ATP合成酵素でATPができる仕組みは?

ATP合成酵素はプロトン(H+)の濃度勾配によってADPをATPに変換する酵素です。このメカニズムについて、ボイヤーという人が20年以上も前に、「この酵素は3カ所のATP/ADP結合部位を持っていて回転している」という説を唱えました。つまり、ある一時点で見ると1カ所は空、1カ所はADPを結合、最後の1カ所はATPを結合していて、これが、がしゃんと120度回転すると、結合していたATPは離れて空になり、もと空の所にADPが結合し、もと結合していたADPがATPになるというモデルです。つまり全体としてみると酵素が120度回転するたびにADPが1分子ATPに変換することになります。20年前にはあまりに革新的なアイデアだったので、眉唾扱いする場合も多かったのですが、この酵素の立体構造が1994年に明らかになると、いかにも回転しそうな形だったので一挙に信頼性が高まりました。さらに日本のグループが1997年に直接回転することを証明しています。ボイヤーたちは1997年にノーベル賞も取っています。もう少し詳しいことは東工大の久堀研究室のホームページが参考になると思います。