生物学通論 第5回講義

基本代謝経路

第5回の講義では、呼吸のエネルギー代謝を中心に基本代謝経路について解説しました。


Q:タンパク質、糖、脂質の代謝について、経路はつながっていて、例えば糖から脂肪を作ることも出来、脂質の摂取を控えても糖分を多量に摂取しては結局脂肪がつくことになるということであった。しかし、脂質と糖では太りやすさが違うということで、(CH2)nの化学式の脂質(脂肪酸)と(CH2O)6の化学式の糖(ブドウ糖)ではその化学式の違いを挙げていた。これについて考えてみた。
 まず、脂質と糖を完全燃焼させるのに必要な酸素について考えると、糖はその構造の中に酸素が含まれているが、脂質にはその構造の中に酸素が含まれていないことから、完全燃焼させるのに必要な酸素の量に違いが生じる。授業中の先生の話を聴いて、もともと構造に酸素が含まれている糖の方が少ない酸素供給で完全燃焼できることから、脂肪よりも完全燃焼させやすく、より太りにくいと捉えた。しかし詳しい酸素量の比較をしてみたいと思ったため、以下で酸素量の比較を行ってみた。(CH2)nの化学式を持つ脂質(脂肪酸)を完全燃焼させる反応式は、
(CH2)n+(3n/2)O2→nCO2+nH2O
という反応式となる。一方(CH2O)6の化学式を持つ糖(ブドウ糖)を完全燃焼させる反応式は、
(CH2O)6+6O2→6CO2+6H2O
という反応式となる。脂肪酸を代表的なC18のステアリン酸とすると、分子量252に対し27個の酸素分子(おおよそ)が必要であり、糖は分子量180のブドウ糖1分子に対し6個の酸素分子が必要なため、必要な酸素分子量は糖の方が少ないことは明らかである。よって、糖の方が完全燃焼させやすく、太りにくいと言えるようである。しかし、上では化学式しか見ていないため、厳密には、もっと複雑な事情があり、簡単に議論は出来ないように思う。

A:面白いですが、燃焼に必要な酸素が少ないと、燃焼させやすいかどうかは、考えてみると案外難しい問題のように思います。ただ、考え方は面白いと思います。あと、講義ではきちんと説明しませんでしたが、何かを比べる時には、何あたりで比べるか、というのが非常に重要です。1分子あたりで比べるか、重さあたりで比べるかによっても変わってくる可能性がありますよね。


Q:授業で呼吸のことが出たが、人が酸素濃度の低い空気を吸うとすぐに失神してしまうという話を聞いたことがあるが、これはATPの合成と関係があるのだろうかとふと考えたが、ATPは呼吸だけで作るものではないため、ATPの不足により失神するということはないだろうと考えた。実際調べてみると失神の原因は脳の酸素不足であった。わずか3分、脳への酸素供給が止するだけで脳細胞が破壊され生命活動が維持できなくなる。しかし人は3分なら息をとめることができるのではないだろうか。息を止めることよりも低濃度の酸素を吸うほうが酸欠になるのはなぜだろうか。これは吸った空気の酸素濃度と血液中の酸素濃度が大きく関係していると考えられる。低濃度の酸素を吸うと、浸透圧のように、血液中から酸素が引っ張り出されてしまうからだと考察した。酸素を含むものを吸った方が酸欠になるというのは本当に不思議なことである。
 ATP合成酵素について。ATP合成酵素はβの部分でATPを合成しているとすると、δとの距離にばらつきが出てしまうために、αとβの部分が回転しているとい考えとそれを検証するための実験を紹介してもらったが、映像では一転を中心にして回転しているように思え、δが回転しているのではと思った。光る細長いものをどこにつけるかを特定できるのならこの疑問は簡単に解決する。

A:前者について。大気中の酸素濃度は21%ですが、人が一度吸って吐きだすと呼吸により酸素が使われて濃度が16%程度に減ります。逆にいえば、まだ16%は酸素が含まれているわけです。それより酸素濃度が低い気体を吸う場合には、吐いた息をもう一度吸うより酸素が少なくなるわけですね。
 後者について。これは僕の説明が舌足らずでした。回転というのは相互的なものなので、お互いの位置関係が回転していることはわかりますが、それ以上のことはわかりません。実験ではαβを固定した場合にγが回転する様子を観察しています。γの方を固定すればαβが回転するのが観察できるかもしれません。


Q:今回はエネルギーを作る方法として呼吸による糖の分解を学んだ。呼吸による糖の分解は糖の燃焼では得られないメリットがあるということだった。糖の燃焼は一回の反応で行われるために活性化エネルギーが大きく、作られたエネルギーが熱エネルギーに変えられるという反応である。一方で糖の分解はクエン酸回路の中で複数回の反応を行うので一回の反応の活性化エネルギーが下げられ、また反応ごとにNADHの合成をおこなうので熱エネルギーへの変換以外に使うことができる。クエン酸回路でわざわざプロセスを増やす理由はこのようなものだったのかと納得した。
 しかしこのプロセスを増やすために各プロセスに固有の酵素を用いているということであるので、エネルギーを得るためには反応の手間や時間を要するはずである。酵素は反応を促進する温度がある程度決まっているので、反応を複数のプロセスに分けることは熱エネルギーを作らせずに体温を一定に保つという意味も持っているのではないかと思った。
 たまたまレビューシートを書きながらアイスを食べていたが、例えばアイスを食べた時に呼吸の反応に何か変化が起こったりしないのかと疑問に思った。アイスを食べる量にもよるだろうが多少は体温が下がるだろう。そういった場合、体温を元に戻そうとして熱エネルギーを作り出す燃焼のような反応は起こらないのだろうか?逆に言うと、急速に熱エネルギーを作り出すようなプロセスは存在しないのだろうか。もしこのようなプロセスが存在したならば体温の上昇に糖が使われると考えられるので、通常のクエン酸回路で消費される糖の量は減るはずである。アイスが持つ糖を理想的にクエン酸回路で反応させて得られる理想のエネルギー量と実際に得られるエネルギー量に差があれば何らかの原因があるはずであるので、体温の上昇に使っていると考えることもができるかもしれない。もしそういうプロセスがあるのなら、例えばおでんなどを食べた時に起こる逆向きのプロセスがないのかといったことも気になるところである。アイスは食べていましたが、まじめに考えたつもりです。気分を害されたらすいません。

