読書記録2006

最近、一度読んだ本でも忘れていることが出てきて年を感じます。ひどいときは、新しく読む本だと思って、面白く読み進めていくうちに、何だか知っている気がしはじめて、読み終わる頃に、そういえば昔読んだことがあったと思い出すこともありました。 「常に新鮮な喜びが味わえてうらやましいこと」などと言われる状態です。そこで、新しく読んだ本を忘備録としてここに書いておくことにしました(平成14年3月開始)。「新しく読んだ」というだけで、別に新刊の本とは限りません。


「夢盗人の娘」 マイクル・ムアコック著 ハヤカワ文庫 平成18年12月読了
 エルリックサーガを第二次世界大戦の時代背景でえがいた異色作です。このような書き方をしても破綻しないところは、このシリーズが単なるヒロイック・ファンタジーではないことを証明しているのでしょう。

「竜を駆る種族」 ジャック・ヴァンス著、ハヤカワ文庫 平成18年12月読了
 著者も題名も聞いたことはあったのですが、新装版が出たのを機に読んでみました。竜を飼い慣らす人間というある意味で月並みなテーマを使いながら独特の雰囲気で語っています。何となくクラークの「都市と星」を思い出しました。

「七王国の玉座 1?5」 ジョージ・R・R・マーティン著、ハヤカワ文庫 平成18年10月読了
 悪いとは言いませんが、他にも良くあるアメリカファンタジーですね。この著者の「タフの方舟」こそは、この著者でなければ書けない作品なのに、こちらのシリーズがヒットしたもので続きが出ないのは残念です。

「アブダラと空飛ぶ絨毯」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著、徳間書店 平成18年10月読了
 下の火の悪魔の続編です。といっても、この著者のこと、アラビアンナイトを下敷きに全く違う雰囲気のストーリーが展開します。珍しく主人公が大人ですが、これはこれで味があります。

「魔法使いハウルと火の悪魔」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著、徳間書店 平成18年10月読了
 しばらく前にジブリで映画化された「ハウルの動く城」の原作です。映画は見ていないのですが、こちらはなかなかの名作です。この著者は、かなりの数のファンタジーを書いていますが、一作一作に違う雰囲気を持たせているのに感心します。

「ローマ人の物語 賢帝の世紀 上・中・下」 塩野七生著、新潮文庫 平成18年10月読了
 ローマ人の物語も、いわゆる五賢帝の時代に入りました。皇帝の所行もさることながら、所々に出てくるユダヤ教と、その分派であった頃のキリスト教とローマの関係が面白いですね。触発されてヨセフスの「ユダヤ戦記」を買いました。まだ読んでいませんが。

「キノコの惑星スカー」 E.C.タブ著、創元SF文庫 平成18年9月読了
 デュマレストサーガ5巻目。

「迷宮惑星トイ」 E.C.タブ著、創元SF文庫 平成18年9月読了
 デュマレストサーガ4巻目。

「共生惑星ソリス」 E.C.タブ著、創元SF文庫 平成18年9月読了
 デュマレストサーガ3巻目。

「夢見る惑星フォルゴーン」 E.C.タブ著、創元SF文庫 平成18年9月読了
 デュマレストサーガの2巻目。

「アルテミス・ファウル 永遠の暗号」 オーエン・コルファー著、角川書店 平成18年8月読了
 下の本の3巻目です。悪くはないのですが、やっぱり、主人公がよい子になったピカレスクロマンは不満が残ります。

「アルテミス・ファウル 北極の事件簿」 オーエン・コルファー著、角川書店 平成18年8月読了
 下の本の続編です。魅力的だった悪の天才少年がただの子供に成り下がった感じで、作品としてはだいぶ落ちます。

「アルテミス・ファウル 妖精の身代金」 オーエン・コルファー著、角川書店 平成18年8月読了
 アイルランドの作家によるハイテクを持った妖精の出てくるファンタジーです。一種のピカレスクロマンで、13歳の悪の天才少年が妖精を出し抜きます。テンポの速い現代的な設定と魅力的な登場人物で、なかなか読ませます。

