生物学通論 第8回講義

エネルギーと代謝

第8回の講義では、生物の代謝を概観してから、主に呼吸によるエネルギー生産の仕組みについて解説しました。


Q:ATPの生成においてATPの合成酵素が回転しているが、同様の構造で回転のない酵素であったならどのような不都合が生じるのだろうか。呼吸系に関わる細胞の酸素の供給方向があらゆる方向に一様であれば合成酵素の媒介はどのADPも確率は同じだと考えられる。しかしながら、呼吸における酸素の取り入れにおいて気管支、肺胞、血液中、脳というように酸素の供給方向には偏りがあることからADPと合成酵素の接触方向はランダムではなくて偏りがあることが考えられる。そのため、合成酵素の向きによってはADPからATPへの生体反応が円滑に行われず、代謝の低下が起こったり、細胞レベルでのエネルギー不足が懸念される。また、ATPの合成酵素が回転しなかった場合、呼吸におけるグルコースの酸化の過程でATPの使用や生成の見られる解糖系や酸化的リン酸の効率が低下することが予想され、ATPへの依存度が低いピルビン酸回路や脂肪酸回路・クエン酸回路がエネルギーの吸収・合成での重要度を増すのではないだろうか。

A:なんとなくイメージが食い違っているような。ATPの合成酵素は、プロトンが通過する際にATPを合成するもので、それ自身は酸素とは無関係です。酸素は電子伝達の最終的な酸化剤として必要であり、この電子伝達に共役してプロトンが膜を横切って運ばれます。


Q:生物は時の流れと共にゆっくりとしかし、確実に進化している。より効率的なエネルギー伝達が行われているがなぜ現段階では数段階の段階を踏んで伝達作業が行われるのか。それが適しているのかもしれないが、私は環境の変動があっても人類が多少のことんなら適応できるようにあえて余白を残しているのかもしれないと考える。多いもの少なく省くのは少ないものを増やす作業に比べてエネルギー消費量が少なくて済むはずである。環境の変動に伴って、エネルギー伝達に変化は起こると私は考える。

A:なんとも哲学的でよくわかりませんが・・・。エネルギー伝達というのは、呼吸の電子伝達の話でしょうかね。


Q:代謝経路は、本来ならば何通りにもなるはずが、分解酵素の基質特異性によってただひとつの経路に定められている。しかし、実験のマウスに対してある特定の酵素が作用しないように調整しても実験体のマウスの体にはまったく影響がでない。これは作用しなくなってしまった分解酵素の役割を他の酵素が補って、それまでとは異なる代謝経路をつかって分解が行われているからである。ではなぜもとからどの経路でも分解できるようなシステムにしていないのだろうか。理由として考えられるのは、酵素が基質特異性を持っていることにも関係するが、いくら何本もの代謝経路が存在したとしても、道筋がひとつに統制され、分解の役割分担が明確になされていたほうが消化の効率が上がるためであるということである。反対に、代謝経路がひとつの道で確定しておらず、ある酵素がなくなってしまっても他で補うことができるのは、環境の変化によってひとつの酵素が作れない状態になるなどの危機的状況に陥ったとき、柔軟に対応して生命を維持していくという生物の進化の産物なのではないかと考えられる。または、進化の過程で使われなくなってしまった酵素などもあるのではないかとも思った。

A:代謝の経路の話は、特定の代謝について述べたものではなくあくまで一般論です。ですから特にマウスとか消化に限定される話ではありません。代謝系が「柔軟」であるという指摘はその通りだと思います。


Q:今回授業にて、牛肉を食べても人が牛にならない理由を知った。摂取したタンパク質がそのまま体の中でタンパク質として働くわけではなく、消化・分解されるということであったが、牛にも同じ働きはあるのだろうか。なぜ疑問に思ったかというと、牛が同じ働きを持ってるならば狂牛病は起こらないのではないかと思ったからである。しかし、働きがないとすると牛は植物になってしまうことになる。ということは、牛は植物性タンパク質に対しては分解酵素を持っているが、動物性タンパク質に対しては分解酵素を持っておらず、故に狂牛病が起こってしまうのだろうか。では動物性タンパク質と、植物性タンパク質の違いは何なのだろうか。最大の違いは必須アミノ酸のバランスということからすると、分解酵素の種類は関係ないように思える。しかし、両タンパク質ともアミノ酸から出来ているとはいえ、動物タンパク質の方が、金属や脂質などほかの成分と複雑に結合しており、植物性よりも消化吸収しにくいのだそうだ。やはり、草食動物の持っている分解酵素は、人が持っている分解酵素よりも種類が少ないか違う種類なのだろう。
参考HP:http://www.dole.co.jp/5aday/about/column/column_043.html, http://kenkou-8.org/2tanpakusitu.htm

