これでナットク!植物の謎

日本植物生理学会編、講談社、2007年、270頁、940円

本書は植物生理学会がホームページ上で運営している質問コーナーから選ばれた84の質問と回答を紹介したものです。内容は生理学的なものが中心ですが、小学生から会社勤めの人まで様々な人からの変化に富んだ質問には、普段考えても見ないような植物の側面を考えさせられます。回答は、学会のサイエンスアドバイザーになっておられるそうそうたる植物生理学者の方々5人が、必要に応じてさらに専門の先生に問い合わせて回答するという形になっていますから、さすがに非常にきちんとしたものです。一番すばらしいと思ったのは、わからない点はわからないと答えているところです。植物生理学が現在も謎をはらんでおり、日々進歩している学問分野であることが実感できます。所々に載っているコラムでは、植物生理学のいくつかの側面が紹介されていますが、内容的にやや偏りがあるのが残念です。細胞壁や液胞、植物ホルモンには繰り返し触れられる一方、根の話題がありませんし、代謝にも触れられていません。まあ、教科書ではなくコラムですから当然かも知れませんが。この本の元になっている質問コーナーは2003年秋から始めて2007年6月の時点で約900の質問が寄せられたそうです。こちらのサイトの光合成質問箱は2003年春に始めたのですが、同時期に寄せられた質問数は700強ですから、こちらは全て一人でやっていることを考えるとなかなか捨てたものではないかと。内容的には重なる面もありますが、こちらは一人でやっている分、質問の翌日までには回答できる場合が多く、回答まで数日はかかる植物生理学会の質問コーナーとは異なる有用性があるでしょう。植物生理学会の質問コーナーでは、現在、さらに月間質問数が増えているということですから、本の続編も期待できますね。

書き下ろし 2007年11月