「嵐の惑星ガース」 E.C.タブ著、創元SF文庫 平成18年8月読了
 SFの中では比較的有名なデュマレストサーガの最初の巻です。おそらく20年以上前に読んだ気がするのですが、新装版が出たので、読み直してみました。この手のSFは、どれだけ、その作品独自の「雰囲気」を持っているかが勝負だと思うのですが、その点では合格ですね。

「新しい発生生物学」 木下圭、浅島誠著、講談社ブルーバックス 平成18年8月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「暁の女王マイシェラ 永遠の戦士エルリック3」 マイクル・ムアコック著、ハヤカワ文庫 平成18年8月読了
 エルリックサーガの3巻目。後半に納められている「薔薇の復讐」は1990年代に入ってからの作品だけあって、ストーリー展開が一本調子ではなく、人物造形も複雑になっています。前半に納められた1970年代の「暁の女王マイシェラ」と比べると、だいぶ違いますね。年の功ということでしょうか。

「ダレン・シャン 1?12、外伝」 ダレン・シャン著、小学館 平成18年8月読了
 生きのよい子供向けのファンタジーです。善悪を割り切らないところ、スピード感がある所など、なかなか上質ですが、ややあざといところもあります。原著は2000年の発行で、新しいファンタジーの一翼を担う作品といってもよいでしょう。

「生命をあやつるホルモン」 日本比較内分泌学会編、講談社ブルーバックス 平成18年7月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「プリオン説はほんとうか?」 福岡伸一著、講談社ブルーバックス 平成18年7月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「ハリー・ポッターと謎のプリンス」 J・K・ローリング著、静山社 平成18年7月読了
 このシリーズもあと1巻を残すのみとなりました。主人公たちがそれなりに年を取って描写されているのはなかなか感心します。ストーリー展開としては、最終巻に興味をつないだ感じでしたので、最終巻にどれだけきちんとまとめ上げることができるかによって全体の評価が決まると思います。

「新しい高校生物の教科書」 栃内新、左巻健男編、講談社ブルーバックス 平成18年7月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「ミトコンドリア・ミステリー」 林純一著、講談社ブルーバックス 平成18年6月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「この世の彼方の海 永遠の戦士エルリック2」 マイクル・ムアコック著、ハヤカワ文庫 平成18年6月読了
 エルリックサーガの2巻目。なかなか名作なのですが、人物造形がややステレオタイプなのが気になります。物語がダンセイニのように神話に徹すれば人物描写は気にならないのですが・・・。

「カロテノイド ーその多様性と生理活性ー」 高市真一編、裳華房 平成18年6月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「ウィーン・フィル 音と響きの秘密」 中野雄著、文春新書 平成18年6月
 音楽プロデューサーがウィーン・フィルの歴史を、その時々の指揮者との関係を含めて描いています。あくの強い人物のエピソードが数多く紹介されていて楽しめます。

「DNA 上・下」 ジェームズ・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著、講談社ブルーバックス 平成18年5月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「魔術師エベネザムと不肖の弟子」 クレイグ・ジョー・ガードナー著、ハヤカワ文庫 平成18年5月読了
 いわゆるユーモアファンタジーの系列ですが、まあ、良く言って1.5流の作品でしょうか。時間が余った時に読み流すための本という感じです。

「琥珀の望遠鏡 上・下」 フィリップ・プルマン著、新潮文庫 平成18年4月読了
 下の第3部。この巻はゲド戦記の第3巻を思わせる部分も出てきてなかなかの力作ですが、最後はやや収束させるのを急いだ感じがします。決戦がややあっけなく終わってしまうし。全体として、力のある作品ですが、児童文学としては大人の視点がうるさいし、大人向けのファンタジーとしては重みがもう一息です。ストーリーテリングがうまいだけに細かいあらが目についてしまいます。

