一番よく光合成をする植物は何ですか?

異なる植物の光合成を「公平に」比較するのは、案外難しいのです。難しさの原因の1つは、得意分野の違いです。世の中には明るいところに生える陽生植物と暗いところに生える陰生植物があります。通常、陽生植物の方が陰生植物より成長が速く、光合成活性も高い、という言い方をしますが、これは、光合成を明るいところで測定することが多いからです。もし、2種類の植物を暗い条件において光合成を比較したら、暗い植物の方が光合成活性が高いことは充分にあり得ます。国語の得意な人と算数の得意な人の成績を比べるようなものですね。試験の科目によって結果は違ってきてしまいます。また、自然の状態では、光合成を常に最大限できるような環境にいることはまれです。たいていの野生植物の場合、光が弱い、温度が充分でない、水が不足している、などといった完全ではない条件の下で生育しています。その場合は、光合成の最大活性だけではなく、それらの不十分な環境でも、光合成を維持できる能力が重要になってくる場合が多くあります。

というわけで、一概には言えないのですが、一般論としては、光と水、温度が十分の条件で一番光合成を盛んにするのは、トウモロコシ、ヒエ、オヒシバ、ジョンソングラスといったC4植物というグループの草本です。C3植物でもイネ、ヒマワリなどはかなり高い光合成を示しますが、一般的にはC4植物よりは低めです。アサガオ、ホウセンカなどは低い方ですね。樹木は、草本に比べるとさらに光合成能力は低くなります。双子葉類と単子葉類ではその間の差よりもそれぞれの中での種間差の方が大きいと思いますが、裸子植物では導管が発達していないために一般的に光合成速度が低いことが多いようです。あと、よくケナフは光合成能力が高いと言われているので、ちょっと調べてみました。科学的な論文が掲載される雑誌の中を検索してもあまりケナフの話は出てこないのですが、Indian Journal of Experimental Biology という雑誌(2002年、38号、841-844頁)に、40 mgCO2/dm2/hr という光合成速度が出ていました。これが本当だとするとイネと同じぐらいで、トウモロコシの2/3といったところですいったところですから、そんなに高いと騒ぐほどではありませんね。