生物学通論 第12回講義

光合成の炭素同化

第12回の講義では、カルビン・ベンソン回路に代表される光合成の炭素同化の仕組みについて紹介しました。


Q:干拓した土地には塩に強い綿を植えるらしいが、今回出てきたアイスプラントを植えるのはどうかと考えた。実際、東日本大震災の被災地では東北コットンプロジェクトといわれる、津波によって土壌の塩分濃度が上がった土地に、綿を植えることで問題を解消しようとする動きがある。アイスプラントは生活環が半年と比較的短いのでこっちの方が適しているのでは?と考えた。加えて、アイスプラントは普通の植物よりも重金属などを蓄積しやすいので、ますます被災地に適しているのではないかと考えたが、それでは食べられなくなるので、綿の方がいいのかもしれない。

A:もう少し考察が欲しいですね。CAM植物の問題点は生育速度が遅いところです。アイスプラントの場合は、塩濃度があがることによってCAM化しますが、逆にいえば、初めはCAM化しない状態で育てることができますから、その間は生育速度を上げることができます。最初から塩ストレスが加わっていると、商業的には厳しいかもしれませんね。


Q:今回の授業では、光合成における暗反応と呼ばれていた炭素同化についての内容だった。今回の内容で私が最も興味を惹かれたのはルビスコについてなのでこれについて議論していこうと思う。ルビスコは正式名称がリブロース2-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼでRuBPと二酸化炭素/酸素の反応の触媒の役割を果たす。だが、ルビスコの二酸化炭素固定速度はタンパク質あたりで見ると極めて遅い。二酸化炭素との親和性も他の酵素の基質に対する親和性に比べると低く、基質回転速度をみても極めて低い方である(光合成の森 FAQより)。さらにルビスコは酸素との反応で毒性の物質を生成する。これらのことから、明らかに効率が悪く、改良の余地が多く見られるルビスコだが、なぜ30数億年前から出現しながら、周囲の環境の二酸化炭素と酸素の比が変わるのに沿って進化できなかったのか。それはおそらく、ルビスコ自身の分子量の巨大さ(分子量544000)とその存在量の多さが理由だと考えられる。進化は自然選択の原理から誤差レベルの変異や違いが個体数の割合を徐々に大部分を占めていくことで行われる。しかし、これだけの巨大さを持ち、存在量が多い分子だとその誤差レベルの変異がかき消されてしまうのではないだろうか。

A:面白い考え方です。ただ、次回の進化のところで紹介しますが、進化の際に変異するのはDNAでタンパク質ではありません。ルビスコの量がいかに多くても、そのもとになるDNAは細胞の染色体の一か所にあるだけです。それが変異してしまえば、すべてのルビスコの性質が変わることになります。


Q:今回の講義を聞き考えたことは、ルビスコが二酸化炭素との反応に非常に富んでいた場合どのようなことがおこりうるのかということである。ルビスコは、現在までに様々な進化をとげており、二酸化炭素固定に大いにかかわり貢献してきたタンパク質である。しかし、反応性が極めて低いため、葉緑体内などに存在する数は膨大であるが、効率の悪いタンパク質であるということができる。ではもし、ルビスコの反応性が、環境の変化(二酸化炭素の減少)に対応する能力が存在していた場合どのようなことが起こりうるか考えた。講義中でも述べられていたが、ルビスコは二酸化炭素の量が増えても反応性が低下してしまう。以上のの内容を考慮し、さらに前の講義でも取り上げたタンパク質合成の正確性の話を織りまぜると、まずタンパク質の合成の正確性は反応する量とも関係があると考えられるため、反応効率は高いが正確性は低いという環境下で二酸化炭素ではなく、たとえば窒素や酸素などを固定する反応が誤って大量に起こることも考えられる。このような反応では毒性の物質も合成されることは十分考えられる。さらに、二酸化炭素の量とも関係なく反応性が高い状態であれば、上記のような有害な反応を阻害する要素も乏しいため、有害な物質を大量に生成してしまうという悪循環が出来上がると考えられる。したがって、ルビスコの反応性が低いことは、必ずしも悪いことではなくリスクを下げる要因にもっていると考えることができ、反応効率が悪くとも現在まで存在できている理由であると考える。

A:「ルビスコは二酸化炭素の量が増えても反応性が低下してしまう」というのは、誤解を招く表現で、正確には、「二酸化炭素との親和性が高いルビスコは、最大活性が低い傾向にある」ということです。はじめ、そこの誤解が読み取れなかったのでレポートの意味が分からなかったのですが、最大活性を抑えているのは、親和性の低下による悪循環を回避するためである、という主張ですね。よく考えていると思います。


