生化学I 第8回講義

酸化還元反応、酵素

第8回の講義では、酸化還元電位とネルンストの式の紹介をしたのちに、化学反応、触媒、酵素などについて解説しました。以下に、4つだけレポートをピックアップしてコメントをつけておきます。


Q:授業において、系の酸化還元電位:E、標準酸化還元電位:E0、気体定数:R、ファラデー定数:F、電子授受数:nを用いてE=E0+RT/nF×log([Ox]/[Red])というネルンストの式で酸化還元を定量化することができることを習った。この式からわかることは、たとえば、酸化型の物質が還元型の物質と同じ量の時にEがその物質のE0と同じになるので平衡状態にあることを意味し、酸化型の物質が還元型の物質の10倍あったとしたらEがその物質のE0よりも大きくなり、還元されやすいことを意味するということがわかる。反対にEがE0よりも小さくなると、酸化されやすくなる。このことから、いろいろな生体物質の酸化還元電位の値を見て、それについて考察する。お酒を飲んだ時に起こる反応をみてみる。エタノールからアセトアルデヒドに酸化する時の酸化還元電位の値が-0.197で、アセトアルデヒドが酢酸に酸化する時の酸化還元電位の値が-0.581となっている。このことから、エタノールが酸化されるよりもアセトアルデヒドが酸化される方が遥かに酸化されやすいことがわかる。つまりこれはお酒を飲んでからアルコールが体に回ってよっている状態の方が長く続いて、酔いが覚めたら比較的よっていた時間よりも短い時間でアセトアルデヒドによってもたらされる倦怠感や吐き気などの症状がなくなるということだと思う。

A:化学反応のところで説明したと思うのですが、酸化還元電位でわかるのは、電子の授受の方向です。つまり、実際にどのぐらいの速度で反応が進むのかは、活性化エネルギーによって変わりますので、酸化還元電位からでは判断できません。とは言え、具体例で考えてみるという姿勢は、非常に良いと思います。


Q:今回の講義の中で、“分子のスピードは温度に依存するため、分子のスピードもエネルギーの一種である”という話があった。そこで私は、空気中と水中における分子のスピードについて考えているうちに、熱の伝導について疑問を持った。前回の拡散係数についての講義では、空気中の拡散速度は水中の拡散速度に比べて非常に大きいということだったが、熱伝導率については空気中の熱伝導率が0.025、水中の熱伝導率が0.61と、水中の方が明らかに大きい。なぜ、拡散係数と熱伝導率は比例しないのだろうか。調べてみると、物体内における熱の広がりやすさの度合いを示す、“熱拡散係数”というものがあることを知った。ある物体の熱伝導率をλ[W/(m・K)]、密度をρ[kg/m3]、比熱をc[J/(kg・K)]、熱拡散係数をa[m2/s]とすると、a=λ/ρcと表すことができるという。aを一定とすると、熱伝導率λは密度cに比例するといえる。したがって、水中の分子の密度は空気中の分子の密度に比べて非常に大きいため、分子の拡散係数の違いよりも密度の違いによる影響が大きくなって、熱伝導率は水中の方が空気中より大きくなると考えられる。

A:これは面白いところに気が付きましたね。あとは、できたら、熱伝導率がなぜ密度に反比例するかを、一言考察すると、ぐっとレポートが締まります。


Q:呼吸の電子伝達系においてNADHとFADH2から電子が伝達系に入るが、その経路が違うのはなぜだろうか。前者は複合体Ⅰを、後者は複合体Ⅱを介してユビキノンに電子が渡る。まず①酸化還元電位と結びつける。電子伝達系は電子が渡る反応の連続、すなわち酸化還元反応の連続である。そのため、系の反応連続の中で酸化還元電位は大きくなってくだろう。講義スライドよりFAD/FADH2酸化還元電位は-0.219で、NAD+/NADH酸化還元電位は-0.32となる。酸化還元電位を鑑みると、FAD/FADH2<NAD+/NADHより、電子伝達系の反応は必ず酸化還元電位は大きくなると仮定すると、既に複合体Ⅰを介して進んでいる電子伝達系に、後からFAD/FADH2由来の電子が系に入るのが予想できる。次に②酵素に結びつける。複合体ⅠとⅡはタンパク質である。そのため二つは酵素の特徴である基質特異性により経路が確実に分かれることになる。経路の確実な分割について、酸化還元電位は酸化や還元のされやすさを表すため、確実に経路を分割することは出来ないため、②が原因であると予想でき、経路の順番に関しては①で述べたように酸化還元電位の大きさにより、FAD/FADH2由来の電子が既に進む電子伝達系の途中から入ると考える。

A:これも、目の付け所がよいと思います。内容は良いのですが、文章が少し読みにくいかな。特に後半の部分、言葉を端折っているのでややわかりにくいように思います。少しだけ丁寧に説明するとよいかもしれません。


Q:講義8では、酵素は基本的にタンパク質でできているということを学んだ。しかし私はそのことと普段の私の行為の矛盾を感じた。そこから、酵素は本当にタンパク質でできているのだろうかという疑問を持った。酵素は変性をして失活し、その機能を失うという。失活する温度は、60-70℃であるそうだ。(1) 一方で、私たち人間の身体はそれ以上の温度に耐えられることが分かっている。その証拠に、サウナに入っている人間が山ほどいる。サウナはおよそ90℃にもなるという。(2) 私たちの身体はタンパク質でできている部分もあるし、生体内の化学反応も止まることはない。もし90℃でタンパク質が変性するのだとしたら、人間には相当な害を及ぼしていることになる。しかしサウナは、健康に良いということまで言われている。だとしたら、90℃でもタンパク質は変性しないことが分かる。このことから、酵素はタンパク質ではなく、他の熱に弱い物質からできているのではないだろうかと私は考える。
【参考文献】(1)嶋田正和 ほか22名,『生物』,改訂版,数研出版株式会社,p21、(2)『公益社団法人 日本サウナ・スパ協会のホームページ』,https://www.sauna.or.jp/kisochishiki/saunabook_3.html,(参照2020年7月2日)

A:面白い考え方ですが、重要なポイントが見逃されています。ヒトは恒温動物ですから、一定の範囲で温度の維持能力があります。つまり、周囲の温度が90℃であることは、体内の温度が90℃であることを必ずしも意味しないのです。もし、周囲の温度だけで議論してしまうと、冬の北海道では、ヒトはみな凍死してしまうでしょう。