生化学I 第9回講義

化学反応速度論

第9回の講義では、ミカエリス・メンテンの式に基づく関学反応速度論と、フィードバック調節やアロステリック調節の話をした後、酵素サプリの誤解について触れました。。


Q:今回の授業で先生が阻害の話をしているときにおっしゃっていた「リニアに変化する」という意味が分からなかったので授業後に調べましたがこれは「直線的に変化する」という意味でよいのでしょうか。

A:すみません。つい、lab slangが出てしまいました。だいたいその通りです。「線形」という訳語を当てることが多いとは思いますが。


Q:近年、ゲノム編集と遺伝子組み換えについて議論が活発である。ゲノム編集は「標準配列への変異導入」で遺伝子組み換えは「別の生物の遺伝子を導入する」ことである(1)。よく「遺伝子組み換えではない」といった表示の食品を目にするが、ゲノム編集は規制の対象から除外されている。確かに、ゲノム編集は遺伝子の変なので、本来存在する遺伝子を変化させているので大丈夫そうに見られるが、それを摂取して、本当に害はないのか。きちんと考えて検討するべきである。
参考文献 1.石井哲也「「ゲノム食品」が食卓に上る日。本当に規制は必要ないのか?北海道大学教授・石井哲也さんに聞く」https://kokocara.pal-system.co.jp/2019/07/22/genome-editing/

A:これは、エッセイとしては良いのですが、科学的レポートとしては物足りません。典型的な自称評論家文章で、「検討すべきである」と言いながら、自分の検討結果は全く示していません。まずは、自分で「きちんと考えて」みましょう。


Q:私は講義でヘモグロビンと酸素の結合を詳しく学んだとき、ヘモグロビンと一酸化炭素が結びつくことで起こる一酸化炭素中毒についてより知りたいと思った。そこで今回は、一酸化炭素中毒の症状を緩和するにはどのくらいの酸素を供給すればよいのか考察する。人間は血液量1 Lに対して1500 mgのCOがあると死亡する。CO 1500 mgのmolを計算するとCO 1 molあたり28 gであるから、1.5÷28=0.053…となり約0.05 molである。次にCO 0.05 molに対して回復に必要な酸素を求める。ヘモグロビンと一酸化炭素の結合はヘモグロビンと酸素の結合より250倍も強い。つまり一酸化炭素1分子をヘムから追い出すには250分子の酸素が必要になることになる。必要な酸素の数が一酸化炭素の250倍になるので必要なmol数も250倍になる。よって回復に必要な酸素のmolは0.05×250=12.5(mol)になる。これをグラムに直すとO2 1 molあたり32 gであるから12.5×32=400(g)である。人間の血液量を5 Lだと仮定して考える。今血液量1Lあたりで計算していることから計算値を5倍すれば一酸化炭素中毒の症状を緩和するにはどのくらいの酸素を供給すれば良いかが分かる。1 Lの血液あたり400gの酸素が必要と計算で出したため、5 Lでは2000 gの酸素が必要となりこの量が一酸化炭素中毒を緩和するには必要なのではないかと考えた。

A:これは、具体的に計算していて面白いのですが、最後の結論がちょっと。計算結果が血液5リットル当たり酸素2 kgとなった時点で、「酸素2 kgが必要である」ではなく、「酸素2 kgが必要となるので、酸素の供給によってCO中毒を防ぐことはできない」という結論になるのが普通だと思います。


Q:今回の授業でヘモグロビンが取りあげられたが、そこで自分はヘモグロビンを持たない唯一の脊椎動物として知られるコオリウオを思い出した。自分は2011年、地元である葛西臨海水族園にコオリウオが世界で初めて生きた状態で展示されると聞き実際に見に行った思い出がある。当時はまだ小学生であったため、体が透明なコオリウオを見てもそこまで不思議に思わなかったが、今考えるとなぜコオリウオはヘモグロビンを持たずに生きていけるのか疑問に思った。そこで、自分は血液中に酸素は絶対必要であるため、ヘモグロビンではない別の物質で酸素を運搬しているという仮説を考えた。人間も血漿で二酸化炭素を運んでいるため、他の物質で酸素を運搬していることは十分にあり得るはずだ。実際に詳しく調べると、血液成分である血漿に酸素を溶かして運搬していることが分かったが、それだけでなく他の魚より大きな心臓もっていることもわかった。つまり、血漿はヘモグロビンより酸素運搬の効率が劣るため、早く大量に血液を流すことで多くの酸素を体内に運搬しているのだと考える。しかし、ここでそもそもなぜコオリウオはヘモグロビンを持たないのか疑問に思った。調べても明確な理由はわからなかったが、自分はコオリウオが住む南極海にかぎがあると考える。南極海はプランクトンが多く栄養豊富であるため多くのエネルギーを酸素運搬に使うことが許されることに加え、海水温が低いと酸素の溶解度が高くなり海水中の酸素量が多くなると考えられるためこのような体の仕組みを持ったと考える。 参考文献:https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?inst=kasai&link_num=19672

A:僕は「コオリウオ」の話は全く知りませんでした(とは言え、最近の記憶力では、単に忘れているだけかもしれませんが)。単に話題紹介に終わらずに、そのような方法が採用された理由を、エネルギーの面とガスの溶解度の面からきちんと考えている点が評価できます。