殖機能は保持されますが、違う種の場合のように縁が遠いと、子孫を残せなくなります。話は少しそれますが、花粉症対策として花粉をつけない杉が栽培されるようになってきています。花粉ができないと当然子孫を残せませんから、たくさん栽培しようとすると人間が栄養生殖で増やしてやる必要があります。


Q:組み換えDNAの学習をし、組み換えDNAによる植物とそれと同じ種の自然界にある植物ではどちらが生き延びるのか考えてみました。組み換えDNAによる植物を今回は人工植物、自然界にある植物を天然植物とする。人工植物と天然植物の植えた面積は同じとします。人工植物は除草剤などに強いが余分なものも作っているため生育が天然植物に比べて遅い。食べ物や絹などは実や葉が成長していないと収穫できないため天然植物のほうが人工植物よりもある一定の期間では多くできる。ビニールハウスなどの季節に関係なく栽培できるところでは天然植物のほうが収穫できる回数が多い。また天然植物のほうが種になる可能性が大きい。そしてほとんどの確率で、他の種の花粉が飛んでくることや、他の種が混ざって発芽することも少ないため、天然植物のほうが交雑などを多くして、多様になり生き延びる可能性が高いと思う。
 しかし、屋外などでは温度や湿度などの気候に左右されるため人工植物と天然植物のできる数は変わらないと思う。ここで除草剤などに強い人工植物は除草剤などをまくことによってほかの草に養分を取られたり、虫に食べられたりすることが減るため、天然植物よりも多くできる。そのため屋外では人工植物のほうが種になる可能性が大きい。しかし、人工植物は種類がとても少ないため、病気などが起こればすぐに死んでしまう可能性が高い。それに対して天然植物は多様なため強くない病気などでは生き延びることも多い。ではとても大切な次の世代を育てるという視点では、外来種のように人工植物が天然植物を飲み込んでしまうと思う。というのも組み換えているときにほかの植物に負けないようにしているため、天然植物よりも形質の現れ方などで優勢になるのではと思ったからです。
 以上から組み換えDNAによる植物と自然界にある植物とではビニールハウスなどの人間の手で調整できる場所では自然界にある植物で、それ以外のところでは組み換えDNAによってできた植物が生き延びるのではないかと思います。

A:特に後半、多様性の利点まで議論していて素晴らしいと思います。実際には、遺伝子組換え生物といっても、除草剤耐性や、病害虫耐性など、それぞれ異なる性質を持っていますから、一般論だけで議論するのは大変かもしれませんね。