生物学通論 第4回講義

酵素とその働き

第4回の講義では、化学反応とそれを触媒する酵素について、酵素の反応の種類、触媒のメカニズムなどを中心に紹介しました。


Q:今回の講義では生体内での化学反応について学んだ。通常の化学反応において反応速度を早めたければ、加熱したり濃度を上げたり触媒を使ったりするが、動物の体の中で温度を上げることはできないため、触媒として酵素を利用している。講義では、このように解説があったが、私は、温度を上げる場合もあるのではないかと思った。たとえば風邪や病気で発熱したときは、体からウイルスなどを追い出す、または殺すような反応を速めているのではないか。また、たしか酵素が最もよく働く温度がそれぞれの酵素によって決まっていると聞いたことがあるので、風邪や病気で発熱したときにだけよく働くように、そういう酵素の一番活発な温度は体温より少し高いかもしれない。しかし、講義で言っていたように、生物は熱に弱い、ということで、熱そのものでウイルスなどを撃退しているのかもしれない。ただ、温度上昇とは言っても42度程度までしか上がらないので、6度程度以下の温度上昇で効果があるのかどうかはわからない。

A:確かに、発熱は悪いことだけではなく、防御反応の一環として捉える事ができるかもしれません。だから解熱剤を飲まないと宣言している人をたまに見かけます。ただ、同じ発熱でも、防御反応としての発熱と、体温調節機構が破綻しての発熱があるでしょうか、素人考えて薬を飲まなかったりするのは危険そうですね。


Q:今回は生体の酵素について学んだ。高校で習った基質特異性からさらに発展し、構造まで詳しく知ることができた。特に私が気になったのは酵素を比較する際に用いるKm値(最大反応速度の半分の速度を与える濃度)である。効率の良い酵素、すなわちKm値の低い酵素が優れていると先生は仰ったが、逆に"優秀でない"酵素も生体内には存在するだろうし、だとしたらなぜ生体が採用したのか疑問に思った。Km値の低い酵素を採用するということは、素早く触媒反応が進行しないほうがよい状況や器官において採用されているのだろう。ここで私は授業中に解説された酵素の働きの一つである「アロスティック効果によるネガティブフィードバック」に注目した。体内の反応をわざと抑制して一定に保つことが重要ならば、効率の悪い酵素は体内の反応を抑えるためにわざわざ採用しているということも十分に考えられるのではないか。しかし、単純に反応を阻害するだけならば酵素を使う必要がそもそもないはずである。恒常的にそれなりの反応は必要な器官であるはずだから、心臓や脳のような器官で採用されるのだろう。このような場合は、Km値の低い酵素の方がより優れた酵素であると言えるため、常に優秀な酵素など存在しない、というのが私の見解である。

A:酵素といってもさまざまなものがありますから、全てを一般論で議論するのは難しいのですが、一部の酵素ではKmと最大活性Vmaxの間に相反関係があるようです。タンパク質の構造を変えてKmを小さくしようとした時に、ある程度まではうまくいっても、それ以上にしようとすると、今度はVmaxが小さくなってしまうといった関係です。複数の評価ポイントがある場合に、それらを全て同時に完全することは難しいということです。そのような関係をトレードオフと呼びます。


Q:今回の授業で酵素について色々と学んだ。自分の身の回りで一番身近である風邪について酵素がどのように作用するかを考えてみる。まず酵素というのは一つの酵素が色々な細菌に作用するのではなく一つの酵素は特定の細菌にしか作用しないものである。風邪になると風邪薬を飲むが風邪薬にはリゾチームという酵素が含まれている。リゾチームというのは真正細菌の細胞壁を構成する多糖類を加水分解する酵素である。 ウィルスや細胞壁につく糖類の連鎖を別けることで活性化エネルギーを下げることにより風邪を治している。このようなことから酵素が筋トレ(筋肉をつけること)に役立つのではないかと考えた。筋肉に一番必要なものはタンパク質である。食事などでタンパク質をとっても全てを吸収することは出来ない。酵素によってタンパク質の構造を切り離し吸収しやすくすることによって人体によりよくタンパク質を出来るので筋肉が成長しやすくなる。

A:話がやや混乱しているようですが、最後の部分、タンパク質を酵素によって部分的に分解するのは、実際の料理に取り入れられています。生のパイナップルには、パパインというタンパク質分解酵素が含まれています。パイナップルを豚肉と合わせて料理する場合があるのは、硬い豚肉のタンパク質を部分的に分解してやわらかくするためという面があります。


Q:酵素は生体内のある特定の化学反応において触媒の役割を果たす物質である。触媒とは化学反応における活性化エネルギーを下げることによって、化学反応を活発にする物質である。酵素はタンパク質からできており、触媒としての機能を果たす最適な温度と最適なpHが酵素ごとにそれぞれある。最適なpHについて取り上げてみると、たとえばペプシンはpH2で最大の反応速度を示し、アミラーゼはpH7で最大の反応速度を示す。最大の反応速度となるpHがずれる原因としては、まず酵素自体がある範囲のpHを越えると変性してしまうことが考えられる。ペプシンとアミラーゼにおいては、たとえば、アミラーゼはpH2の環境では変性されてその役割を果たさなくなるかもしれない。これを確かめるためには、アミラーゼがどのようなpHの値の範囲で変性せずに存在しうるかを知らなければならない。実験では、タンパク質は変性するとその立体構造が変化するはずなので、立体構造の違いが検出できるような方法で、異なるpH値の環境下のアミラーゼを観察、比較すればよいと思う。pH2の環境下でアミラーゼが変性してしまうことが分かれば、ペプシンとアミラーゼの最大の反応速度をとるpHの違いの一つの原因としてよいのではないかと考える。

A:これは、極端なpHによるタンパク質の変性が酵素活性のpH依存性をもたらしているという仮説ですね。面白いと思います。このような考え方は重要だと思います。


Q:恒温動物と変温動物では,恒温動物が最終的に生き残ると思う. 理由は以下の通り.生体触媒すなわち酵素には活動に対しての適温があると以前に学んだことがある.ここで環境変化,特に気温の変化を考える.気候変動により,至る所で,気温が50℃を超えた場合,変温動物は,この気候変動に対応しようとする.(避暑地のような涼しい場所は一切ないという仮定を設ける.)すると,体温が動物の持つ酵素の活動範囲の温度35℃-50℃(*1)を超え,凝集体を作り(第3回の講義より),酵素が正常に機能しなくなる.気候変動で気温が低下しすぎた場合も同様に考えればよい.一方,恒温動物は周囲の気候変動による温度変化を受けないために,酵素を常に正常に機能させていられる.この考察は以下の恐竜絶滅でも,裏付けられる.「約6500万年前に恐竜が絶滅したとき、ほ乳類は生き残った。」(*2)
いずれも,2013年05月12日18:00閲覧し,一部引用した.
(*1)http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/biochem5.htm
(*2)http://contest.thinkquest.jp/tqj1998/10098/dic/henon.html

A:面白いと思いましたが、「最終的に」というのが気になりました。どこまで行ったら最終なのでしょうね。次に小惑星が地球にぶつかる時でしょうか。生物は、恐ろしくたまにしか起こらない現象については、いずれにせよ対応するすべを持ちません。生き残る、生き残らない、は主に日頃の環境変動の幅の中で、どれだけ子孫を残せるかによっているのだと思います。