藍藻の分子生物学2013~多様化する藍藻研究:収斂から拡散へ~

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「藍藻の分子生物学」研究会は1997年から2年ごとに開催されてきました。国内の藍藻研究者が一堂に会し、最近の研究内容を発表、討論する場を提供するとともに、この分野に興味を持つ若手、中堅研究者に情報提供し、新たな参入を促す貴重な機会ともなってきました。

本大会のオーガナイズを行うにあたり、「多様化する藍藻研究:収斂から拡散へ」という副題を付けさせていただきました。「収斂」というのは、Synechocystis sp. PCC 6803やSynechococcus elongatus PCC 7942、Anabaena sp. PCC 7120といった、モデル藍藻のゲノム解読を目指した次代を指します。多くの情報がゲノム解読から得られ、藍藻研究は一時代を築いて多くの基本的生命現象が明らかにされました。そして今もなお、新たな分子機構がモデル藍藻から発見され続けています。ゲノム解読の超高速化につれて非モデル藍藻を含むさまざまな株のゲノムが読まれるようになり、いまやゲノム情報を活用して研究を進めるのは一般的手法になりつつあります。このようなゲノム情報を基盤とした藍藻研究の広がりを「拡散」と表現しました。これは生命の統一原理を求めた後に、個々の多様性研究に移っていった分子生物学の歴史と同様であると感じています。

昨今では、藻類への社会的要請も高まり、ますます藍藻研究の重要性が高まっています。しかし一方で、われわれはその期待に十分に応えられるほど、藍藻のことをまだ理解できていないように思います。今回はドイツ・フライブルク大学よりWolfgang Hess教授、Claudia Steglich博士をお迎えする機会に恵まれました。脱原発を掲げるドイツにとっても藍藻研究にかかる期待は大きいようです。この研究会の場が、藍藻研究を推進する良い機会になることを願っております。

2013年11月

オーガナイザー 吉川博文(東京農業大学)
田中寛(東京工業大学)
田畑哲之(かずさDNA研究所)

プログラム

第1日(11月22日(金))

13:00 - 13:10 吉川博文(東農大) 開会あいさつ

13:10 - 13:30 池内昌彦(東大) シアノバクテリアの光受容体と光応答系の展望

13:30 - 13:50 園池公毅(早稲田大) NDH複合体の変異が光合成に与える影響

13:50 - 14:05 休憩

14:05 - 14:25 藤田祐一(名古屋大) クロロフィル生合成と窒素固定:嫌気代謝の接点

14:25 - 14:45 粟井光一郎(静岡大) ラン藻のチラコイド膜にガラクト脂質は必須ではない

14:45 - 15:05 日原由香子(埼玉大) cyAbrB転写因子と代謝制御

15:05 - 15:20 休憩

15:20 - 15:40 清水浩(大阪大) シアノバクテリアの代謝工学

15:40 - 16:00 蓮沼誠久(神戸大学) ラン藻動的代謝プロファイリング技術の開発と応用

16:00 - 16:15 Announcement(広瀬侑:豊橋技術科学大) シアノバクテリアのゲノム研究を効率よく進めるための統合パイプラインの構築

16:15 - 16:30 休憩

16:30 - 16:55 Claudia Steglich(University of Freiburg) A phage strategy to exploit cyanobacterial host RNase E activity for phage

16:55 -17:30 Wolfgang R. Hess(University of Freiburg) A double-comparative approach to study the transcriptional landscape in Synechocystis strains PCC 6803 and PCC 6714

17:30 - 17:40 休憩

17:40 - 18:40 ポスター発表(奇数番号)

18:40 - 20:00 懇親会(ポスター会場)

20:30 送迎バス(木更津駅前 東口)

第2日(11月23日(土))

08:55 - 09:00 事務連絡

09:00 - 09:20 花井泰三(九州大) 合成代謝経路を導入したシアノバクテリアによるイソプロパノール生産

09:20 - 09:40 板谷光泰(慶応義塾大) 合成ゲノム工学的手法で作製されるラン藻ゲノムの将来

09:40 - 10:00 岩崎秀雄(早稲田大) Synechococcusの概日同調制御

10:00 - 10:15 休憩

10:15 - 10:35 鈴木石根(筑波大) ラン藻のヒスチジンキナーゼのキメラセンサーを用いた機能解析とその利用

10:35 - 10:55 魚住信之(東北大) Synechocystis sp. PCC 6803の糖生産とバイオフィルム形成

10:55 - 11:10 写真撮影

11:10 - 12:10 ポスター発表(偶数番号)

12:10 - 13:00 昼食

13:00 - 13:20 土屋徹(京都大) シアノバクテリアでの順遺伝学的解析を促進するツールの開発

13:20 - 13:40 大城香(福井県立大) 単細胞ラン藻における細胞外多糖合成

13:40 - 13:50 休憩

13:50 - 14:10 佐藤直樹(東京大) Limnothrix ABRG5-3株のゲノム配列決定とシアノバクテリアの中での系統関係

14:10 - 14:30 坂本敏夫(金沢大学) Molecular diversity and biosynthesis of the glycosylated mycosporine-like amino acids in the terrestrial cyanobacterium Nostoc commune

14:30 - 14:40 休憩

14:40 - 15:00 鈴木英治(秋田県立大学 単細胞窒素固定ラン藻における“澱粉”生合成機構の解明に向けて

15:00 - 15:20 吉川博文(東京農業大学) シアノバクテリア特異的なDNA複製機構

15:20 - 15:55 総合討論

15:55 - 16:00 閉会の挨拶