Q:今回は講義では光合成の炭素同化について学んだ。そこで、現在は明反応、暗反応という言葉は使われなくなっている。ということを知り興味を持った。明反応は光合成の最初の段階で、光のエネルギーを利用し、水を酸化して酸素にすると共に、炭素同化に必要なNADPHとATPをつくりだす過程である。暗反応は明反応で作られたATPとNADPHを用いて、二酸化炭素から種々の糖を合成する過程である。暗反応では光エネルギーは必要としない。一般的に電子伝達反応は明反応、カルビン回路の諸反応は暗反応となる。明反応と暗反応の違いをみると光エネルギーの必要の有無があがる。しかし電子伝達系の場合、2つの光化学系の間のシトクロムb6/f複合体の反応に、光は直接関与していない。また、名前は暗反応でも、カルビン回路は暗所では動かない。以上のことから、明反応・暗反応という言葉はあまり適切ではないと判断されたのではないだろうか。

A:別に悪くはないですが、これは講義で話したことそのままですよね。この講義では、自分の独自の論理を評価しますから、これでは評価の対象にはなりません。


Q:今回の講義は炭素同化についてのものでその中でルビスコというタンパク質について扱いました。私はこの講義で初めてこのルビスコについて知り、興味を持ったので、これについて取り扱いたいと思いました。ルビスコの炭素固定での役割に関する中で、その非効率さが顕著に現れていました。通常の酵素が毎秒に1000個ほどの分子を処理する中、ルビスコは毎秒に3個のCO2を固定するのみ、とその動作は非常に遅くありました。この非効率さを克服するために植物はルビスコの数を増やすという対策をとりましたが、H2OとCO2の反応に誤りを生じさせ、植物は多くのH2Oを必要とするものになった。という植物誕生の背景に納得させられました。ルビスコの短所を改善するために、より効率のよい酵素、つまり毎秒あたりに固定できるCO2の量がより多い酵素が発見されれば、植物中でのその酵素の必要数も少なくなり、H2OとCO2を誤って反応するリスクも減り、やがて必要とする水分の量が少なくなる植物が誕生する可能性があるのではないかと思いました。
一部参照:今日の分子(http://pdbj.org/mom?id=11)

A:ルビスコが間違える相手はH2Oではなく、酸素です。講義の中でも説明しましたし、参照しているページにも書いてありますよ。


Q:今回の授業では光合成の具体的な仕組みについて学習したが、その中で私が疑問に思ったことは、なぜケニアにおいて標高2000m以下の地域ではC4植物がほとんどなのに対し、逆に3000m以上の地域ではC3植物がほとんどになるのかということである。そこでC3植物とC4植物の光合成機構の違いについて調べてみた。違いを簡単にまとめると、C3植物はC4植物に比べてCO2補償点が高くかつこの値は温度とともに上昇するので、高温地域では、C3植物は成長速度が遅くなる可能性が高い。また、C3植物はC4植物に比べて水分使用率(光合成に利用する水/蒸散で失う水)が低いので、乾燥状態には適さない。つまり高温乾燥地域ではC4植物が生育しやすいことを意味する。一方で、C4経路はC3植物のそれに比べてATPが2分子余計に必要になるため、高温乾燥ではない地域ではC3植物が生育に有利ということになる。ケニアの気候は主に砂漠気候であり、地上付近は高温多湿である。そして海抜が高くなるほど低温になることは自明である。このことから授業で示されたようなC3植物とC4植物の分布比になることが説明でき、疑問が解消された。