「神秘の短剣 上・下」 フィリップ・プルマン著、新潮文庫 平成18年4月読了
 下の第2部です。新しい登場人物も出てきて、読ませる力は十分にある作品です。

「黄金の羅針盤 上・下」 フィリップ・プルマン著、新潮文庫 平成18年4月読了
 原著は1995年のファンタジーです。7年ほど前に翻訳され3年ほど前に文庫に入りました。3部作の第1部です。主人公は女の子でなのですが、地の文の記述に大人の視点が感じられ、素直な感情移入を妨げます。子供にも理解できるとは思いますが、児童文学ではないですね。登場人物は一癖あって面白いので、もう少し素直に書けばよかったのに、と思います。映画化の計画もあるようです。

「習字の科学」 大澤一爽著、法政大学出版局 平成18年4月読了
 もう10年以上前に買ったものを読み返してみました。著者は書家をお父上に持つ医学部の先生で、文房四宝や習字の技術自体を科学の目で見た点で極めて特異です。現代の寺田寅彦という感じですが、説明の仕方がわかりづらく、もう少し文章が明快であったらと惜しまれます。

「どこまでOK?迷ったときのネット著作権ハンドブック」 中村俊介著、翔泳社 平成18年4月読了
 個人ホームページの著作権に関するサイトの書籍化です。本にする際にあまり手を入れていないのか、繰り返しが多く冗長で、内容的にもやや薄っぺらい気がしました。具体例が多いところは長所なので本にする価値はあるとは思いますが、もう少しきちんと書き直して欲しいものです。

「星の王子さまをフランス語で読む」 加藤恭子著、ちくま学芸文庫 平成18年4月読了
 別にフランス語ができるわけではないのですが、一種の翻訳論として読みました。細かい文法的な違いから、その場の雰囲気を捉える論理が面白いですね。昔、原書の最初の部分を暗記したりしたことがありますが、一度原書をちゃんと読んでみたくさせる本です。

「囲碁・将棋100の金言」 蝶谷初男・湯川恵子著、祥伝社新書 平成18年3月読了
 金言を一生懸命現代のビジネスに引きつけて解説しようとしているのがかえって鼻につきました。ぱっとしません。

「メルニボネの皇子 永遠の戦士エルリック1」 マイクル・ムアコック著、ハヤカワ文庫 平成18年3月読了
 エルリック・サーガは話には聞いていましたが、どういうわけか今まで読んでいませんでした。ハヤカワ文庫から再刊されたのを機に、読んでみましたが、まあまあですね。名作という割には人物造形がやや薄っぺらいような気がします。

「藻類30億年の自然史 藻類からみる生物進化」 井上勲著、東海大学出版会 平成18年3月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「歌会の作法」 大原重明著、郢曲會 平成18年3月読了
 大正15年に書かれた歌会の作法について書かれた非売品の本です。和歌の披講と歌会の作法について、詳しく解説されています。書かれた当時でも、すでに歌会の作法などというものは忘れられつつある存在だったようです。

「北風のうしろの国」 ジョージ・マクドナルド著、ハヤカワ文庫 平成18年2月読了
 マクドナルドの名作が新しく文庫で出た思って買ったのですが、実は1981年の新装版でした。しかも忘れ果てていましたが、1981年の旧版もきちんと購入していました。まあ、四半世紀前の話ですから、忘れていても許されるでしょうか。せっかくだから、読み直してみましたが、すばらしいファンタジーですね。ただ、子供が喜んで読む本かどうかは難しいところです。語り手が大人という点もあるかと思いますが、基本的に大人の視点の小説のように思います。

「生物から見た世界」 ユクスキュル著、岩波文庫 平成18年2月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「地球環境化学入門(改訂版)」 J.E.アンドリュース他著、渡辺正訳、Springer 平成18年1月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「魔道士の魂 1?5」 テリー・グッドカインド、ハヤカワ文庫 平成18年1月読了
 これもシリーズが延々と終わりません。最初のシリーズは名作でしたが、もう惰性ですね。