生化学I 第4回講義

アミノ酸とタンパク質

第4回の講義では、アミノ酸とタンパク質を主に構造的な側面から解説しました。レポートの書き方について、まだ意図が伝わっていないようなので、以下になるべく多く(それでも1/3程度ですが)のレポートをピックアップして、この講義で求めているレポートの書き方について説明します。


Q:今回の授業では、アミノ酸の側鎖の種類や、分子間力の大きさによって、溶解度が変わると学んだ。そこで、なぜインスリンは水溶性ホルモンであるか考える。インスリンを構成するアミノ酸は51個と少ないため、分子間力について考慮する必要はないと考えられる。アミノ酸には、水溶性、疎水性、中程度のいずれかの性質があり、インスリンのアミノ酸のうち、25個が疎水性、18個が親水性、8個が中程度であると分かった(1,2)。約半分のアミノ酸が疎水性であることは、水溶性であるインスリンにとって多いのではないか。次に、インスリンの立体構造に着目する。授業で学んだように、内側に疎水性のアミノ酸を配置していることが考えられるからである。すると「インスリン単量体では(中略)αヘリックスを形づくる。それから(中略)β構造が伸びている」とあった(3)。また、インスリンのアミノ酸の配列は疎水性と親水性のアミノ酸が偏らずにほぼ均等に配置されていることが分かった(1,2)。これらのことから、立体構造の形態によって、外側に親水性のアミノ酸、内側に疎水性のアミノ酸を配置していると考えられる。
参考文献:(1)「アミノ酸大百科  ヒトのインスリンのアミノ酸列」  https://www.ajinomoto.co.jp/amino/manabou/kuwashiku2.html、(2)「Thermo Fisher アミノ酸の物性」https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/protein-biology/protein-biology-learning-center/protein-biology-resource-library/pierce-protein-methods/amino-acid-physical-properties.html、(3)「インスリン製剤の変遷をたどる」http://www.saitama-med.ac.jp/uinfo/mnaika4/pdf/ditn2012-07.pdf(閲覧日2020年6月5日)

A:自分で考えた問題点に対して、複数のソースにあたって調べた結果をもとに答えを出していて、基本的には良いと思います。ただ、独創性という観点からすると、「外側に親水性のアミノ酸、内側に疎水性のアミノ酸を配置している」という、講義でも取り上げた結論に落ち着いてしまっているのがやや残念です。この後に、この結論をサポートするような仮想実験を考える、といった展開があれば完璧です。


Q:レポートの内容が思いつかなかったので,高校生だった時に使っていた生物の図録を見ていたら疑問に思ったことがあったのでレポートに書く。酵素は最適温度と最適pHを持つが、なぜそれらが存在するのか。また酵素の反応速度と温度の関係、酵素の反応速度とpHの関係をあらわすグラフ(1)の形はどうして違うのか。酵素はタンパク質でできているので高温で熱変性を起こす。そもそも温度とは熱運動の激しさで決まるものであり、高温状態では分子運動は活発になる。よってタンパク質を構成する分子にぶつかって立体構造を変えてしまうために熱変性が起こるのだと考えられる。熱変性は起きずとも、温度によって酵素の活性部位で立体構造に変化が起きれば酵素の反応のしやすさは変化する。よって基質にピッタリはまる形に活性部位が変化することがあるため最適温度が存在すると考えられる。また、pHによって酵素の反応速度が変化するのはH+やOH-がタンパク質を構成する分子に結合することでタンパク質の構造が変化するためであると考えられる。よって最適温度が存在するのと同じ理由で最適pHが存在するのだと考える。
 最適温度の存在理由と最適pHの存在理由は同じだと考えられるのにグラフの形が異なることは疑問である。最適pHはグラフの軸に対してほとんど左右対称な形のグラフだが、最適温度のグラフは軸に対して左右対称の形ではない。理由として考えられるのは、熱変性は不可逆的な反応であるのに対してpHによるタンパク質の変化は可逆的なものであるということだ。立体構造が変化すると酵素は失活して元に戻らないが、H+やOH-の結合による変化はH+やOH-が外れればもとに戻る。反応の種類が違うためグラフの形に違いが出たのだと考えられる。
参考文献(1)監修 鈴木孝仁,視覚でとらえる フォトサイエンス生物図録,数研出版株式会社,2018

