生物学通論 第11回講義

生物学と社会

第11回の講義では、主に医薬品や健康食品の効果をどのように検証するのか、健康食品の効果の宣伝文があった時にどこに注目して評価すべきなのか、といった話題について解説しました。


Q:今回の授業で、身近にあふれているさまざまな情報について、少なくとも理系の人間である私たちがどのように考えるべきなのかについて学んだ。確かによくよく考えると、良い情報は簡単に流れるが、その裏を考えることが消費者にとって重要なことである。例としてまず特定保健食品を挙げる。高濃度カテキンのお茶を飲むことで脂肪の燃焼を促進するという商品があるが、継続飲用によりウエストが細くなったとまで伝えている。これ自体、お茶を飲んで痩せたわけではなく、あくまで運動したことによるものである。過大広告とまでは言い過ぎかもしれないが、やや疑問を持つ内容であった。この場合、健常者何名かで同じ運動を続けた結果をグラフで表し、飲用者、非飲用者、他の飲料飲用者という風に分けて表示する必要があると思う。もうひとつ、ジェネリック医薬品も一部疑問に思うことがあった。特許の切れた安い薬で、効果が一緒であるという風に宣伝しているが、そもそも医薬品の特許はその物質に対するものなのか、製造方法によるものなのかが分かれている。医薬品内の物質の特許がなくなっても、製造方法の一部に特許が残っている場合、違う製造方法を使わなければならず、それはその医薬品内の物質の効果に対して影響を与えないのだろうか。製法や添加物、カプセルなのか錠剤なのかで、医薬品としての効果は変わると思うので、単純に安くて効き目が一緒という宣伝も疑問に思われる。

A:そうですね。そのような批判的な目を養ってほしい、というのが今回の講義の一番大きな目的でした。


Q:詐欺と統計のデータの話が印象的だった。ビタミンCでガンは治せるか。この議題に対して、まず人が薬で飲める範囲でビタミンcがガン細胞を殺せるかどうかを確かめなくてはならない。ここで疑問に思ったことなのだが、ここで、口径での摂取は不可能であったというデータが書かれていたが、こういう場合の実験では実験体としてマウスやラットといった人外のものでは効果がわからないので、生きた人体を実験体にしないといけないように思われれる。果たして本当に人体で実験をしているのだろうか。そして人体を実験体にした場合死んでしまった場合どうなるのか。疑問である。

A:ビタミンCを飲んだのでは足りない、というのは人体実験のデータではなく、細胞の実験からの計算によるものです。僕も具体的な数値は知りませんが、例えば、1日10 kgビタミンCを摂取したらがんは治ります、という結果になった場合、それが不可能なことは、何も人体実験をしなくてもわかりますよね。


Q:統計による数値について、結構深く考え騙されているなと思いました。例えば、数字による信頼度は大きいと思いました。数字を作り出しているのは人間ですが、人間がデータベースを操っているということに無意識のうちに騙されているなと感じました。何がデータベースにされているかということに着目する姿勢を自分が研究するときにも注意して信頼性の高いデータを出すことを徹底したいと思いました。

A:確かに、人のデータに対してだけでなく、自分のデータに対しても批判的な精神は重要です。


Q:本当は一つのことについて書いた方がいいのだが、少々自論があるので。まず、年をとればとるほど1年が短くなるというのは、1年を自分の年齢で割ることに関係しているのではないか。例えば10歳なら1/10、21歳なら1/21、48歳なら1/48。上述の3つの数字をくらべたとき、1/48が一番小さい。すなわち、年をとれば1年が短くなるとはこういうことではないか。さて、話しは変わり今回は黒烏龍茶や好気性細菌入りの肥料などの商品をどのように評価するかについての説明があった。これと同じような話で思うところがある。私は昨年の冬、「光触媒」というマスクが売られているのを見た。どうやらTiO2粒子がマスクに含まれているようで。これに関して、まず普通のマスクとの比較が必要である。TiO2が無くとも十分にマスクとしての機能は同程度であるかもしれない。私、もちろんそんなものがなくても普通のマスクと何らかわらないと思っている。そもそも、TiO2が光触媒として効果を発揮するのは紫外線下であり水溶液中で1時間拡散したとしても、メチレンブルーは40%程度しか分解できない。そもそも、マスクをつけているのは太陽光下であるし、まずマスクは白色である。光触媒の効果など何一つ望めない。ただ、造っている側は理系なのでよくわかっているのだろう、商品のケースの下の方に「フィルター除去99%+光触媒」と書いてあった。

