光と水と植物の形

種生物学会編、文一総合出版、2003年、319頁、3,800円

読んだ第一印象は「自分がしている講義の内容が書いてある」というものです。講義の中でも必修のものでは、その講義の分野には興味はないけれどもしょうがなくて受講する学生が一定の割合で存在します。そのような場合、知識を教えてもそれを役立ててもらえる可能性はかなり低いので、むしろ考え方、つまり特定の生命現象の「意味」や「理由」というものをなるべく教えることになります。そして、この「植物生理生態学入門」という副題を持つ本では、そのまさに意味や理由を考えることが基本に置かれ、序章においてまず強調されているのもその点です。植物がそもそもなぜ葉と茎と根を持たなければならないのか、という疑問を理解しようとすると、それぞれの器官の機能を考えなくてはいけません。しかも、植物の形態が環境によっても変化することは、意味を考える際に機能だけでなく環境をも考慮に入れる必要があることを意味しています。機能と環境と形態の相互作用というのは、まさに生理生態学の研究テーマなのでしょう。生理生態学的な考え方というものがどのようなものかを理解してほしいという編者と著者の重いと熱意が、平易に書かれた文章にも表れていて好感が持てます。最初の第1部と第2部は植物の形を決めるものは何かを追及しているのに対して、第3部はそれらを研究する上で必要になる測定方法の解説になります。第3部が置かれたのは、おそらく少なくとも卒業研究を始めた学生、おそらくは主に大学院の学生を対象に書かれているためでしょう。しかし、学問の「考え方」を考えさせる教科書として、自分の専門を何にするかまだ迷っているような若い学生にも是非読んでほしい本だと思います。

書き下ろし 2012年3月