生物学通論 第5回講義

細胞とオルガネラ・葉緑体の起源

第5回の講義では、細胞の定義について考えたのち、細胞内共生によるオルガネラの出現について紹介しました。


Q:今回の講義で興味を惹かれたのは、真核生物はオルガネラを持つのに対して、原核生物がオルガネラをもたなくていい理由だった。最終的な結論は体積当たりに反応できる表面積を稼ぐためや、あらゆる反応に同時に対応できるような状態を造るためというものだった。では例えば体が大きい人間と体の小さい人間がいたとする。人間の細胞の数が決まっているものだと仮定すると、体の大きい人間は小さい人間よりも多くのオルガネラを持っていなければ生体膜の表面積を補えないということになる。人間の細胞の数は決まっておらず、体の大きい人が細胞の数をただ多く持っているのだと仮定すると、同世代の人で体の大きい人は体の小さい人たちより細胞を多く持っていなければならないのだから、細胞分裂の周期が早いのだと考えられる。

A:面白い点に目をつけたと思います。せっかく2つの可能性を考えたのですから、適当な議論をもとに、どちらかを結論とした方がレポートらしくなると思います。その結論が、知識として正しいかどうかは、この講義のレポートでは問われません。


Q:今回の講義では、オルガネラについて興味を持ちました。そして、真核生物の特徴として挙げられるオルガネラはなぜ誕生したのか疑問に思いました。生体の膜は生存に不可欠な様々な生化学反応が行われる場ですが、巨大化した真核細胞では細胞膜だけでは膜の絶対面積が不十分であり、膜の増加が必要となります。そのため、原核細胞から真核細胞へ移行する過程で細胞膜が特殊化したり、他の原核細胞が寄生したりして生じたと考えられるのではないでしょうか。つまり今後も、真核生物の進化とともに、新しいオルガネラが誕生してくるのではないでしょうか。

A:講義での説明をなぞっているので、レポートとしての独自性に欠けますね。自分なりの「論理」がこの講義のレポートでは求められます。


Q:今回の講義では生物の定義から学習していったが、DNAを持っているものが生物、としてもいいのではないか、と思ったがウイルスがDNAを持っている、というところで定義としては不完全であるという結論に達した。だが、ウイルスはなぜ存在するのか、というところに疑問がある。DNA自身が生物としてあるかないか関係なしに増殖を行う性質があるのかもしれない。DNAが必要に応じて小器官を作るように指示し、生物の定義をみたしたものが生物になった、と考えることもできる。

A:面白そうなのですが、論理の展開が弱いですね。別に長い必要はないですが、やはり4文だけでは論理をきちんと展開するのは難しいと思います。


Q:今回の授業では細胞とオルガネラについて扱いました。ウイルスは細胞を持たず動かないため生物とは言えない。しかし生物の定義である自己増殖力を持つ。といった点からウイルスはどのようなものと考えればよいか疑問に思いました。ここでウイルスの自己増殖に焦点を当てて考えたいと思います。ウイルスは対象となる細胞と接するとウイルス内にあるDNAを細胞に送り込みます。この対象の細胞内に入ったDNAは増殖を繰り返し、細胞内のタンパク質とともに新たなウイルスを作り出します。この新しいウイルスがまた細胞とくっつき増殖を繰り返していく。このようにしてウイルスは増殖していくので自己増殖力をもつと考えられそうですが、ウイルスは他の生物の細胞を媒体として増殖していくので、果たして自己増殖力と判断してよいのか難しい点だと思います。仮に、このように他の生物の細胞を媒体とすることで増殖することを自己増殖力ではないとすると、ウイルスは生物の定義から外れます。ではウイルスを生物ではないとしたときにその増殖力をどう評価すればいいのか疑問に思い、あるいはウイルスは’生物’と’生物以外’に当てはまらず新しいカテゴリとしてあってよいのではないかと考えました。

A:自分なりの結論を導いていてよいと思います。このように自分の頭で考えることが大事です。


Q:なぜ植物に細胞壁は存在するが、動物には存在しないのか?調べてみると、細胞壁は細胞の形を支え保護する働き,また,植物細胞の成長に伴って生じる老廃物の貯蔵場所としての働きをもっているとわかった。例えば,ベンゼン系の有害物質は,リグニンという無害な物質に変えられ細胞壁に沈着される。一方,動物は,細胞内で生じた老廃物(有害物質)を,血液で肝臓に運び,分解・無毒化し腎臓を経て尿として排出する。従って,細胞壁は、血液や肝臓をもたない植物の細胞内の老廃物の処理場としての役割があるのではないかと考えた。動物の場合、尿として排出できるのでそれがいらないから自然に退化していったという論理である。ただし、細胞壁に沈着したあとはどのようになるのか、おそらく植物の代謝機能によって最終的には分解されるのではないかと思われるが、深い考察はできなかった。

A:面白い考えでよいと思います。一つだけ注意しなくてはならないのは、細胞壁は細胞膜の外側、すなわち細胞の外にあるという点です。いわば体外ですから、代謝機能によって分解するのは難しい代りに、細胞にそれほど害も及ぼさないでしょう。