A:最後の部分、確かに、フィルターで除去できなかった部分の残り1%が光触媒で変化するのかどうか、書いてほしい所ですね。


Q:サントリーのホームページに、黒烏龍茶に含まれる「ウーロン茶重合ポリフェノール」の抗肥満作用についての研究成果が載っているが、果たして本当に人間には効果的なのだろうか?ウーロン茶重合ポリフェノールに着目し、試験管内でのリパーゼ活性阻害作用、ラット腸管からの脂肪吸収抑制作用、及びヒトでの高脂肪食負荷後の血清中性脂肪上昇抑制作用を明らかにしたと記載されている。また、糞便中中性脂肪量増加作用が確認されたことから、ウーロン茶重合ポリフェノールの抗肥満作用のメカニズムとして、リパーゼ阻害による脂肪吸収抑制が関与している可能性があるとも述べている。しかし、これらの実験はマウスの使用によるものであり、実際のヒトから得られたデータに基づいているうわけではない(人体実験は行ってはならないことが前提であろうが)。また、この商品350ml中にウーロン茶重合ポリフェノールは70mg含まれているが、過度な脂肪を摂取してしまえば、それに見合った分のウーロン茶重合ポリフェノールが不足してしまい、リパーゼ阻害による脂肪吸収抑制作用も止まる可能性があるのではなかろうか?ホームページ中にはそれに関した記載がなされていないので、もっと詳しく記載するべきである。

A:なかなか批判的精神が育ちましたね。ただ、効果に関する実験は動物実験の結果をそのまま信用することはできないのは確かですが、効果のメカニズムがどのようなものであるのか、という点に関しては動物実験でも許されるのではないかという気がします。


Q:授業で黒烏龍茶の効能表示の客観的正確性について触れた。私はカフェイン含有飲料について考えてみた。これは正しい議論か分からないが、私はカフェイン含有飲料を飲んでも眠気が覚めたり疲れが取れたり頭痛が取れたりしない。カフェイン飲料を飲んでから短い時間の睡眠を摂ると頭がスッキリするなどと聞いたこともあるが、そんなタイミングに依存するような効能など、どうも根拠の無い話に思える。安息香酸ナトリウムカフェインは強心・興奮作用を期待できる物質だとして市販されてもいるが、これを偽薬効果実験にかけてみるとする。市販されているエスタロンモカ錠を参考にすると、これにはビタミンB1(体の疲れを取る効能があるよう)も配合されているようであるから、偽薬効果実験におけるカフェイン剤の代用にはビタミン剤(特にB1を含むもの)は避けておこう。小麦の固まり等が良いのであろうか。カフェイン剤の服用=眠気の低下・疲れが取れるというイメージが直結しがちであるから、「この薬を服用した前後で気分がどのように変化するか検証する」と謳って実験を始めるとする。非常に気分が落ち込んでいる人が服用したなら、気休め的に気分が良く感じるようになるかもしれない。体調の悪い人が服用したならば、体調が良くなったと感じるようになるかもしれない。しかし非常に興奮している人が服用したならば、興奮が収まったと感じるかもしれないし、また、体調の悪い人が服用した際に、カフェインの強心作用が真実であれば、心拍数が上がって余計に体調が悪化したと感じるかもしれない。つまり、カフェインがもたらすとされる「頭がスッキリ・疲れの低減」などという「気分」に依存する効果というのは、抗生物質が病原体を殺すのとは全く異なり、絶対的な症状の改善が図りかねるものであろう。それでも試験期間になれば学生がカフェイン含有飲料に飛び付くのは、「カフェインを摂ったのだから眠気も取れるはず」という大衆の信仰に従っているからであろう。

A:確かに、気分に関するものはなかなか統計的に優位な結果を出すのが難しいかもしれません。ただ、そのような場合でも、当該物質の作用のメカニズムが解明されている場合は、まあ本当かな、という気がします。カフェインの場合も生理作用のメカニズムは分かっていたはずです。ただ、世の中に市販されている薬の半分はその生理作用のメカニズムが解明されていないそうです。今のところは効けばよい(または効けばもうけもの)ということなのでしょう。


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