光合成をするのになぜ水が必要なのですか?

光合成において、水は分解されて酸素になりますが、酸素は単に外に捨てられてしまいます。実は、植物にとって必要なのは、水を分解する時に生じる還元する力です。光合成では二酸化炭素から糖を作りますが、二酸化炭素は炭素に酸素がくっついたものであるのに対して、糖は、炭素、酸素の他に水素が結合しています。つまり、(簡単のために非常におおざっぱな言い方をすれば)二酸化炭素から糖を作るためには水素が足りないので、それを水から引き抜くと酸素が余るので、それを捨てる、という感じだと考えてください。実際には、そのように、単純に水素が動くわけではありませんが、概念的にはそんな感じです。ですから、本当は、別に水でなくてはいけないということはありません。光合成細菌という仲間の生物は、水(H2O)の代わりに硫化水素(H2S)を使うことができます。そうすると、酸素の代わりに硫黄ができますが、光合成の反応はきちんと進みます。ただ、もちろん、地球上で硫化水素があるところは限られるのに対して、水は非常に広い範囲に存在しますから、光合成で水を使えるようになったことが、植物が地球上で現在のように繁栄するきっかけになったとは言えるでしょう。

上に書いたのは、光合成の反応自体を進めるのに必要な水ですが、間接的にも植物は水を必要とします。光合成のために必要な二酸化炭素は葉の気孔から取り込みますが、気孔を開けているとそこから水が蒸発して逃げていってしまいます。これを蒸散といいますが、光合成で分解されて酸素になる水の200倍以上の量の水が蒸散によって失われるのです。というわけで、根から吸い上げる水のうち、本当に光合成で使われる水の量はほんの一部でしかありません。