A:僕としては、この辺りは簡単に説明したつもりだったのですが、きちんと調べていますし、僕が飛ばした点についても考えているので、よいと思います。


Q:今回は炭素同化、炭素同化に用いるルビスコ、炭素の使い方の異なるC3、C4植物について習いました。自分が疑問に思ったことは、C3、C4の両方を行き来する植物の、その行き来する利点です。どちらか一方にそろえた方が複雑な仕組みを作らなくて済むので、シンプルに出来るのであれば、そうしたほうが良いと思います。しかし、そうせずに両方になれるとういからには、何か利点があるはずです。そこで自分は気体の水温に対する溶解度に注目してみました。(引用・参照:理科年表オフィシャルサイト/https://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/buka/buka_012.html/2014年7月12日アクセス)
 もし、水草がC3植物だった場合、水温が高い夏場などは酸素と二酸化炭素の溶解度が(水温30℃の時→酸素:二酸化炭素=0.03:0.06=1:2)と近いので、ルビスコの酸素との反応も起こり易いと思います。なので、余分に光呼吸を行わなくてはいけなくなるので、効率が悪くなると思います。もし、水草がC4植物だった場合、水温が低い冬場などは酸素と二酸化炭素の溶解度が(水温5℃の時→酸素:二酸化炭素=0.05:0.10以上=1:2以上)となり、グラフの傾きから見るに、酸素の溶解度の3倍程度になると思われる。よって、酸素と二酸化炭素の溶解度が遠いので、普通の炭素同化でも二酸化炭素を多く利用でき酸素と反応することは少ないのに、二酸化炭素を維持する分、無駄なエネルギーを使ってしまっていると思います。上記より、C3とC4を行き来する水草は、水温が高く酸素と二酸化炭素の溶解度が近い夏場には、C4となり、酸素と反応することを防ぎ効率を良くし、水温が低く酸素と二酸化炭素の溶解度が遠い冬場には、C3となり二酸化炭素の維持にかかるエネルギーを抑えているのだと思いました。よって、光呼吸によるエネルギーの消費や、二酸化炭素の維持にかかるエネルギーの消費を抑えられるという利点があるのだと思いました。

A:これはよく考えていますね。単にデータを調べただけではなく、そのデータを基にきちんと考察していて素晴らしいと思います。ただ、僕の説明が不足でしたが、この水草は、空気中にも葉を展開することができて、その部分がC4型になります。従って、水温とは別の環境要因が働いていると考えることができます。とはいっても、ここでの考察の価値が減るものではありません。


Q:今回は、炭素同化について勉強しました。疑問に思ったことは、ルビスコを使った反応のところです。二酸化炭素の固定反応のときに触媒として使われるルビスコには反応が2つあり、不要物である2−ホスホグリコール酸ができる反応と、有機物ができる反応があり、一つ目のほうをなくすことはできないので反応を減らせるようにするにはどうしたらよいかを考えました。一つ目の反応は酸素と反応し、二つ目のほうは二酸化炭素と反応します。酸素と反応するほうを減らしたいので、二酸化炭素を吸収する光合成をしているときに、ルビスコを使った反応をすると、酸素と二酸化炭素の量の比が呼吸をしているときに比べると小さいと思うので(常に酸素のほうが多いとしています)、光合成時に反応するべきだと思います。また、2−ホスホグリコール酸が生成してしまってもそれと同じ量以上のPGAができるので、そのPGAが不要物の働きを阻害する力を発見するか、酸素との反応のところを可逆反応にする触媒を見つけることが良い策だと思います。ただ後のほうは今後の成長に委ねるしかないので、最初の光合成のときにこの反応を多くすべきだと思います。

A:これは、何やら面白そうなアイデアに基づいて考察をしていて、独自性があってよさそうなのですが、説明の日本語がやや言葉足らずですね。読んでいて、今一つポイントがつかめませんでした。もう少し、科学的な文章を書く練習をする必要があるかもしれません。


Q:大気組成の変動と酸素および二酸化炭素分圧のグラフを見るとルビスコは二酸化炭素が多い約35億年前に出現し、C4植物は酸素濃度が上昇している約2000万年前に出現したとなっている。また、C4植物は陸生植物が出現後、C3植物の進化の過程で二酸化炭素を蓄える機能を作ることで酸素濃度が高くても生きられる植物となる説明があった。グラフでは約3億年前に二酸化炭素の体積に対する酸素の体積の割合(以下O2/CO2)がピークとなっているが、この時までにC4植物に進化しなかったのだろうか。そのような疑問を抱いた理由は、これだけ急激にO2/CO2が変われば、生きられないC3植物が出てきてもおかしくないし、C4植物が進化した2000万年前よりも、3億年前の方がO2/CO2の変化が大きいためである。平野弘道ら(2008)によると、2億5200万年前に玄武岩質溶岩の大量噴出、2億100万年前に海洋無酸素事変、6600万年前に隕石の衝突により、生物の大量絶滅が起こっていると考えられている。陸上の乾燥したところで生活するC4植物にとって、これらのことは絶滅しうるイベントである。つまり、C4植物は3億年前に進化したが、絶滅してしまった可能性があったことを示唆する。6600万年以降、絶滅を起こす大きなイベントは起こっていないため、2000万年前に進化したC4植物は、現在も存在していると考えられる。
引用文献:平野弘道ら(2008):地球・環境・資源—地球と人類の共生をめざして—、pp111-116

A:これもよいレポートだと思います。地球科学的なデータに基づいて、生物の進化についてきちんと考察しています。C4植物は過去にも一度進化していたが、地球環境変動に伴う大量絶滅イベントにより絶滅してしまった、という仮説にはロマンもあります。