自由研究の実験をするにあたって何に気をつければよいでしょうか

まず、最初に生き物というのは工場で大量生産される製品とは違う、ということを頭においてください。例えば、ヒマワリの種をまいてその背の高さがどのように大きくなっていくかを調べるとします。しかし、人間の顔が人によって少しずつ違うように、植物も個体ごとによって異なります。ですから、同じ条件で育てたとしても、同じ背の高さになるかどうかわかりません。ということは、もし1本のヒマワリを赤い色の光で、もう1本を青い光で育ててどちらかの方が背が高くなったとしても、それが光の色の差によるものなのか、それとも、ただの個体差なのか区別ができません。それを見分けるためには何をすればよいでしょう?例えば、ヒマワリを5本ずつ育てて、片方の光で育てた5本が、もう片方の5本より全て大きかったら、光のせいだろう、と結論することができます。逆に、もし、2本は赤い光で育てた方が背が高く、3本は青い光で育てた方が背が高くなったら、あまり色の効果はない、という結論になるでしょう。生き物を相手にする場合は、実験を複数の個体で行う、もしくは、実験自体を複数回行う、ということが非常に大切です。

もう一つは、その実験がうまくいっているのかどうかをチェックできるようにすることです。例えば、スイカの皮が光合成をするかどうか調べようと思ったとします。その場合、例えばスイカの皮のヨウ素デンプン反応の実験を行ったとして、それで、反応が出なかった場合、可能性は、1)スイカの皮は光合成をしない、2)ヨウ素デンプン反応がうまくいっていない、という二つがあり、どちらかがわかりません。そこで、例えば、必ず光合成をしてヨウ素デンプン反応が出ることがわかっているアサガオの葉を同時に実験材料として使っておけば、ヨウ素デンプン反応自体がうまくいっているかどうかをチェックできます。

次に、上の例で言えば、ヨウ素デンプン反応が薄い時に、どの程度薄ければ光合成をしていないと言えるのかをチェックできるようにします。ヨウ素を使えば、光合成を全くしなくてもある程度の色は付きますから、スイカとアサガオで少し色に差があった時に、それが光合成に少し差があることを意味しているのか、それとも、スイカでは全く光合成をしていないことを意味するのか、を区別できません。そこで、例えば、銀紙に包んで全く光合成をしないようにした葉っぱで同時に実験をしておけば、それと同じ程度の色であれば光合成をしていない、と結論することができます。

さらに、できれば、実験の意味をよく考えるようにして下さい。例えば、上の例で言えば、一般にヨウ素デンプン反応で光合成をしているかどうかがわかるとされています。しかし、中には光合成をしてもデンプンは貯めない植物もあるのです。また、デンプンがどれだけ貯まるかは、光合成で作る速度だけでなく、呼吸などで分解する速度によっても変わるかも知れません。なるべくいろいろな可能性を考えるという姿勢が重要です。この部分については、ある程度の知識が必要ですから、わからなかったら、このサイトの光合成質問箱で質問してみるのもよいでしょう。

最後に、研究というのは本来、一度に実験を済ませて後はレポートを書くだけ、というものではない、ということを理解して下さい。「研究」と「実験」は違うものです。自由研究といえども、研究の一種です。実験の結果に応じて、さらに考えて、その結果を踏まえて次の実験をデザインして行なう、ということの繰り返しが、本来の研究なのです。1回限りの実験は、研究とは言えません。繰り返し実験を行なうのであれば、最初の実験結果が自分の思ったようなものでなくてもがっかりすることはありません。なぜ、そのような結果になったのか理由を考えて、その理由が正しいかどうかを試すような実験を考えつくことができれば、それこそ、一流の研究と言えるでしょう。自分が考えていたのとは異なる結果が実験で出た時の方が、むしろ、面白い研究につながることが多いのです。