A:これは素晴らしい点に目をつけました。確かにタンパク質がすべてアミノ酸に分解されるのであれば、狂牛病は伝染しないはずです。生物が専門ではないのによく気がつきましたね。レポートで述べられている分解のしづらさのほかに、狂牛病の原因タンパク質(プリオン)は連鎖的に「感染」を引き起こす、という点が普通のタンパク質とは異なります。例えば、筋肉のタンパク質がわずかに消化されないで体内に入ったとしても、それはもとからある体内のたんぱく質の量に比べればほんのわずかで、基本的には無視できます。一方で、プリオンは一度はいると体内で増えることになりますから、最初に入った量がわずかであっても、体に影響を与えることがある得るわけです。


Q:脂肪燃焼・有酸素運動という言葉はダイエット方法を紹介するテレビ番組で当然のように発せられるが、私は今回初めてその根拠や仕組みについて理解することが出来た。実は、脂肪燃焼などという言葉が使われていても体内で火が起こる訳が無いし、何かの比喩であろうとさえ思っていた。呼吸によって取り入れられた酸素が糖と結合し、波のような形態を取りながら二酸化炭素+水に姿を変えて行くのは、正に燃焼そのものである。ところでダイエットと言えば、体が冷えると体温が奪われるのを和らげようとするために皮下脂肪が増すということをよく耳にする。調べてみたところ、「脂肪酸の酸化はすべてミトコンドリア内部のマトリックスで行われる」とある。脂肪酸が酸化されるには、酸化に伴う化学反応の活性エネルギーに加え、ミトコンドリア内膜中に取り入れられる為に必要なエネルギーも必要なのではないかと考えた。ミトコンドリアの酸素消費量と温度の相関実験について触れたホームページ等もあり、温度が低ければ活性も低いのではないか、と見て取れたため、体が冷えると脂肪が増すというのも、脂肪酸を酸化させるはずのミトコンドリアの活性温度以下になることによって反応が進まず、脂肪が「溜まってしまう」とも言えるのではないかと考えた。
参照:太田次郎 他.『基礎生物学講座2 生体の物質的成り立ちと代謝』朝倉書店(1992)、http://d.hatena.ne.jp/pilot_doctor2/20110202/1296610001(ミトコンドリアの酸素消費実験について触れているホームページ)

A:人間の場合、体が冷えるという言い方をしますが、36℃の体温が30℃になったりはしませんよね。温度はさまざまな反応の速度に影響を与えますから、人間のような恒温動物ではかなりの精度で一定に保たれています。普通体温が37℃を超すと風邪をひいたかな、と思いますから、正常な状態では温度は1℃の精度で保たれているといってよいでしょう。そうすると、呼吸活性の影響というのはそれほど大きくないでしょう。一方で、体温が保たれているのは、呼吸によりいわば燃焼が起こっているからです。寒いと震えるのは、震える運動により熱を作っているわけです。温度と呼吸の関係は複雑ですね。


Q:代謝経路というのはいくつもあり、ある反応を進める酵素が働けば、その反応によって生じる物質が主に生じることになる。ある代謝経路を考えたときに、ある酵素が反応に対して働いていることを示すためには、その酵素を壊してしまい反応が止まることを調べれば良いが、実際他の経路を通って代謝が起こるため少し時間がかかったりするだけで、最終的な物質はあまり変わらなかったりする。このことによって、例えば酵素に不具合があっても、違う経路を通って反応が進むため最終的には同じ物質になり、生物に対してはあまり影響がでないのだ、と思った。もしこうでなければ、反応がある時点でストップしてしまい、生物に対して影響がでるのだろうと思う。

A:僕が話したことを理解していることは読み取れます。ただ、レポートとしては何か独自の考え方がほしいですね。