A:厳しいコメントを書くこともありますが、それは気分を害しているからではありませんので、誤解しないでくださいね。
 さて、寒いと人間は震えます。実は、これは体温調節の一環なのです。震えというのは運動の一種ですからそれによってエネルギーを使います。その際にエネルギーは最終的には熱になるので、それによって体温の低下を食い止めようとしているわけです。一方で、おでんを食べて暑いときには汗をかきます。汗は蒸発するときに気化熱を奪いますから、それにより体温を低下させることができます。一応、どちらのプロセスも存在することになりますね。


Q:今週は、それぞれの代謝は無数の経路を介してつながっており、迷路のような代謝を追っていけば一つの反応は他のあらゆる反応につながっていくということを学びました。ここで、例えば糖を摂取しても経路を経て脂質になることがあるということを知って、仮に脂質を全くとらなかったとしても一見問題はなさそうなのに、どうしてバランスの良い食事をとらなければならないのか、ということに疑問を持ちました。考えられる理由は脂質が糖やタンパク質に変換される際に、いったん低エネルギーの小さい化合物に変えてから再び高エネルギーの大きな分子に変えるというプロセスを踏むため、エネルギーのロスがあるということです。文献によると、すべての代謝経路は互いに依存し合っていて、タンパク質代謝、脂質代謝、糖代謝、核酸代謝、エネルギーの5つの互いにかみ合う歯車のようなものであり、代謝のどの部分もほかの経路がすべて動かなければ長くは機能しないといいます。そこで、さらに細胞がどうしてそのように代謝に融通を利かせることができるのかということにも疑問がわきました。環境が変われば摂取する栄養にも変化が生ずるはずであり、それにどう対応しているのかが気になりました。考えられる理由はよく摂取される成分に近い経路を太くしてその成分を代謝経路の中心にするということです。文献によると、細胞内では酵素活性は2通りの普遍的方法で調節されうるといいます。
1)もともと存在する酵素分子の触媒活性を増減する
2)酵素分子の総数を増減する
例えばグルコースとアラニンが豊富に手に入る環境にいるとしたら、グルコース-アラニン間の経路はストップされアラニンはタンパク質の合成に使われる、というように調節されるそうです。細胞は状況に応じて酵素を調節して経路を細くしたり太くしたりして効率のよい代謝を行うことがわかりました。
参考文献 近藤洋一ほか訳 「基礎生化学」 東京化学同人

A:なぜバランスのとれた食事をする必要があるのか、というのは面白い観点ですね。確かにエネルギーのロスもあるでしょう。それに加えて、おそらくは、バランスの悪い食事をとっているときは、エネルギーをロスすること自体も重要なのです。たとえば、特定のアミノ酸が少ない食事をとっている場合、そのアミノ酸を十分にとれるだけの食事量にしようとすると、当然その他の物質は必要以上にとらなくてはなりません。十分体を動かしてその分のエネルギーを消費しているときには問題ないのですが、運動が足りないと肥満になってしまう、ということも考えられます。


Q:コラーゲンを食べても、コラーゲンとして肌に行くわけじゃないと事実を初めて知りました。すべてアミノ酸として取り込まれて、ちがうものになってしまうんですね。私は今まで勘違いをしてもつ鍋を食べ続けてきました。世の中にこの事実を知らない女の人がどれだけいるんでしょう。コラーゲンは食べることでとれないのなら直接肌に塗ってしまえば、確実に肌にコラーゲンを与えることができるんじゃないかと思います。でも、肌の毛穴は呼吸をしているので与えてもすぐに出てしまうかもしれませんが。今回のアミノ酸の話で、美容にいいと言われている食べ物が意味ないものなのかと考えてしまいました。

A:別に毛穴で呼吸をするわけではありませんし、毛穴を排泄のために使うこともあまりないと思うのですが・・・。美容に一番よいのは、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動、規則正しい生活でしょうけれども、それが一番難しいでしょうね。


Q:今まで自分の体の中で、食べたものがどう変化しているのか気にしたことなんてなかったけど、習ってみると「なるほど」と思うことが多くておもしろかったです!授業で、代謝経路は1通りではなく、酵素によって1通りに促進されているだけで、酵素を壊したら新しい経路ができると習いましたが、酵素によって1通りに促進されるのはどうしてですか?その代謝経路だとスムーズにいくからですか?授業で説明済みでしたらすみません!!

A:酵素には、前の回に説明したように基質特異性というのがあります。ですから、代謝経路の多くの反応の中で、特定の酵素は特定の反応を触媒して、そのだけ反応を進めることになるのです。