A:自分なりの考察を展開していて評価できます。但し、ロジックは今一つ。可逆変化と不可逆変化である点が異なるのは確かですが、それがなぜグラフの形の違いにつながるのか、という部分の説明こそが本来は重要なところでしょう。おそらく、可逆性・不可逆性よりは、低pH・高pHの作用の差と、高温・低温の作用の差に注目したほうが、ロジックは組み立てやすかったと思います。


Q:背景:今回の授業の最後に狂牛病とタンパク質の構造について説明がなされた。狂牛病はプリオンと呼ばれる細胞型プリオンタンパク質(PrPc)がスクレーピー型プリオンタンパク質PrPScに変化して、さらにそれが増殖することで発症することがわかった。つまり、生体内で構造の変化した異常なタンパク質が、まるで感染するかのようにその構造をほかの正常なタンパク質にも移すということだ。この時私は日本の三大死因の一つである癌について興味を持ち、次のように考えた。
疑問1:癌細胞は何か外的な要因によって生まれるのではなく、自分の細胞が突然変異のように変化して生まれるということはすでに知られている。この時、癌細胞の増殖や発症とスクレーピー型プリオンの増殖とTSE発症は似ているのではないか。
仮説1:基本的ながん細胞の発生・増殖メカニズムは、スクレーピー型プリオンの増殖メカニズムと一致する。
調査1:まず狂牛病をはじめとする感染性海綿状脳症(transmissible spongiform encephalopathy:TSE)の基本的な発症メカニズムについて述べる。一度体内に取り込まれたPrPScは分解されずに、そのまま脳組織まで到達する。その後上述の通り、PrPCをPrPScに変え、増殖を促す。ここまでなら体にほぼ影響はないのだが、PrPScというのは、PrPCに比べて、βシート鎖に富んでいる。これによってアミロイド沈着形成が促され、最終的にTSEとなって発症する。
 次に癌細胞の発生・増殖メカニズムについて述べる。例えば皮膚がんの場合、主な要因として紫外線が考えられる。紫外線を多く浴びてしまうと、同一のDNA鎖内の連続したピリミジン塩基が、共有結合を起こし、二量体を形成してしまう。こうなると結合する相手が、もう1本のDNA鎖の塩基ではないので複製や転写の妨げとなり、突然変異が起こる。これによって生まれた異常な塩基配列を持つのが、癌細胞となって皮膚がんを引き起こす。この異常なDNAが複製されると、新しくできたDNA鎖もピリミジン塩基の二量体を持つため、癌細胞が新しく形成され、増殖していく。
考察1:一つの異常な細胞がそのタンパク質やアミノ酸組成や構造を遺伝的に伝えるということには類似点が見られたが、最終的な発症プロセスについては差異があった。ここで、調査中に感じた二つ目の疑問・仮説について調査したいと思う。
疑問2:なぜPrPScの増殖が起こると、アミロイドβが凝集するのか
仮説2:αヘリックス構造とβシート同士では結合しないが、同じ構造同士なら結合できるとすると、特定の条件下においては、αヘリックス構造はβシート構造の重合によって置き換えられる。
調査2:まず通常のアミロイドはほとんどがαヘリックス構造で作られているが、沈着形成を起こすアミロイドβは通常のアミロイドのαヘリックスをβシート構造で置き換えたもので、βシートが螺旋上に配置され、疑似的にαヘリックス構造を取る。
考察2:調査によって、もともとのαヘリックス構造の位置にβシート構造が置換しているというだけでなく、複数のβシート構造がかかわっているということが発見できた。
 最後に、次のような仮説を立てて再度調査を行った。
仮説3:アミロイドβの凝集体はある特定のタンパク質の働きによって分解することが出来る。
調査3:生体膜にはシャペロンと呼ばれるタンパク質が存在している。このシャペロンは適切な3次構造を取れなくなったタンパク質分子の構造を修復する働きがある。しかし、アミロイドβは単に通常とは異なる3次構造を取っているというだけでなく、「ジッパー構造」と呼ばれる特異的な構造をもつ。そのため、2次構造同士が非常に強く結合している。さらにこれは、1分子内に限らず、別の分子とも同じように強く結合する。この時この結合が非常に強いので、タンパク質分解酵素であるプロテアーゼでも分解することはできない。
総括:仮説2は正しいことがわかったが、仮説1・3については私の予想通りではなかった。追加調査として、アミロイド繊維の現段階での分解方法を調査したところ、仮説1の突然変異発言のメカニズムと同じようにテラヘルツ領域の自由電子レーザーを用いて、アミノ酸組成を変化させることで分解する方法が報告されていた。癌の治療法においては近年X線による治療が使われ始めていて、安全性や処置時間の面で飛躍的に進歩したが、手術費用がとても高額という欠点がある。そのような実用化に向けたコスト面でどれほどの違いがあるのかを今後は調査していきたいと考えている。
参考文献:須藤和夫(2018)エッセンシャル生化学第3版,東京化学同人 pp84~85、501~518