Q:今回の授業では、細胞小器官について勉強しました。細胞小器官が真核生物にできた意義、植物の葉緑体、動植物のミトコンドリアの共生説、その根拠の二重膜等を習いました。葉緑体もミトコンドリアも、遺伝情報は同種なら同じで母性遺伝すると聞いたことがあります。自分は共生説を改めて考えたとき、疑問に思いました。ミトコンドリア、葉緑体が元々、別の生物なら何故、1つの受精卵から別の生物が共に作られるのでしょう?1個体を形成する時に1つの受精卵が対応するのだと考えていました。しかし、共生説を考えると受精卵から全く別の生物も生まれることになります。この仕組みが自分には理解できません。授業で取り扱った「はてな」という生物は分裂する際に、片方は葉緑体が含まれなくなるとならいました。元々が別の生物ならその方が自然だと思います。自分なりに、葉緑体やミトコンドリアが遺伝する理由を考えると、今の植物には葉緑体が、動物にはミトコンドリアが不可欠であり、それに頼った成長の仕方をしているうちにどうしても遺伝させ、はじめからそなわっている状況にしなければいけなくなったと考えられます。また、その仕組みを考えると、雌性配偶子上に葉緑体・ミトコンドリアの遺伝情報がそもそも備わっているだろうと思いました。母性遺伝と言われている事から、雄性配偶子に葉緑体・ミトコンドリアの遺伝情報は存在しないと考えられると思います。雄性配偶子にも遺伝情報があれば、それと雌性配偶子上の遺伝情報が合わさってしまい、多様性が出てきてしまいます。そうなると、形や働きなどに差異が出てきてしまい、生きるために必要な働きをしてくれないものがでてきてしまうかもしれません。なので、減数分裂をしていないと考えられます。なので、授業で行った「ウィルス」のように、あるDNAの情報だけが存在し、それが、他の生物の助けを借りて、増殖していくものと考えます。「ウィルス」が機械的に反応し宿主へDNAを注入すると説明がありましたが、葉緑体・ミトコンドリアも機械的に反応して、葉緑体は光合成、ミトコンドリアはATPの合成を行っていると思いました。まとめると、葉緑体・ミトコンドリアの遺伝の仕組みは、雌性配偶子の遺伝情報の一部に葉緑体・ミトコンドリアの遺伝情報が存在し、「ウィルス」と同じように他の生物の力を借りて、その遺伝情報を伝えているのだと思いました。

A:これは、よく考えていますね。母性遺伝のメカニズムとしては、雄性配偶子由来のDNAが選択的に分解される例が知られています。しかし、このレポートでは、そのような知識は求めていませんから、自分が探し当てた情報から自分の論理で導き出した「雄性配偶子に葉緑体・ミトコンドリアの遺伝情報は存在しない」という結論は、むしろ高く評価されます。


Q:今回は細胞内のことについて学びました。私の印象に残っていることはオルガネラについてです。そのため今回は植物内のオルガネラと細胞の存在場所について考えたいと思います。それぞれのオルガネラはそれぞれ適切なpH、塩分濃度などの条件が違うため根の部分と茎と葉の先では細胞内にあるオルガネラの大きさが異なるのではないかと思います。根は肥料や土から栄養をもらうためN,P,Kなどの濃度が高いときに働くオルガネラが面積的に大きく、日が当たらないため葉緑体などはほとんどないか小さいと思う。また茎では根からもらう要素を使う細胞と日が当たるため葉緑体などの細胞も同等位あると思う。最後に葉の先では根からもらう要素が少ないためそのような細胞は小さく、日が当たり光合成を活発にするため葉緑体などの細胞は大きくなるもしくはたくさんあるのではないかと思う。以上のことから細胞は存在場所によってそれぞれのオルガネラの大きさが違うと思います。

A:これも、面白い点に着目しています。ここで述べられた予想とは少し異なりますが、葉緑体などは、実際には場所によってその形や機能が全く異なることが知られています。葉には葉緑体がありますが、日の当らないもやしの場合は、エチオプラストという別の形のものに変化します。


Q:核の他にミトコンドリアと葉緑体だけが独自のDNAを持ち、そのことから、ミトコンドリアと葉緑体は核と同様に独自に進化を遂げて、細胞内共生説が生まれたという説明があった。つまり、ミトコンドリアや葉緑体は、今後も進化する可能性があり、それに伴いミトコンドリアや葉緑体の量や構造が変化すると考えられる。ミトコンドリアは呼吸に関わる、葉緑体は光合成に関わる細胞小器官であるため、呼吸の機能や光合成の機能が独自に進化することもありえる。さらに真核生物は、ミトコンドリアや葉緑体の量や構造が、細胞一つ一つで異なり、それぞれの細胞で機能的な特徴をもつことができると考えられる。人で例えるならば、走ることによって、呼吸をするために必要なミトコンドリアの量が、体細胞分裂によって自動的に増えていくことができ、肺などの呼吸に関わる器官には多くなるのではないかと考えている。

A:面白いと思います。最後のところ、肺とミトコンドリアの関係は直接はないのです。ミトコンドリアが関わるのは細胞呼吸(あるいは内呼吸)であって、肺の関わる外呼吸とはレベルが違いますから。呼吸については、講義の後半で取り上げます。