光合成の反応のどこで水分子が放出され、それには何の意味があるのか?

光合成の反応式は一般に

6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2

となっています。両辺に水分子があるのは、光化学反応(電子伝達)によって12分子の水が分解されて6分子の酸素が発生する一方、カルビン回路では6分子の水が生成することによります。前者の水分子は、電子伝達の出発点で、電子供与体として働き、自身は酸素に酸化されることになります。一方、カルビン回路では二酸化炭素が有機物に還元されるわけですから、その際に二酸化炭素の分子中にあった酸素は還元されて水になるはずです。これが、この6分子の水です。ですから、意味としては二酸化炭素が還元される際に生じる水と解釈できます。ただし、カルビン回路の個々の反応を見ても水の動きはわかりづらいため、普通の教科書などには説明されていないことが多いようです。

二酸化炭素の還元は、光化学系から供給されるNADPHによって起こりますから、具体的にはカルビン回路でNADPHが使われる反応を見ればよいはずです。NADPHが使われるのは1,3-ビスホスホグリセリン酸からグリセルアルデヒド-3-リン酸になるところで、ここでNADP+とプロトンが生じます。ところが、水は生じていません。もうひとつ前の反応をみると、3-ホスホグリセリン酸がATPによってリン酸化されて1,3-ホスホグリセリン酸とADPが生じています。この2つのステップを通してその代謝物の末端だけを考えると(他の構造は同じ)

3-ホスホグリセリン酸 -COOH

1,3-ビスホスホグリセリン酸 -COO(Pi)

グリセルアルデヒド-3-リン酸 -CHO

となっていて、一度リン酸をつけて外した形になっています。最初と最後だけを考えると-COOHが-CHOになっていますから、酸素が1個外れていて、それがNADPHによって還元されて水になっているはずですが、反応式上は見当たりません。一方、最初のリン酸基をつける反応ではATPからのリン酸基の転移なので、加水分解ではなく、次のリン酸基を外す反応ではNADPHによる還元とカップルしていて、やはり水の出入りはありません。つまり、水の出入りなしにATPがADPになっていることになります。ADPをエネルギーを使ってATPに戻す時には、水が生じますから、水分子は、ここではADPの中に隠れていると解釈すると説明がつきます。

このように3-ホスホグリセリン酸あたり1分子の水が放出されということは、二酸化炭素1分子あたり2分子の水が放出されることになります。一方ルビスコの反応では、RuBPが開裂する際にRuBPあたり(=二酸化炭素あたり)1分子の水が付加(加水分解)するので、差し引き、固定される二酸化炭素1分子あたりにすると、1分子の水が放出されることになります。呼吸系における水分子の動きの場合も、反応式の表面には現れない水の出入りが同じようにあります。