A:非常に大作なのですが、この講義で求めているレポートとは少しずれがあります。自分なりの仮説を立てているところは高く評価できますが、仮説が「事実か事実でないか」という枠組みになっているせいで、調べると答えが出てしまいます。この講義で求めているのは、自分なりの論理展開があるレポートです。調べてももちろんよいのですが、それをベースに何か自分のロジックを示せるような仮説設定が欲しいところです。また、その場合、論理展開にはある程度の文章量が必要になりますから、このレポートのようにいくつも仮説を立てる必要はありません。むしろ仮説は1つに絞ったほうがレポートの論理展開の焦点を絞れることの方が多いでしょう。


Q:今回の授業内にて説明されたサリドマイドは催奇形性を引き起こす可能性のある薬だが、私はなぜ催奇形性が生じてしまうのか疑問を抱いた。催奇形性とは妊婦が薬を服用すると奇形児が生まれる危険性のことだ。私は胎児の臓器形成の段階において、成人でも副作用がある薬を服用すると奇形児が生まれてしまうのではないかと考えた。胎児の臓器形成期間はおおよそ3か月だ。つまりこの3か月の妊婦の生活習慣で胎児の先天性疾患の有無が決まると考えられる。胎児は成人よりも敏感で脆弱であり、なおかつ臓器形成中となると副作用の可能性がある薬を服用すれば胎児には非常に強い刺激となってしまう。この刺激が臓器形成中の細胞分裂に大きな影響を与え臓器に異常性を擁する可能性が高いと考えた。しかし現実では妊婦の体調不良などもあり、刺激の強い薬を服用しなければならない場合がある。現在薬物の催奇形性の研究が進められているが、サリドマイド事件のような事態を引き起こさないために行政による確認や臨床試験等の精密性がさらに追い求められ、薬害による奇形児をなくすように邁進することが現代医学において重要だと考える。
化学物質の生殖・発生毒性 塩田浩平、https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/40/4/40_4_263/_pdf(閲覧日2020年6月3日)

A:いろいろ考えていることはわかりますが、申し越し論理を整理しないと主張が読み取れません。「なぜ催奇形性が生じてしまうのか」というのが出発点の疑問のようですが、この「なぜ」というのが、どの部分を知りたいのかがあいまいです。メカニズムということであれば、後段の「臓器形成中の細胞分裂に大きな影響を与え」というのが答えに相当する「なぜ」なのかもしれませんが、文章の流れからは、なぜ細胞分裂に行き着いたのかがわかりません。一方で、仮説としては、「胎児の臓器形成の段階において、成人でも副作用がある薬を服用する」ことが原因であるように書かれていますが、これはメカニズムというよりは条件でしょう。また、問題点が、「臓器形成の段階」なのか、「成人でも副作用がある」点なのかもあいまいです。科学的なレポートにおいては、多義的な日本語を使わずに、論理構成がシンプルに読み取れるように記述することが重要です。さらに「しかし現実では」以降は、すべて最初の問題設定とは無関係の記述です。ここを削除して、論理展開を丁寧にするだけでも、だいぶ良くなると思います。


