なぜ強すぎる光は光合成によくないのか?

光合成には、光を直接使う反応(光化学反応:チラコイド膜で起こります)と光を使わない反応(光化学反応以外の電子伝達反応とストロマで起こるカルビン回路などの反応)があります。光化学反応は、当然、光を強くしていくと速度が上がりますが、光を使わない反応の速度は温度などの条件が一定なら一定だと考えてよいでしょう。光化学反応の速度は、暗いところでは0ですし、光が弱い時には速度は低いので、これが全体の光合成の速度を決めます(つまり、光化学反応の速度=全体の光合成の速度:これを光化学反応が全体の光合成を「律速」しているといいます)。光がさらに強くなっていくと、光化学系の速度は上がり、それに従って最初は光合成全体の速度も上がっていきますが、その速度の上限は光を使わない反応の速度です。ある程度以上の光の強さになると、光を使わない反応の速度が全体の光合成の速度の律速になるので、それ以上は光合成の速度が上がらなくなります。これが光を横軸にとって光合成速度を縦軸にとる光-光合成曲線が飽和カーブを描く理由です。

それでは、光合成の速度がそれ以上上がらなくなった時に、強くした分の光のエネルギーはどこへ行くのでしょうか。普通、光のエネルギーは光合成の反応を進めるエネルギーとして使われますが、光が強くなると、光合成は光を使わない反応によって律速されるので、余分な光のエネルギーを光合成に使うことはできません。それでも植物には防御システムがあって、ある程度の光の強さまでは、余分な光エネルギーを比較的安全な熱エネルギーの形に変えることができます。しかし、さらに光が強くなると、余ったエネルギーが光合成の装置を壊してしまうことがあります。これを「光阻害」といいます。強すぎる光で光合成の速度や効率が低下する原因です。具体的には、余った光エネルギーによって「活性酸素」と呼ばれる反応性の高い物質が発生し、それが光合成装置を破壊します。