カビの取扱説明書

浜田信夫著、角川ソフィア文庫、2022年、269頁、900円

カビと言えば、昔はお餅やパン、少し以前だと高松塚古墳の壁画、2024年時点では健康食品への混入が話題でしょうか。いわゆるカビは、お酒を造る酵母、食べるキノコと同じ菌類ですから、様々な側面を持ちます。人間生活とのかかわりだけに限っても、そのまま食べる、発酵に利用する、食物をダメにする、浴室や電化製品の見栄えを悪くする、文化財を破壊する、などいろいろな場面で登場します。一応、そのような多様なあり方についても紹介されていますが、この本のメインの部分は、やはり著者の専門であると思われる人の持ち物や住宅の中のカビとその防除方法です。ただし、どうも結論としては、湿度のコントロールがある程度有効ではあるものの、カビを生えなくすることは人間が生活している空間の中では不可能であるようです。千年単位で保存されてきた文化財が、発掘されてから数年でカビの被害で破壊されていく様子を読むと、人間という存在自体の問題点を感じさせられます。生物の研究者にとっては、最初の方の章で紹介される、人間が利用しているなどして身の回りでよく見られる菌類が、自然界では実はかなりニッチな環境に生活している種類であるという話が興味深く感じられました。これもまた、人間こそが生物の環境を大きく変える存在であることの別の表れなのでしょう。元の単行本は4年前に出版されたもので、文庫化にあたってカビ対策の章が追加されていますが、その部分も含め、家のカビ対策の話については、やや重複が多いように感じました。

書き下ろし 2024年4月