Q:今回の講義の中で、たった10個のアミノ酸からなるタンパク質でも 201?≒10兆種類もあるのだから、タンパク質は無限といっていいほど存在するという話があった。そこで、そんな大量に存在するタンパク質を修復する役割を持つ「シャペロン」の働きの機構について考えていく。いったいどのようにして、無限に近く存在するタンパク質を認識し、正しい形へ修復しているのだろうか。一つ一つのタンパク質に対応したシャペロンが存在するとは考えにくいので、シャペロンの種類は一種類で、全てのタンパク質の修復を行っていると仮定する。シャペロンが全てのタンパク質の形状を記憶しているという可能性もあるが、もしそのような機能がシャペロンにあるとしたら生物の体内の至る所で働ける大きさに収めることは不可能だと思われる。タンパク質が変性する原因として、周囲のpHや温度の変化により、結ばれていたジスルフィド結合や水素結合が切断されてしまうことが考えられる。以上より私は、シャペロンは、切断された箇所に残っている結合が行われていた痕跡を認識して再結合していると考える。

A:自分で考えていることが読み取れますし、問題設定も明確で、それに対して複数の可能性を考えている点も評価できます。唯一惜しまれるのは、結論である最後の一文への展開にやや飛躍があることです。「切断された箇所に残っている結合が行われていた痕跡」が説明可能なのであれば、それを丁寧に説明したほうがよいでしょうし、そのようなものがあるかもしれない、と思っているだけならば、間に一文「・・・の痕跡が残っている可能性が考えられる」とでも入れて、「シャペロンは、その痕跡を認識して」と続けるだけでも、だいぶ印象がよくなります。


Q:タンパク質は熱やpHの変化によってその立体構造が変化し、失活してしまう。いったん変性したタンパク質は、今回の授業で学んだアンフィンゼンによる実験のような特別な条件でなければ一般的に元の立体構造には戻らない。このことは深く考えず当たり前だと思っていたが、よく考えたら、立体構造は変化していても一次構造は変化していないのだから、元の立体構造に戻ってもいいような気がしてきた。これが元に戻らないということは単純に一次構造が決まれば、立体構造も決まるという訳ではないと考えられる。実際に、今回の授業で狂牛病を引き起こす異常型プリオンが出てきたが、調べたところ異常型プリオンは正常型プリオンと一次構造は同じなのに立体構造が異なる(1)と分かった。これは、逆にタンパク質が一次構造の情報だけで立体構造に戻ってしまうと困るということだ。これらのことから、タンパク質の情報はDNAに記録されているが、その情報は一次構造だけなので、タンパク質が正しい立体構造をとり働くためにはそれ以外の情報があり、作用している可能性が高いと考えた。
参考文献:(1)スクエア最新図説生物,2016,第一学習社,P82

A:これは、自分で考えて問題点を設定し、論理的にあり得る可能性を答えとして提出している、という点から、この講義のレポートとして合格点です。強いて言うと、「それ以外の情報」として何が考えられるのだろう、という疑問が残りますが、そこまで突き詰めることを求めているわけではありません。


Q:今回は狂牛病の起源について考えようと思う。この病気は肉を餌として育てられた牛が感染し、それを食べた人間も感染した。狂牛病の原因はプリオンというタンパク質が変異して、主に脳や神経などに悪さをする。私は、プリオンが変異する原因はウイルス感染によるものではないかと考えている。その理由の一つ目は、強制的に自分の複製をつくる点だ。もともとプリオンは体内に存在し、脳や神経の働きを正常にするために必要なものです。しかし変異して異常になったプリオンは正常はプリオンを異常なものに置き換えてしまう。この強制的に自己増殖する特徴は、ウイルス感染と類似点があると考えている。ふたつ目の理由は、潜伏期間が長いことだ。狂牛病は感染から発症に至るまで個人差はあるが数年かかる。そして、発症後は急速に症状が悪化する特徴がある。この特徴はエイズが引き起こす免疫不全や、結核などの感染症と類似点がある。このことから、狂牛病はウイルスによるものだと考えられる。

A:これも、ウイルスがタンパク質を変性させるという仮説を立てて、それをサポートする事実を2つ挙げて論証していますから、この講義のレポートとして求められている枠組みは満たしています。ただ、理由の1つ目はやや強引かもしませんがよいとして、2つ目は、潜伏期間が短い感染症もたくさんあることを考えると、あまり理由になっていない気がしました。


Q:今回の授業で、狂牛病について牛に肉を食べさせたことによるプリオンの異常が原因だとおっしゃっていたのを聞いて、ほかの動物でも共食いをしたら狂牛病のようにたんぱく質に異常が起きるのか疑問に思ったので考察していく。https://www.global-clean.com/html/gan-zyosouzai_05.htmlによると、「狂牛病は感染によるものではなく除草剤の毒性が残留した飼料を食べた牛の骨髄や脳、内臓に濃縮して溜まったものの粉末を食べた牛が、一挙に体内のダイオキシン量が増え、又その死体を飼料にするのですから短期間に牛の体内ダイオキシン量が多くなります。 牛の内臓や脳、骨髄には連鎖的にダイオキシン量がどんどん濃縮されていくことになります。」とある。このような濃縮はほかの動物でも起こりうるだろう。このことより私は、除草剤のなかのダイオキシンがプリオンの異常の原因なのであるならば本来草を飼料にしている動物(例えば豚や鶏)も同じように肉骨粉を飼料にしたら狂牛病のようにたんぱく質に異常をきたす恐れがあると考えた。
参考文献:https://www.global-clean.com/html/gan-zyosouzai_05.html  2020/6/6閲覧

A:今、アメリカのトランプ大統領をはじめとして、Fakeニュースの話題には事欠きません。特にインターネット上の情報については、常に批判的にみる必要があります。例えば、このレポートで引用された文では、除草剤が突然ダイオキシンに変わっていますが、不自然さは感じなかったでしょうか。また、生物濃縮がおこるような食物連鎖を仮定するためには、1頭の牛が、たくさんの数の牛を食べなくてはなりませんが、それで牧畜が成り立つと思いますか?早稲田大学の生物学専修に入学した以上、ネットの記事を無批判に信じるのではなく、自分の頭で考える習慣をつけてほしいと思います。


Q:私はアンフィンゼンのドグマを実験的に証明する方法について、講義で取り上げた以外の方法がないかを考えた。講義では酵素の活性を見ることで本来の形に戻ったかを調べるという方法が取り上げられた。そして活性をなくす手段として薬剤が用いられたが、私は熱を用いてタンパク質を変性させて実験をする方法もあるのではないかと考える。講義では薬剤を入れて活性をなくした後、薬剤の濃度を減らしていくことで活性を取り戻すという流れだったが熱を用いてこの流れと同様なことをやろうとするとどのようになるか考察しようと思う。まず、タンパク質の3次構造を変化させるためにタンパク質を60℃~70℃の高温状態にさらす。これで酵素への活性も失われ、タンパク質に薬剤を入れた状態と同じ状態になる。高温状態にしてもタンパク質の1次構造は変わらないので立体構造のみを変化させることができる。次に活性を取り戻す手段だが、シャペロンを用いることで活性が取り戻せるのではないかと考える。シャペロンは熱で変性したタンパク質の立体構造をもとに戻す働きがあり、これに変性したタンパク質を入れることで薬剤の濃度を減らすという行為と同様なことができると考えた。

A:ここで提案された方法が実現可能だと思いますか、と聞かれたらば、否定的な答えを返すしかありませんが、この講義で求めているのは、自分なりの筋道で論理的に導き出した回答です。その意味では、このレポートは十分に合格点です。


Q:今回の講義では、タンパク質を構成するアミノ酸の構造や性質について詳しく学んだ。その中で、タンパク質はDNA・RNAと違い、一次構造であるアミノ酸配列によって自然と立体構造ができ、酵素として活性をもつということを学んだ。ここで疑問に思ったのは、いかにしてRNAが触媒機能を果たすのか、ということだ。つまり、酵素活性をもつRNA(リボザイム)がどのように立体構造を決定するのか、ということだ。今回僕は酵素活性をもつRNAの中で、rRNAについて調べた。rRNAは核小体で合成される。rRNAには多くの修飾部位があり、それが転写後修飾を受けることで塩基やリボースの構造を決定する。また、その修飾部位の多くはリボソームの働きにとって大事な所に位置する。このようにしてrRNAの立体構造は決定され、リボソームの機能においてとても重要な機能を果たしている。

A:ここでは「いかにしてRNAが触媒機能を果たすのか」が問題として設定されていますが、その後は結局調べた話が記述されているだけです。高校までだったら、調べものレポートにも意味があるかもしれませんが、この講義のレポートとしては評価の対象になりません。


Q:タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち18種はC、O、H、Nから構成され、システインとメチオニンはそれとSから構成されている。以前生物の誕生に関して、自分は大気中の放電で生体分子ができたという説と熱水噴出孔で発生したという説について考えたが、Sが一部のアミノ酸に含まれているということは熱水噴出孔で発生したという可能性が大きくなるのではないかと思う。硫黄を持つアミノ酸を合成するのは難しく、S原子は他の一般的ではないアミノ酸のものを使わなければならない。また、大気中や宇宙の元素組成から見てもSはそれほど多くはない。そんなSをわざわざ20種のうちの2つに使うということはそれが利用しやすかったのだろう。そういうわけでやはり熱水噴出孔は深く生命の誕生に関わると考えられる。
参考文献 須藤和夫 山本啓一 堅田利明 渡辺雄一郎 訳 エッセンシャル生化学第3版 株式会社東京化学同人 2018年7月6日

A:タンパク質を構成するアミノ酸に硫黄が含まれているという事実と、大気などの元素組成から、熱水噴出孔での生命の誕生を導くという論理は面白いと思います。一つだけ、生命の環境として考えると、「大気中や宇宙の元素組成」は「大気や地殻の元素組成」とすべきでしょう。


Q:タンパク質と聞いて牛肉や豚肉など私たちが日々食べている食肉もタンパク質であるということを思い出した。普段の料理でもわかるようにタンパク質は加熱すると変性、失活してしまい再び元の形状に戻ることはない。では逆に冷却された場合にはどうなるのだろうか。そこから一番体内に栄養を吸収させる食べ方を考えてみた。食肉は普段冷凍保存をする。冷凍することによって酵素や細菌の働きを抑えることができるので長期間の保存が可能になるからだと考えられる。それでは冷凍しても食肉の美味しさは保たれるのか。冷凍すると水分となって旨味成分や栄養の一部も凍ってしまう。解凍して料理をする際に凍っていた旨味成分や栄養の一部が肉に留まらずに流れ出てしまうと考えられる。またタンパク質の結合も弱くなりハリもなくなるだろう。つまり、栄養をより多く、美味しく食べる方法は生のまま食べることであるが、私たち人間体内に細菌が殺菌されることなく侵入すると有毒であるためしっかりと加熱して食べることが大事であると考える。

A:これは、いろいろと考えているレポートですが、論理的な一貫性がありません。最初はタンパク質を冷却されたときにどうなるか、という問題設定ですが、次に食肉をおいしく食べる方法が問題となりますが、記述されているのは凍るとまずくなる説明です。最後は衛生上過熱が重要であるという記述で終わります。それぞれ、文は相互につながってはいますが、全体としては論理性が認められません。科学的なレポートにおいては、首尾一貫した論理の展開が必要です。


Q:タンパク質はその構造の違いで役割が変わる。この構造の違いはアミノ酸の1次構造に依存するのだが、たまに他の要因で変形してしまうこともある。代表例としてプリオン病をあげる。これはその名称の通りプリオンの異常によってひき起こされるものである。プリオンとは1982年にプルシナーが命名した病気の病原体となる感染性タンパク質粒子である。元々動物の脳には正常遺伝子の作る正常プリオンがあるのだが、稀に異常遺伝子が異常プリオンを作る。これがプリオン病発症の原因と考えられている。またプリオン病は感染者の組織を摂取することでも感染することが報告されている。異常プリオンを摂取するとそれが正常プリオンに触媒のように作用して正常プリオンを異常プリオンにする。そして異常プリオンが蓄積すると神経細胞を破壊しプリオン病を発症させる。プリオン病は未だに治療法が確立されていない。上記より正常プリオンが異常プリオンに変化してしまうのが原因なのであれば、その変化を止める方法を見つけることが治療法確立に一番近いのではないかと思う。

A:これは、単なるプリオン病の調べもの学習ですね。自分なりの論理がどこにも感じられません。強いて言うと、最後の一文が自分の頭で考えたことなのかもしれませんが、これだけでは論理性のあるレポートとは言えません。